【プロ野球】ヤクルトが下馬評を覆すまさかの快進撃 その裏にある「池山采配」と「気がつけば廣澤」の存在感

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 開幕前、ほとんどの解説者がヤクルトを最下位に予想していた。2023年から3年連続Bクラスに沈み、昨年は最下位。さらに、主砲の村上宗隆がメジャーに移籍し、キャンプ中に主力選手の故障が相次いだことも大きな理由だろう。

 だが開幕すると下馬評を覆し、ここまで(4月13日現在、以下同)10勝4敗と好スタートを切り、首位・阪神と0.5ゲーム差の2位につけている。

プロ初勝利を挙げた廣澤優(写真左)を称える池山隆寛監督 photo by Sankei Visual

【打ち勝つ野球を掲げた新指揮官】

 池山隆寛新監督は「打ち勝つ野球」を掲げ、送りバントのサインはほとんど出さない。スピード感あふれる攻撃は、ここぞという場面での集中打を呼び込んでいる。懸案だった先発投手陣もしっかり試合をつくり、そのバトンを受け取った中継ぎ陣がリードを守りきる。結果として、チーム防御率はリーグトップに立っている。

 池山監督は言う。

「我々は野球というスポーツを見せるプロ集団なので、見に来てくれた人たちに元気になって帰ってもらわないといけないのでね」

 シーズンはまだ開幕したばかりだが、10勝のうち6試合が逆転勝利。"池山野球"はダイナミックで、投打と作戦がかみ合った時、チームの勢いは観客へと伝わり、球場は沸き返る。

 そうしたなかで、"新しい力"の台頭もチームに大きな活気と勢いをもたらしている。たとえばブルペン陣では、新外国人のヘスス・リランソとホセ・キハダの存在が大きい。

 そしてもうひとり、忘れてならないのが2年目の廣澤優だ。身長193センチ、体重102キロの大型右腕で、日大三高からJFE東日本、四国IL・愛媛を経て、育成ドラフト2位で入団した。昨年は体力づくりに重点を置くなかで力を蓄え、10月のフェニックスリーグでは自己最速となる159キロをマークした。

【支配下登録→プロ初勝利をマーク】

 今シーズンは開幕直前に念願の支配下登録を勝ち取り、背番号「70」で開幕一軍入り。DeNAとの開幕3連戦では「ずっとソワソワしていた」と語っていたが登板機会はなく、本拠地・神宮球場で行なわれた3月31日の広島戦で初登板を果たした。

 5点リードの展開で9回表のマウンドに送り出された廣澤だったが、神宮球場の特性を考えれば、何が起きても不思議ではない状況だった。

「さすがに9回はないだろうと思っていたので、『まさか』という気持ちもありましたが、それ以上に『やっと(出番が)来たな』という思いのほうが強かったです。でも、いざ投げると緊張してしまって不安もありましたが、ファンの方の声援に助けられました」

 結果は、わずか13球で三者凡退。チームは開幕4連勝を飾った。

 2度目の登板は、4月3日の中日戦。この日は吉村貢司郎と柳裕也による息詰まる投手戦。ヤクルトは清水昇、田口麗斗、木澤尚文とつなぎ、廣澤優は0対1で迎えた9回表のマウンドに送り出された。池山監督はこの起用について、こう説明した。

「もちろん、彼なら抑えてくれると思って送り出しました。ヤクルトには150キロを超えるストレートを投げる投手は多くないですからね。エンジン全開で腕を振り、打者を打ち取っていってほしい。そうやって経験を積み重ね、少しでもスケールの大きな投手に成長してもらいたい。そのためには経験がすべてですから」

 結果は、「試合展開によるプレッシャーはありました」という廣澤は2四球を出すも無失点に抑え、期待にしっかりと応えた。ただ、2試合を投げた段階で140キロ後半の真っすぐがほとんどで、最速は151キロにとどまった。

「フォームの部分で思うように出力を発揮できず、悩んでいました」と、廣澤は振り返った。

「一軍の緊張もあったことに加え、『投げたい』という気持ちが先走り、体が前に突っ込んでフォームを見失っていました。その時期に、伊藤智仁コーチと山本哲哉コーチにフォームを見てもらい、自分では気づけなかった部分を修正できたことで、出力が戻りました。本当に感謝しています」

 4月5日の中日戦では、5点ビハインドの7回表に登板。2四死球を与えながらも、150キロ台中盤のストレートを連発して無失点。チームはその裏、一挙7点の猛攻で大逆転。廣澤はプロ初勝利を手にして、初めてのお立ち台にも上がった。

「初勝利はプロに入って考えられなかった景色なので、うれしかったです。そして、いろいろな場面で投げさせてもらって、本当に勉強になった1週間でした」

【甲子園で阪神の中軸を三者凡退】

 育成担当として廣澤を見続けた由規二軍投手コーチは昨年、「あれだけの真っすぐで打者を圧倒できるのは、チームにとって試合の流れを引き寄せる力になりますし、もう夢しかないですよね」と、笑顔で語っていた。

 今年は映像で廣澤のピッチングを見守っている。

「まだ力を出しきれていない部分はありますね。オープン戦から一軍を意識して投げてきた分、少し球威に物足りなさがありましたから。それでも昨日の阪神戦を見て、そうした状況を乗り越えたかなと。もともと変化球でカウントを取れる投球センスはあるので、あとは経験を積んで状況判断ができるようになれば、さらに落ち着きも出てくる。一軍の緊張感のなかで投げ続けることで、パフォーマンスは上がっていくと思いますし、そこに期待しています」

 由規コーチが言う「昨日の阪神戦」とは、4月8日に阪神甲子園球場で行なわれた一戦だ。廣澤は、1対2で迎えた5回裏に登板。打順は森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔のクリーンアップ。甲子園のボルテージは最高潮に達していた。

「完全アウェーで相手への声援はすごくて、多少は気になりましたが、いい打者だとわかっていた分、変に意識せず投げられたというか......。マウンドでは『自分のボールをしっかり投げれば打たれない』というコーチの言葉を思い出し、自分のピッチングはできたかなと思います」

 廣澤は、森下をスライダーで見逃し三振、佐藤を155キロのストレートで空振り三振、大山を154キロのストレートで左飛に打ち取り、三者凡退に抑えた。この好投で試合の流れを引き寄せると、チームは8回表に逆転。廣澤は2勝目を手にし、試合後、池山監督は「気がつけば廣澤」のコメントを残し、こう続けた。

「ああいうところで佐藤選手から三振を取れるくらいのボールだし、かなり自信になったと思います。そういう意味でも、大きなマウンドになったのではないでしょうか」

【抑えのポジションをつかみたい】

 さらに4月10日の巨人戦でも三者凡退に抑え、無失点投球を披露。ここまで5試合に登板して2勝0敗、防御率0.00と安定した成績を残している。

 前出の由規コーチは「現状は、先発が崩れたあとやビハインドの場面での登板が多いと思いますが」と前置きし、こう続けた。

「これまでにのし上がってきた先輩たちも、そうした場面での積み重ねから自分のポジションをつかんでいきました。今のところ充実した一軍生活を送れていると思いますが、これからは踏ん張りどころも増えてくるはず。任されたイニングで安定して自分の球を投げる......その積み重ねを意識してほしいですね」

 廣澤自身も、自らのポジション確立に向け、常に改善点を探し続けている。

「まだどの場面で投げるか明確になっていないですが、これまでと変わらずしっかり準備していきたいです。毎試合、必ず課題は出るので、それをひとつずつ潰していく。そして自分の強みであるストレートの質を高め、平均球速も上げていきたいです」

 そして廣澤は、「9回のマウンドの景色には特別な感情があります」と言った。

「最終回は緊張しますが、そこで抑えなければ目指す場所には届かない。今は池山監督を中心に、負けても引きずらない明るさがあります。ブルペンもリランソ選手とキハダ選手が明るく、みんなその雰囲気に乗っかっています。このチームで9回を締めるポジションをつかんで、その時にマウンドからどんな景色が見えるのか見てみたいですね」

 最速159キロの右腕が流れを引き寄せる投球を続ければ、その場所へと確実に近づき、チームも上位争いに加わっていくはずだ。

著者:島村誠也●文 text by Seiya Shimamura

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