【五輪】坂本花織、いよいよラストダンス「ちょっと抑えて、銀以上って言っています(笑)」

2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪のフィギュアスケート団体戦で銀メダルを獲得した坂本花織。完ぺきな演技で世界を魅了した日本の女王は、2月18日(日本時間02:45~)に女子シングルのショートプログラムに出場(フリーは2月20日、日本時間3:00〜)。悲願の金メダル獲得を狙う。

記者席から見える坂本花織のスケーティング、その軌道はなんと美しいのだろう。男子選手に匹敵するとも言われるリンク内を駆け抜けるスピードがそう感じさせるのか、あるいはジャンプ前後のブレない軸がそう見せるのか、全日本フィギュアスケート選手権大会の会場にいる記者はほかの選手との決定的な違いを、坂本花織が描く、美しい軌道に見出した。

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By 神谷晃(GQ)

連動性と再現性。4回転やトリプルアクセルにチャレンジするライバルたちの挙動、そして軌道は素人目にも不安定であり、隙のない女王の滑り、その芸術性は際立って美しい。

質の高いジャンプの出来栄え点と高い演技構成点、つまり芸術性こそが現在の坂本のストロングポイントではある。だが、2018年の『GQ JAPAN』のインタビューでは「自分のスケートはフィギュアよりスポーツと言うほうが合います」「まわりの選手はフィギュアをやっている感じがするけれど、私はスポーツをやっているという感覚が強いかもしれません」とコメントしていたことを考えると、隔世の感が否めない。

ミラノ・コルティナ五輪の代表選考に直結するフィギュアスケートの全日本選手権を終えた直後のクリスマスイブ、『GQ JAPAN』は5連覇を果たし、自身3回目となる五輪出場を決めた坂本花織を直撃。2018年のインタビューを起点として彼女の7年の軌道を振り返りながら、最後のオリンピックへの意気込みを訊いた。

Naoki Nishimura

──先日の全日本、21日のフリーを現地観戦しました。全日本5連覇、改めて今の気持ちをお聞かせください。

全日本で優勝してオリンピック内定を決めるというのが一番の目標だったので、まずはホッとしています。全日本はこれで最後なんだっていうのが感慨深いというか。 今回の全日本はそれを感じました。

──フリーの演技が終わった瞬間の歓声は凄まじいものでした。

フリーの演技が終わって顔を伏せていた時に、視覚がないぶん耳から入ってくる情報量がすごくて。 終わりがない拍手がずっと鳴り響いていて、「もう幸せ過ぎる」と思いました。

伝わります。滑っている自分も切羽詰まっている感じでした。オリンピックシーズンの独特な雰囲気もあって、緊張感がすごかった。「頼むから、カオちゃんここで決めてくれ!」という気持ちも伝わってきますし、自分も「ここでしっかり決めたい!」っていう気持ちもあって。本当にもうドキドキで、ハラハラもして。

──記者席からは気持ちよく滑っているように見えていましたが、そんな風に自分を俯瞰して見えるものなのですか?

全然見えていません。目の前だけ、自分の視界だけで。それでも、気持ちが乗っているときは曲がゆっくりに聴こえたりもするんです。ショートもフリーも曲がゆっくり流れているように感じて、「今、すごく集中しているな」とは感じていました。緊張してましたけど(笑)。

──フリーの直後、中野園子コーチからは、「今日は120点。厳しく育ててきてよかった」とコメントがあったようですが。

本格的にスケートに取り組んでいくと決めたときに、中野先生は私の母に「この子は引退するまで褒めません」と伝えたそうです。本当にその通りでした。褒めてくれる場面はあったんですけれど、「でもまだもうちょっとできるよね」という感じで、ここまで褒めてくれることは今までなかったので、びっくりです。 同時に、「一緒に遠征することも、もう少なくなってきたんだな」と寂しさが込み上げました。それまでは最後っていう感じはなかったんですけれど、この全日本は強く感じました。

緊張は演技が終わるまで続きます。リンクに送り出されるときも直前まで先生と会話していますけれど、やっぱり緊張はしているんです。緊張してるほうが自分はいい演技ができるので、緊張を受け入れていますけれど。

──2018年のときも「緊張してるほうがいい」とおっしゃっていましたね。

今シーズンは調子がすごく良かったので自信はありました。ショートは緊張感はそれほどなくて、「今を楽しむ」という感じだったんですけれど、フリーになったらその楽しみが全部消えて、不安と緊張で100%。 もともと緊張しいなのでいつものことなんですけれど、フリーは泣くぐらい緊張しました。

──朝会場に入った瞬間からずっと緊張は続くもんなんですか?

そうですね。フリーは朝の公式練習からご飯が喉を通りにくくなるくらい。

──(緊張をほぐす目的で)なるべく周囲に話しかけるとおっしゃっていましたが、そのスタイルは変わっていませんか?

変わってないですね。直前は先生にも話しかけています。話さずに溜め込むとしんどくなってダメになっちゃうから。

2000年、兵庫県生まれ。4歳からスケートをはじめ、16年には全日本ジュニア選手権優勝、17年に世界ジュニア選手権3位と、順調にステップアップ。2025年12月の全日本フィギュアスケート選手権では、女子史上5人目の5連覇(6度目の優勝)を達成した。世界選手権3連覇、オリンピックは3大会連続出場。18年の平昌で6位入賞、22年北京で個人戦銅、団体銀を獲得。ミラノ・コルティナでは、金メダルを目指す。2025–26シーズン限りでの現役引退を表明した。

写真・干田哲平スタイリング・髙橋京子ヘア&メイクアップ・石田美記

文と編集・神谷 晃 AKIRA KAMIYA(GQ)

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