インターネットにアクセスできない「北朝鮮のスマホ」を記者が入手して使ってみたら… 金正恩がデジタル化を推進する理由

北朝鮮の市民も独自のスマートフォンを使って、オンラインバンキングをしたり、メイクアップのチュートリアルを受けたり、生理周期をトラッキングしたりしているようだ。だが、金正恩政権下では、こうしたスマホは統制の手段でもある。米紙「ワシントン・ポスト」記者がスマホを入手し、使ってみてわかったことを伝える。 【動画】韓国メディアが報じる「北朝鮮スマホ」最新事情 北朝鮮の国民はインターネットに接続できない。だからといって、スマートフォンを買う人が減っているわけではない。 「ワシントン・ポスト」は、北朝鮮のIT事情に詳しいマーティン・ウィリアムズの協力を得て、北朝鮮の最新スマートフォン2機種を入手した。その画面の向こうには、世界で最も閉鎖された国のリアルな日常が広がっている。 多様なアプリを揃えながらも外部と遮断された端末は、急速にデジタル化が進む北朝鮮のいまを物語る。だが、その便利なデジタル生活さえも、国家による統制の道具として巧みに利用されているのだ。 スマホはおもに、首都平壌の富裕層が手にする高級品だ。 最高級の機種の店頭価格は約750ドル(約12万2600円)にもなる。公定給与が収入のごく一部で、残りを副業で稼ぐような国では、この価格はあまりに桁外れだ。大半の国民にとっては、とても手の届く代物ではない。 それでも平壌では充分に普及しているようで、スマホの使いすぎによる目の疲れのケアを勧める番組が国営テレビで放送されているくらいだ。 北朝鮮政府が容認し、近年は後押しさえしているデジタルな暮らしの裏側には、どのような現実があるのだろうか。その知られざる実態に迫る。

北朝鮮では長年、現金での支払いが主流だったが、スマホ利用者の間では電子マネーアプリが広まり、その光景が一変しつつある。 韓国ソウルにある世宗研究所の研究員で北朝鮮経済が専門のピーター・ウォードによれば、オンライン銀行の導入により、当局は通貨の流通をはじめ、為替レートや物価、課税といったあらゆる面で統制の強化を図っている。 これは政府が1990年代から目指してきた試みだ。ウォードはこう指摘する。 「全店舗に防犯カメラを設置し、帳簿をつけさせれば、間接的な把握はできますが、オンライン決済化を進めない限り、大規模な現金取引を監視するのは非常に難しいのです」 また、政府は穀物供給への統制を強め、流通段階での盗難や不正の取り締まりを長年模索してきた。デジタル決済が広まることで、こうした政府による管理や監視は一層やりやすくなっているようだ。 ここ数年で平壌を訪れた人たちによれば、スマホを使ったQRコード決済は街のあちこちに広がっており、露店での支払いにも使われているようだ。 北朝鮮ツアーを企画する「ヤング・パイオニア・ツアーズ」のスティーブン・チャンによると、電子マネーは公共交通機関の利用、タクシーの配車、料理の配達、映画のチケット予約などにも幅広く利用されている。

Michelle Ye Hee Lee

クーリエ・ジャポン
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