カメラに見せた謎のポーズ 保育士殺害で逮捕された知人の男 自宅で被害女性の財布発見も 「黙秘します」【宮城発】
カメラの前で指を伸ばし、バツ印のようなポーズを見せた佐藤蓮真容疑者(21)。仙台市に住む保育士・行仕由佳さん(35)を殺害した疑いが持たれている。容疑について黙秘しているという佐藤容疑者は5月17日、捜査本部が置かれた岩沼警察署から仙台地方検察庁に身柄が送られた。冒頭のポーズはその際に佐藤容疑者が見せたものだ。カメラをにらみつけながら示した「バツ」は何を意味するのか。
海岸に遺体 知人の男を逮捕
「砂浜に人が倒れている」4月13日、宮城県岩沼市の海岸を散歩していた人が、仙台市太白区に住む保育士・行仕由佳さん(35)の遺体を発見し、警察に通報した。行仕さんの体には胸などに複数の刺し傷があり、警察は捜査本部を立ち上げ、殺人事件として捜査を始めた。
事件が大きく動いたのは4月26日だ。行仕さんの遺体を砂浜に遺棄した疑いで、警察は岩沼市に住む無職・佐藤蓮真容疑者(21)を逮捕した。(死体遺棄容疑の逮捕時は職業不詳)捜査関係者によると、遺体発見の前日にあたる4月12日午後7時ごろ、佐藤容疑者は行仕さんと複数回電話で話し、行仕さんの自宅近くを訪れていた。その後、佐藤容疑者が運転する車で事件現場の海岸に2人で向かったことが防犯カメラの映像などからわかっている。佐藤容疑者は「行仕さんと一緒に現場まで行ったが、犯行には及んでいない」と、海岸に行ったことは認めたものの、死体遺棄の容疑は認めていないという。
殺人で再逮捕に「黙秘します」
警察は死体遺棄容疑の勾留期限となる5月17日、佐藤容疑者を殺人の疑いで再逮捕した。4月12日午後7時45分ごろから午後8時10分ごろまでの間、遺棄現場近くの防潮堤の上で行仕さんの胸などを刃物で複数回突き刺し、殺害した容疑だ。佐藤容疑者は容疑について「黙秘します」と話したという。
佐藤容疑者の「借金」を捜査
仙台市内の保育園で働き、小学生の息子と2人で暮らしていたという行仕さん。佐藤容疑者は行仕さんとの関係を「知人」と話し、殺害に至るような動機は見当たらない。こうした中、注目されているのが、佐藤容疑者の借金の存在だ。警察は「動機につながるかどうかは現時点で分からない」としているが、可能性の一つとして慎重に調べを進めている。
試合観戦のつながり
佐藤容疑者は定職に就いていなかったが、小学生のとき始めたキックボクシングを続け、「格闘技でプロを目指したい」と周りに話していたという。警察によると、佐藤容疑者は2024年秋ごろ、SNSを通じて行仕さんと知り合い、自身が出場するキックボクシングの試合のチケットを渡していた。行仕さんは何度か観戦にも行っていたという。
無くなった財布 容疑者宅で発見
事件当日の夕方、行仕さんは「忘れ物を取りに行く」と家族に伝えて外出。遺体で見つかったときには、財布とスマートフォンなど、身元が分かるものを持っていなかった。
警察は殺人容疑での逮捕を受けて、行仕さんの財布が佐藤容疑者の自宅から見つかったことを明らかにした。現金やキャッシュカードなど、財布の中身については捜査中を理由に明かしていないが、「金の動きはこれから調べる」という。
スマホのやりとり 消去の疑問
黙秘をする佐藤容疑者の行動で、もう一つ注目されていることがある。捜査関係者によると、佐藤容疑者は事件があったとされる時間帯の直後に、行仕さんとの電話やメッセージなどのやりとりの一部を消していたことが確認されたという。一緒に現場に行っただけなら、なぜやりとりを消す必要があったのか。行仕さんのスマートフォンは現在も見つかっておらず、その理由ははっきりしないままだ。
公園で刃物発見 凶器か?
警察によると、凶器とみられる刃物が岩沼市の公園で発見され、現在、鑑定が行われているという。事件から1カ月が過ぎ、捜査は着々と進んでいる。
今回の逮捕を受けて、行仕さんの遺族は「娘のために早く事件が解決することを祈っております」とコメントを出した。行仕さんを殺害し、逃げたのは一体誰なのか。事件の全容解明が待たれている。