ツール・ド・フランス2025 ピレネー超級頂上ゴールの第14ステージはアレンスマンが逃げ切り初優勝|サイクルスポーツがお届けするスポーツ自転車総合情報サイト|cyclesports.jp
フランスで開催中の第112回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月19日に南西部のポーから標高1804mでカテゴリー超級のリュション・シュペルバニエール頂上までの182.6kmで、ピレネー山岳最終日の第14ステージを競い、オランダのテイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアズ)が独走で逃げ切り、初参加で区間初優勝を果たした。
ツール初参加のアレンスマンがヒレネー最終区間で逃げ勝った (©SprintCycling)
マイヨ・ジョーヌを着たスロベニアのタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ・XRG)は1分8秒遅れの区間2位でゴールし、総合首位の座を守った。区間3位は1分12秒遅れでデンマークのヨーナス・ヴィンゲゴー(チームヴィスマ・リースアバイク)だった。
ピレネーでマイヨ・ジョーヌを守ったポガチャル (photo : A.S.O. /Maxime Delobel)
エヴェネプールが序盤のツールマレーで棄権
昨年総合3位のエヴェネプールがツールマレーでレースを棄権した (photo : A.S.O. /Billy Ceusters)
2日前に行われたピレネー山岳初日の第12ステージで早々にメイン集団から脱落し、前日の山岳個人タイムトライアルでも不調だったベルギーのレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)は、この日最初のツールマレー峠の登坂でメイン集団から脱落し、ゴールまで残り100kmでレースを棄権した。彼は前日までの総合成績でポガチャルに7分24秒遅れの総合3位で、新人賞のマイヨ・ブランを着ていた。彼の不調の理由はまだ分かっていない。
雨のスタート
山岳賞総合首位奪還を目指して逃げに加わったフランスのマルティネス (photo : A.S.O. /Billy Ceusters)
ピレネー最終日の第14ステージは170選手が出走。落車で右手の薬指を骨折したフランスのブライアン・コカール(コフィディス)がスタートしなかった。スタート地のポーは雨で気温は20℃、途中の山では気温が10℃程度だった。
オフィシャルスタートからアタックがかかったが、逃げはなかなか成功しなかった。53km地点でデンマークのマティーアス・スケルモーセ(リドル・トレック)が落車し、一度レースに戻ったが、結局リタイアした。この日はベルギーのステフ・クラス(トタルエネルジー)も途中リタイアした。
70km地点の中間スプリントをマイヨ・ベールを着たイタリアのジョナタン・ミラン(リドル・トレック)が先頭で通過した後、最初のツールマレー峠(カテゴリー超級)がスタートし、19km続く坂の頂上まで残り15kmで、アレンスマンや山岳賞総合2位でマイヨ・アポワを着ていたフランスのレニー・マルティネス(バーレーン ヴィクトリアス)を含めた8人が逃げ出し、さらに選手が合流して20人の逃げ集団を作った。
先頭の逃げ集団からマイヨ・アポワのマルティネスがアタックし、6kmを独走してツールマレーの頂上を通過し、ジャック・ゴデ賞を獲得した。そこで先頭のマルティネスは後続の逃げ集団に1分45秒差、UAEチーム・エミレーツ・XRGがコントロールするメイン集団に3分半のタイム差を付けていた。
マルティネスは次のアスパン峠(カテゴリー2)も先頭で通過し、山岳賞総合首位のポガチャルのポイントに追いついた。しかし、彼は下りで追走グループに捕まり、カテゴリー1のペイルスールド峠を上り始めた時に先頭の逃げは8人になっていた。そこに入っていたアレンスマンは頂上まで残り4.5kmでアタックして独走を開始した。ゴールまではまだ36km残っていた。
観客の熱い声援に後押しされて逃げ切ったアレンスマン (photo : A.S.O. /Billy Ceusters)
ペイルスールド峠の頂上でアレンスマンは追走グループに1分20秒差、マイヨ・ジョーヌ集団に3分半のタイム差を付け、雨の中を逃げ続けた。ゴールまで残り12.4kmで最後のシュペルバニエールの登坂がスタートした時、路面は乾いていたが、山頂は霧に包まれていた。アレンスマンはまだマイヨ・ジョーヌ集団に3分以上のタイム差を付けていた。
ヴィンゲゴーがアタック
マイヨ・ジョーヌ集団では、ゴールまで残り4kmでヴィンゲゴーが攻撃を開始し、マイヨ・ジョーヌのポガチャルが応戦した。2人は先にアタックしていたフェリックス・ガル(デカトロン・AG2Rラモンディアル)を抜き、アレンスマンの後方に迫ったが、残り2kmでまだタイム差は1分半以上あった。アレンスマンはそのまま逃げ切り、25歳でツール区間初優勝を果たした。彼は2022年のブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIワールドツアー)で区間優勝していて、これがグランツールでの区間2勝目となった。
マイヨ・ジョーヌのポガチャルはゴール間近でアタックし、ヴィンゲゴーに4秒差を付けてゴール。区間2位でボーナスタイムも獲得し、総合でのリードをさらに広げた。序盤にリタイアしたエヴェネプールに代わって総合3位はドイツのフロリアン・リポヴィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)になった。彼は24歳で新人賞総合首位になり、マイヨ・ブランも獲得した。
山岳賞はペイルスールド峠で更にポイントを稼いだマルティネスが総合首位の座を取り戻した。彼はこのステージの敢闘賞も受賞した。
エヴェネプールの棄権でドイツのリポヴィッツが新人賞総合首位になった (photo : A.S.O. /Maxime Delobel)
■ツール初参加で区間初優勝したアレンスマンのコメント 「本当に信じられない。正直言って、ジロとブエルタでいくらか良い成績を得た後、世界最大のレースであるツールを経験したかっただけなんた。初めてのツールでステージを勝ち、しかもこんな形でやり遂げたなんて信じられない。クレイジーだ。
今年は既にジロを走り、そのレースの後で病気になった。それでもツールのために良い準備をした。最初の週は耐えて、山岳を待っていた。そして最初のチャンスだったル・モン・ドール(第10ステージ)で区間2位になり、最初のツールで既に素晴らしい経験をしていた。でもこれは信じられない。ただ脚が素晴らしかった。自分の人生で最高のコンディションだ」
表彰台の裏でマイヨ・ジョーヌのポガチャルと記念撮影をするアレンスマン (photo : A.S.O. /Billy Ceusters)
■第14ステージ結果 [7月19日/ポー~リュション シュペルバニエール/182.6 km] 1. T. ARENSMAN (INEOS GRENADIERS / NED) 04h 53′ 35” 2. T. POGACAR (UAE TEAM EMIRATES XRG / SLO) + 01′ 08” 3. J. VINGEGAARD (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / DEN) + 01′ 12” 4. F. GALL (DECATHLON AG2R LA MONDIALE TEAM / AUT) + 01′ 19” 5. F. LIPOWITZ (RED BULL – BORA – HANSGROHE / GER) + 01′ 25” 6. O. ONLEY (TEAM PICNIC POSTNL / GBR) + 02′ 09” 7. B. HEALY (EF EDUCATION – EASYPOST / IRL) + 02′ 46” 8. P. ROGLIC (RED BULL – BORA – HANSGROHE / SLO) + 02′ 46” 9. T. JOHANNESSEN (UNO-X MOBILITY / NOR) + 02′ 59”
10. K. VAUQUELIN (ARKEA-B&B HOTELS / FRA) +03′ 08”
■第14ステージ後の総合成績(マイヨ・ジョーヌ) 1. T. POGACAR (UAE TEAM EMIRATES XRG / SLO) 50h 40′ 28” 2. J. VINGEGAARD (TEAM VISMA | LEASE A BIKE / DEN) + 04′ 13” 3. F. LIPOWITZ (RED BULL – BORA – HANSGROHE / GER) + 07′ 53” 4. O. ONLEY (TEAM PICNIC POSTNL / GBR) + 09′ 18” 5. K. VAUQUELIN (ARKEA-B&B HOTELS / FRA) + 10′ 21” 6. P. ROGLIC (RED BULL – BORA – HANSGROHE / SLO) + 10′ 34” 7. F. GALL (DECATHLON AG2R LA MONDIALE TEAM / AUT) + 12′ 00” 8. T. JOHANNESSEN (UNO-X MOBILITY / NOR) + 12′ 33” 9. B. HEALY (EF EDUCATION – EASYPOST / IRL) + 18′ 41”
10. C. RODRIGUEZ (INEOS GRENADIERS / ESP) + 22′ 57”
[各賞] ■ポイント賞:J. MILAN (LIDL-TREK / ITA) ■山岳賞:L. MARTINEZ (BAHRAIN VICTORIOUS / FRA) ■新人賞:F. LIPOWITZ (RED BULL – BORA – HANSGROHE / GER) ■チーム成績:TEAM VISMA | LEASE A BIKE (NED) ■敢闘賞:L. MARTINEZ (BAHRAIN VICTORIOUS / FRA)
フランスのマルティネスが山岳賞総合首位に返り咲いた (photo : A.S.O. /Maxime Delobel)
第15ステージは丘越え区間
●第15ステージのコースプロフィール (MAP : A.S.O.)
ピレネー山脈に別れを告げ、アルプスを目指して移動を開始する7月20日は、オクシタニー地方のミュレからカルカソンヌまでの169.3kmで、丘越え区間の第15ステージが行われる。休養日前の2週目の終わりは、逃げのスペシャリストにとっては区間優勝のチャンスになるだろう。
(photo : A.S.O. /Billy Ceusters)
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