優勝候補はどこだ! 欧州CL戦力値ランキング1~10位。ベスト16版! 最新戦力を分析
2024/25シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメントの戦いが現地時間4日に始まる。熾烈なリーグフェーズとプレーオフを勝ち上がった16チームの中で、最も充実した戦力を揃えているのはどこなのか。今回は各チームの戦力を4項目(攻撃力、守備力、選手層、勝負強さ)に分けて数値化(各25点の100点満点)し、ランキング形式で紹介する。※データは3月2日時点
10位:アストン・ヴィラ(イングランド)
監督:ウナイ・エメリ(3年目) リーグフェーズ順位:8位
戦力値:80(攻撃力21、守備力18、選手層21、勝負強さ20)
リーグフェーズでサプライズを起こしたチームの1つがアストン・ヴィラだ。1982/83シーズン以来のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場となった中で決勝トーナメントへの進出を決め、ラウンド16ではクラブ・ブルージュと対戦する。
リーグ戦では不安定な戦いをみせている一方で、CLでは安定して勝ち点を積み上げた。特にホームゲームでは3勝1分と負けなしで、強豪バイエルン・ミュンヘンにも勝利している。
さしあたって懸念されているのがシーズンを通して失点が多い「守備力」である。一時は本職センターバック(CB)が全滅するほど怪我人に悩まされており、3月1日時点でCBコンビに12パターンの組み合わせが生まれているようだ。
ただ、中足骨の骨折で離脱していたパウ・トーレスの復帰が間近に迫っており、彼が復帰すればもう少し安定するかもしれない。
この不安な守備を補うのが、冬の大型補強で戦術的なオプションを増やした「攻撃力」だ。リーグフェーズでチーム最多タイの3ゴールを決めていたジョン・デュランは退団したが、マーカス・ラッシュフォードとマルコ・アセンシオのコンビは即フィット。特に後者は6試合で4ゴールとハイペースで得点を重ねており、CLを3度制覇した経験のあるレフティーの加入は大きなプラスだ。
国際トーナメントでの「勝負強さ」が光るウナイ・エメリ監督の存在も大きく、苦手なアウェイと守備の不安が露呈しなければ勝ち進む可能性もあるだろう。
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【写真:Getty Images】
キリアン・エンバペが去ったことで新たなスタートを切ったパリ・サンジェルマンは、リーグフェーズで苦戦を強いられた。最終的にはスタッド・ブレストとのプレーオフを制して、ラウンド16ではリーグフェーズ首位通過のリバプールと対戦する。
シーズン当初は絶対的エースがいなくなったことによる「攻撃力」の不安があったが、昨年12月からウスマン・デンベレが驚異的なペースで得点を積み重ねていることで懸念は払しょくされたと言って良いだろう。
ここまで公式戦26得点を記録しており、そのうち21ゴールが12月以降に決めたものである。今もっとも勢いに乗る選手かもしれない。
シーズン序盤を欠場していたゴンサロ・ラモスも復帰し、冬の移籍市場ではナポリからクヴィチャ・クワラツヘリアを獲得。ジョアン・ネヴェスやヴィティーニャら中盤の「選手層」も申し分なく、低調だったCL序盤から若手を中心に大きく成長している。
課題を挙げるとすれば「勝負強さ」だろう。ズラタン・イブラヒモビッチやネイマール、エンバペが在籍していた時期もCL決勝トーナメントでの成績が悪く、過去12シーズンでベスト4以上に進出できたのは2回のみ。ベスト16での敗退が最多の5回を占める。
今大会もいきなり優勝候補のリバプールと対戦とくじ運が悪く、バルセロナ時代にCL制覇の経験があるルイス・エンリケ監督の手腕に期待がかかる。
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ミケル・アルテタ監督の下で着実に力をつけてきたアーセナルは、リーグフェーズを3位で通過。ラウンド16ではPSVと対戦する。
ロンドンの強豪は、リーグフェーズの8試合で3失点しか喫しなかったことからもわかるように「守備力」に強みがある。ガブリエウ・マガリャンイスとウィリアン・サリバのセンターバック(CB)と守護神ダビド・ラヤの安定感は抜群だ。
サイドバック(SB)のオプションもマイルズ・ルイス=スケリーの台頭とベン・ホワイトの復帰によって「質」と「量」のどちらも担保されており、中盤の守備強度もトーマス・パーティーの復活によって高いレベルを維持することができている。
この「守備力」の安定は決勝トーナメントを勝ち上がるために欠かせないが、「攻撃力」がシーズン開幕当初と比較すると大きく低下している。現時点ではブカヨ・サカとガブリエウ・マルティネッリ、カイ・ハフェルツ、ガブリエウ・ジェズスが負傷離脱中で、前線のオプションが限られている。
現在は本職が中盤のミケル・メリーノをストライカー起用しなければいけないほど攻撃陣の運用に苦戦しており、試合途中から流れを変えるような選手もベンチに残されていない。ビハインドの展開になると厳しくなることが予想される。
また、昨季のFCポルト戦ではPK戦での勝利に貢献した実績があるラヤだが、早く動きすぎる癖を読まれた今季のFAカップ3回戦では1本も止められずに敗退。この分析が進んでいることを踏まえると、PK戦が得意とは言えない。トーナメントに欠かせない「勝負強さ」にも不安を残す。
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アトレティコ・マドリードはリーグフェーズで2連敗のスタート。最悪の出だしとなったが、それ以降の6試合で6連勝を飾り、ストレートで決勝トーナメント進出を決めた。ラウンド16ではレアル・マドリードと対戦する。
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)の成績と重なるように、ディエゴ・シメオネのチームは成長を続けている。現在の最適解を見つけてからは攻守ともに安定した。
アントワーヌ・グリーズマンとフリアン・アルバレスの2トップに、サム・リノとジュリアーノ・シメオネと両ウイング(WG)の形がフィット。中盤のパブロ・バリオスの成長も著しく、運動量と質を兼ね備えたラインナップが形成された。
シーズン開幕当初は多数の退団者に伴い「守備力」に不安を抱えていたが、新加入のロビン・ル・ノルマンとクレマン・ラングレのセンターバック(CB)コンビとなってからはかなり安定している。特に後者をスタメンに抜擢してからの成績は、公式戦23試合で19勝3分1敗と一気に上向いた。
シメオネ監督の守備的な采配が裏目に出てしまうこともあるが、強豪相手にも自分たちのプランがハマれば高い確率で勝利に近づく。ラウンド16でいきなりレアル・マドリードと対戦するのは不運だが、この試合に勝つことができれば優勝候補に挙がるかもしれない。
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昨シーズンにブンデスリーガで無敗優勝を飾ったレバークーゼンは、今季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)でも強さを発揮。リーグフェーズを6位で終え、ラウンド16ではバイエルン・ミュンヘンと対戦する。
彼らの強みはフロリアン・ヴィルツを中心とした「攻撃力」だろう。レバークーゼンの若き10番はリーグフェーズの8試合で6ゴールと大暴れし、シャビ・アロンソ体制となってから序列が上がっていなかったパトリック・シックも今季は絶好調。リーグ戦では出場61分に1ゴールのペースで得点を量産している。
冬の移籍市場での効果的な立ち振る舞いによって「選手層」に厚みが増した中で、決勝トーナメントを勝ち上がるための「勝負強さ」も兼ね備えている。昨季はUEFAヨーロッパリーグ(EL)決勝でアタランタに完敗を喫したが、基本的には大一番に強く、後半アディショナルタイムの得点も多かった。
強豪との対戦となれば相手に合わせて戦い方を変える柔軟性があり、バイエルンやインテル、アトレティコ・マドリード相手には最前線に走力のあるネイサン・テラをワントップに配置して守備から逆算して試合に挑む。2月15日に行われたブンデスリーガ第22節バイエルン戦では結果こそスコアレスドローだったが、内容面では圧倒した。リーグ最多得点を誇る相手にシュート2本しか打たせず、枠内シュートは1本もなかった。
ラウンド16でいきなりバイエルンと対戦するのは不運ではあるが、シャビ・アロンソ体制となってからは6試合で3勝3分と無敗。この相性の良さを「勝負強さ」に繋げることができるだろうか。
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【写真:Getty Images】
今季のバイエルン・ミュンヘンはリーグ戦で首位を独走している。ただ、以前の強さを完全に取り戻したわけではなく、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)では3敗を喫してプレーオフに回った。セルティックとの接戦を制して、ラウンド16ではレバークーゼンと対戦する。
ハリー・ケインやジャマル・ムシアラらを擁する前線の火力はハマれば世界屈指だろう。リーグフェーズ初戦のディナモ・ザグレブ戦では1試合で9ゴールというCL新記録を樹立し、今季のブンデスリーガでもリーグ最多得点数(第24節を終えて72ゴール)を記録している。
問題は質で押し切れない相手との戦い方で、ムシアラを消されるなどの対策をされた場合のアイデアが少ないこと。レロイ・ザネやセルジュ・ニャブリらウイング(WG)の調子の波が激しく、ビハインド時に流れを変える手札があまりない。
最大のネックは「守備力」で、敗れたアストン・ヴィラ戦とバルセロナ戦は相手の前線の選手の質にダヨ・ウパメカノとキム・ミンジェの両名が後手を踏みつづけた。CLのような対強豪との試合になれば、復帰したばかりの伊藤洋輝が攻守のバランスを整えるために左サイドバック(SB)として多くの出場機会を得るかもしれない。
ただ、毎シーズンCLに出場し続けていることによる経験と「勝負強さ」は出場チームの中でも随一で、過去10シーズンにおけるベスト16敗退は一度のみ。昨季も調子が悪いながらもベスト4まで駒を進めており、ヴァンサン・コンパニ監督の経験不足は気になるが、選手は戦い方を熟知している。
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ハンジ・フリック監督の就任によってバルセロナに超攻撃的サッカーが戻ってきた。リーグフェーズを2位で通過し、ラウンド16ではベンフィカと対戦する。
今のバルセロナの「攻撃力」は世界屈指だろう。ハフィーニャ、ラミン・ヤマル、ロベルト・レヴァンドフスキの3トップの破壊力は抜群で、彼らを自在に操る中盤のペドリも絶好調。チームとして、ラ・リーガとUEFAチャンピオンズリーグ(CL)の両大会で暫定最多得点を記録している。
課題を挙げるとすれば、シーズン途中から強気なハイラインが対策されたことによる失点の多さだろう。リーグフェーズの8試合でも13失点を喫しており、最終的にラウンド16へ駒を進めたチームの中ではフェイエノールトの次に多い。
ただ深刻な課題となっていないのは、この失点の多さを補うだけの「攻撃力」を持ち合わせているから。多くの試合で失点よりも多いゴールを決めて打ち合いを制してきた。ロナルド・アラウホやガビ、フレンキー・デ・ヨング、ダニ・オルモら怪我人も戻りつつあり、勝負の後半戦に向けて「選手層」も厚みを増している。
決勝トーナメントを勝ち上がるためには攻撃陣の爆発が欠かせない。ラウンド16で対戦するベンフィカはリーグフェーズで対戦しており、その時は5-4という派手な試合を演じた。彼らはバルセロナのハイラインの攻略方法をわかっており、そこをフリック監督が修正しないのであれば、前線の火力で殴り勝つしかないだろう。