最低位ジャンク債、警戒シグナル発信-米成長減速やインフレ高進など

資産運用担当者は年初来の多くの時期にわたり楽観的な見方を抱き、社債を買い入れた。その結果、そのバリュエーションはますます割高水準に達した。だが今や、ウォール街の重鎮は事態がどれほど悪化しかねないか目を向けるべき時だと指摘している。

  JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)や、シックスス・ストリート・パートナーズ共同創業者のジョシュ・イースタリー共同最高投資責任者(CIO)は、クレジット市場がリスクを十分織り込んでいない可能性があると警告している。

JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEO

  そして、ジャンク債の中でも格付けが最も低い部分は、米経済が近く成長減速やインフレ高進、リセッション(景気後退)に直面する可能性があるとの警戒シグナルを発している。

  CCC格付けのジャンク債のリスクプレミアムは今年に入り1.56ポイント拡大し、直近1週間でも0.4ポイント拡大。スプレッド差はCCC格付けとその一つ上のB格付けとの間で年初来および過去2週間で拡大しており、最も脆弱(ぜいじゃく)な債券が他よりも劣後していることを示唆している。

  ウェリントン・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、コナー・フィッツジェラルド氏は、CCC債のスプレッド拡大とパフォーマンス悪化は重大な警告サインだと話す。

  「現時点でハイイールド債に大きく投資するのは勧められない。スプレッドはタイトであり、リセッション懸念があるなら、デフォルト(債務不履行)関連の損失リスクがある」とフィッツジェラルド氏はインタビューで語った。

  米国の住宅バブル期にいち早く住宅ローン市場のリスクに気づいたダイモン氏は19日、クレジットスプレッドが潜在的なリセッションの影響を織り込んでいないと指摘した。また、インフレ高止まりやスタグフレーションのリスクは人々が思っているよりも高いと述べ、米資産価格は引き続き割高だと論じた。

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  それでも一部の投資家は依然としてジャンク債を購入している。人工知能(AI)向けクラウドサービスを手掛ける米コアウィーブは21日に5年債20億ドル(約2850億円)を発行し、当初予定の15億ドルから規模を拡大した。また米投資適格債市場では、過去1週間に350億ドル超の社債発行があり、250億ドル前後としたディーラーの予想を上回った。

  U.S.バンクの債券セールス・トレーディング責任者ブレア・シュウェドー氏は、社債市場が4月の激しい相場変動以降回復してきた一因として、証券の償還資金がクレジット市場に再投資されたことを挙げる。しかし、地政学的緊張や関税を巡る不透明感が社債需要に悪影響を及ぼし、スプレッド拡大を招く可能性がある。

シックスス・ストリート・パートナーズ共同創業者のジョシュ・イースタリー共同CIO

  市場のセンチメントは急速に変化する。トランプ米大統領が4月に過去100年で最も急激な関税率引き上げを発表した数日後、スプレッドは2020年3月以来の水準にまで拡大したが、それからまもなく再び縮小した。

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  今後も多くのリスクが控えている。トランプ氏は23日、欧州連合(EU)からの輸入品に6月1日から50%の関税を課すと表明し、貿易戦争の沈静化にはほど遠いことを示唆した。米金融当局の今後の金利政策の道筋も不透明であり、経済指標がいつ、実際に悪化の兆しを示し始めるかも不確かだ。

  シックスス・ストリートのイースタリー氏は成長や貿易、地政学を巡る不確実性に関し、「現在のクレジット市場ではリスクが適切に織り込まれていない」とした上で、特に変動金利債に懸念を示した。

原題:Junkiest Junk Is Offering a Warning Sign for Debt: Credit Weekly(抜粋)

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