【米国市況】テク主導で株続伸、米利下げ期待で-ドル142円台半ば
24日の米国株式市場はハイテク主導で続伸。米連邦準備制度理事会(FRB)がリセッション(景気後退)回避に向けて、想定よりも早く利下げを実施するとの期待が相場を押し上げた。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5484.77 108.91 2.03% ダウ工業株30種平均 40093.40 486.83 1.23% ナスダック総合指数 17166.04 457.99 2.74%S&P500種株価指数は2%高。トランプ米大統領が上乗せ関税を発表した今月2日以来の高値を付けた。
引け後に決算を発表したアルファベットの株価が時間外で上昇。売上高と利益が予想を上回ったことが好感されている。一方、売上高見通しが市場予想に届かなかったインテルは、時間外で株価下落。
トランプ氏は同日、貿易を巡る中国との政府間交渉は進行中だと述べた。これに先立ち、中国側は貿易合意の成立を目指した米中交渉が行われているとの見方を否定しており、米中による食い違いが目立った。
ウォラーFRB理事は、トランプ政権の高関税が人員削減の増加につながる可能性があり、そうした状況になった場合には、労働市場を守るため利下げを支持するとの考えを示した。クリーブランド連銀のハマック総裁は経済の方向性について明確かつ説得力のあるデータが得られれば、6月にもFRBが利下げに踏み切る可能性があると米経済専門局CNBCに対して述べた。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマンブチャディ氏は「FRBは金融緩和に対して慎重な姿勢を崩していないが、とりわけ解雇の増加といった景気弱含みの兆候に対しては、対応する意思と能力を備えていると当社では考えている」と述べた。
JPモルガン・アセット・マネジメントのマイルズ・ブラッドショー氏は、トランプ大統領の関税措置による影響は、インフレ高進よりも成長下押しの方が大きいだろうとみている。
同氏はブルームバーグテレビジョンで、FRBは金融政策をより長く据え置くことで、いずれは積極的な利下げを迫られるだろうと発言。「今後の動向を左右する根本的な要因は成長とインフレにある」と続けた。
個別銘柄では、前日引け後に決算を発表した半導体のテキサス・インスツルメンツ(TI)が6.6%上昇。市場予想を上回る業績見通しが好感された。一方、IBMは6.6%下落。1-3月(第1四半期)決算は、売上高と利益がいずれも市場予想を上回ったが、株価の押し上げには至らなかった。
米企業からは貿易戦争を受けて先行きを懸念する動きが出ている。 アメリカン航空グループは通期の利益見通しを撤回。 飲食料品メーカーのペプシコと日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は業績見通しを引き下げた。
3月の米耐久財受注統計では、ビジネス機器の受注が微増にとどり、関税や税制政策に関する不透明感が強い中、企業が慎重な姿勢を強めていることを示唆した。
ハリス・ファイナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は「企業は関税に先回りして対応しており、今回の耐久財統計は喜ぶべき内容ではない」と指摘。その上で「朗報なのは、企業が利益と利益率を守っていることであり、投資家にとっては好材料となるだろう」と語った。
米国債
米国債相場は上昇。6月にも利下げがあり得るとのクリーブランド連銀総裁の発言を好感した。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.77% -4.8 -0.99% 米10年債利回り 4.31% -6.8 -1.56% 米2年債利回り 3.79% -8.2 -2.12% 米東部時間 16時48分金融政策に敏感な2年債利回りは一時8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、3.79%を割り込んだ。
ハマック総裁は5月の利下げの可能性を否定した一方で、「6月までに明確かつ説得力のあるデータが得られ、その時点で進むべき正しい方向性について判断できれば、委員会が動く可能性がある」と述べた。次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合は5月6-7日に開催される。
金利スワップ市場は足元で、6月17-18日の会合で15bpの利下げを織り込んだ。これは0.25ポイントの利下げ確率が6割に達したことを示す。9月までには計54bp、年内は計85bp(0.25ポイント幅で3回相当)の利下げを見込んでいる。
ミシュラー・ファイナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディ・ガロマ氏は「FRBは6月に利下げするだろう。関税が米経済を一段と減速させればなおさらだ。関税を巡る不透明感を踏まえれば、現行の金利水準は高過ぎるというのが個人的な見解だ」と述べた。
財務省が実施した7年債入札(発行額440億ドル)では、最高落札利回りが4.123%と、入札前取引(WI)水準をわずかに上回ったが、昨年9月以来の低水準となった。入札前に国債相場が上昇していたことが利回りの押し下げ要因となった。需要が後退する中、プライマリーディーラーの落札比率は15.3%と、昨年9月以来の水準に高まった。
為替
ニューヨーク外国為替市場では、ドルが主要通貨に対して全面安。貿易合意の成立を目指した米中交渉が行われているとの見方を中国が否定したことがドルの重しとなった。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1223.88 -4.72 -0.38% ドル/円 ¥142.56 -¥0.89 -0.62% ユーロ/ドル $1.1398 $0.0082 0.72% 米東部時間 16時49分ブルームバーグ・ドル・スポット指数は約0.4%低下。
イングランド銀行(英中央銀行)ベイリー総裁は、トランプ大統領の関税措置と不安定な政策決定を手掛かりにドルと米国債が下落したが、ドルが基軸通貨の地位を失うとの懸念は「過剰だ」との認識を示した。
円は対ドルで上昇。一時は142円28銭まで買われた。前日は日本との通商交渉で「通貨目標」求めずとしたベッセント財務長官の発言を受けて円安・ドル高が進んだが、この日は流れが逆転した。
原油
原油先物相場は反発。現物市場での需給タイト化の兆候や米中間の緊張緩和の可能性などが意識された。
トランプ米大統領が貿易を巡る中国との政府間交渉は進行中だと述べると、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は約1%上昇する場面もあった。
最近の原油価格の下落を受けて、一部の石油生産企業が設備投資の計画を縮小し始めている兆しもある。WTIのプロンプトスプレッドは過去2カ月余りで最も強い水準に接近しており、供給逼迫の兆候が示されている。
地政学的な緊張も依然として強い。ロシアは夜間にウクライナに対する攻撃を行い、キーウでは少なくとも9人が死亡した。一方、米国はロシアに対し、ウクライナが独自の軍隊と防衛産業を保持する権利を認めるよう求める構えを見せている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は前日比52セント(0.8%)高の1バレル=62.79ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント6月限は43セント高の66.55ドルで取引を終えた。
金
金相場は反発。スポット価格は前日に年初来最大の下落となっており、トランプ大統領の貿易戦争が利上げ見通しに与える影響が意識される中で買い戻しが入った。
米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事はこの日、高水準の関税が再び導入された場合には企業はさらなる人員削減に動く可能性があると指摘。そうした状況になった場合は、労働市場を守るため利下げを支持するとの考えを示した。またクリーブランド連銀のハマック総裁は、経済の方向性について明確かつ説得力のあるデータが得られれば、6月にも政策変更の判断が下される可能性があるとの認識を示した。
トレーダーの間では、貿易戦争によるリセッション(景気後退)を防ぐために金融当局が予想より早く利下げに踏み切るとの見方が強まっている。これは利息を生まない金にとっては追い風となる。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時5分現在、前営業日比47.75ドル(1.45%)高の1オンス=3336.09ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は54.50ドル(1.65%)高の3348.60ドルで引けた。
原題:S&P 500 Jumps 2% as US Yields Sink on Fed-Cut Bets: Markets Wrap
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Dollar Trades Weaker as Tariff Concerns Linger: Inside G-10
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Gold Rebounds as Traders Weigh Trade War, Interest-Rate Path(抜粋)