角田裕毅「打ち負かせる」早くも見据える“フェルスタッペン超え”、RB21理解度に差も王者から学び
2025年F1第4戦バーレーンGPでの移籍後初入賞を経て、角田裕毅は自身の課題をより正確に把握し、自信を深めている。レッドブル「RB21」への理解が進み、その性能を最大限に引き出せるようになれば、チームメイトで4度のF1世界王者であるマックス・フェルスタッペンを打ち負かすことも可能だという手応えを、すでに掴んでいるという。
1周あたり0.25秒差─見えてきた王者の背中
前戦バーレーンGPで角田は、6位のフェルスタッペンから11秒遅れの9位でフィニッシュ。移籍2戦目にして初のポイントを獲得した。ピットストップにおける両者のタイムロスを補正すると、57周を通じて約14秒差、1周あたりのラップタイム差は0.25秒程度に抑えた計算となる。
過去2戦での自身の歩みについて角田は、第5戦サウジアラビアGPを控えたジェッダで、「満足しています。もちろん100%完璧というわけではありませんが、自信も深まっていますし、予想していたよりは少し良い感じですね」と評価した。
一方で、依然として学習プロセスの途上にあるとも強調した。
「週末ごとに目標は設定していますが、ただ、もう少し一貫性を高めたいと思っています。過去2戦のフリー走行では、かなり波がありました」
「もちろん、セッションによっては明確な原因がある場合もありましたが、もっと早い段階からしっかりまとめられていれば、エンジニアたちからの信頼も高まったと思いますし、予選でも、もう少しクルマのパフォーマンスを引き出せたかもしれません。なので、それが今の僕の目標です」
Courtesy Of Red Bull Content Pool
バーレーンGPの決勝レースでバーレーン・インターナショナル・サーキットを走行する角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年4月13日F1バーレーンGP
RB21は高いポテンシャルを持つ一方で、理想的な作動領域、いわゆる“ウインドウ”が非常に狭く、「複雑なマシン」とされている。この特徴は特に、フェルスタッペンよりも角田にとって大きな課題となっている。
RB21が「複雑」であると同意するか?との質問に対して角田は、「”複雑”と一口に言っても、どういった意味で複雑なのかを明確にする必要があると思います」と注意を促した。
「ドライビング、クルマの感触という観点で言えば、悪くはありません。ただ、このクルマのパフォーマンスを最大限に引出すための“ウィンドウ”、つまり理想的な作動領域に持っていくのは確かに、かなり複雑だと感じています」
「セットアップやウォームアップの手順などについては、VCARB時代に慣れ親しんでいたものとは大きく異なるため、そういったアプローチの違いにも慣れていかなければならないという部分もありますが、マシンバランスそのものも、複雑さを少し増している要因だと思います」
角田は、ウインドウの狭さが自身に対して不利に働いていると分析しており、アップグレードによって状況が改善されれば、フェルスタッペンとの差を縮められると考えている。
「おそらくマックスの方が僕よりも、このクルマについての理解が深いと思います。そのため、クルマが理想的なウィンドウに入っていなくても、僕よりも良いパフォーマンスを引き出せるのだと思います。これは予選のように僅差が結果を左右する場面では非常に大きな要素です」
「ただ、理想的なウインドウを見出すことは簡単ではありません。少なくとも僕がチームに加わって以降、ダウンフォースレベルなど、あらゆる要素が頻繁に変更されています。これは決して理想的な状況とは言えません」
「もちろん、チームもこの問題を解決しようと努力していますが、簡単に対処できるものではありません。ただ、今後に向けてアップデートも計画されていると思いますし、上手く状況が改善されれば、より自信を持ってクルマをドライブできると思います」
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ジェッダ市街地コースを自転車で下見する角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年4月17日(木) F1サウジアラビアGPプレビュー
「まだ半分も理解できていない」微細な感覚がカギ
英専門メディア『The Race』によると角田は、RB21の挙動とパフォーマンスを引き出す方法について「まだその半分も理解できていない」と認めた上で、フェルスタッペンが持つ“微細な感覚”を指摘した。
「たとえばピットを出た直後のタイヤの温まり方など、マックスは僕よりも、クルマの中で起きていることを深く感じ取れています」
「予選では、セッションが進むにつれて路面温度が下がっていく中、ウォームアップの仕方や、各コーナーにおけるタイヤの加熱方法、アウトラップのペースを調整するなどして、ラップタイムを向上させるための方法を見つけ出していました」
「でも、僕はそういったことを感じ取れませんでした。VCARBのクルマでは感じられていたことが、RB21ではまだ掴めていないんです。たぶん、まだ完全にリラックスしてこのクルマに乗れていないからだと思います。気持ちが焦っていて、コントロールしきれていないんです」
「現在のレギュレーションでは、タイヤが非常に繊細なので、コーナーごとの0.1秒や数ミリ秒の差が、大きな違いに繋がります。なのでこうした微細な部分が結果を大きく左右することになります」
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ジェッダ市街地コースのパドックを歩く角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年4月17日(木) F1サウジアラビアGPプレビュー
一方で、角田が見据えているのはフェルスタッペンを上回るパフォーマンスだ。実際、その可能性をすでに実感しているという。
VCARBとは「全く異なる」RB21の特性を理解し、最大限のパフォーマンスを引き出せるようになれば、「おそらく、彼(フェルスタッペン)を打ち負かすこともできると思います」と角田は自信を覗かせる。
「もちろん、すぐに勝てるとは思っていません。だからこそ、今はベースをしっかり作って、自分が万全な状態になるタイミングに備えていくだけです」
過去2戦で角田は、フェルスタッペンより高めのダウンフォースレベルを選択。週末全体を通したアプローチに関しても、フェルスタッペンとの間に違いがあることを認めているが、同時に「ブレーキングやリリースのタイミングなど、ドライビングはかなり似ています」と語り、両者のスタイルに「大きな違いはありません」とも説明した。