《自爆オーダーって言われるものですね》テスラ日本法人トップの“自爆営業”自供音声を入手 自身は報酬放棄を宣言も「責任の取り方が軽くないか」と社内で渦巻く不満
最近、テスラ車を路上で見かけることが増えたと感じる読者も少なくないだろう。日本法人「テスラジャパン」の販売は長らく伸び悩んでいたが、近年は接客重視を打ち出してショールームも増加させた。 国や自治体の制度を組み合わせれば、最大227万円にも及ぶ補助金も後押しとなり、業績は好調。テスラは公表していないが、日本自動車輸入組合の資料から推計すると、2025年の国内販売台数は前年比9割増の約1万600台で、過去最高を記録した。その勢いに冷や水を浴びせたのが『ダイヤモンド・オンライン』や『週刊文春』が相次いで報じた「自爆営業疑惑」だ。 テスラは日本車のディーラーと異なり、基本的にオンラインで注文が完結する販売方法を取る。顧客が車の購入を希望する際、最初に「注文料」として1万5000円を支払う。この支払いは注文をキャンセルしても戻らない仕組みだという。 問題は、テスラの営業社員の評価が注文数に応じて決まることだ。テスラ関係者が語る。 「社員のインセンティブは実際の納車数ではなく注文の数で決まるため、一部社員は自腹で1万5000円を払って架空の注文を計上していました。納車と営業は全く別のチームが担うという構造を利用したのです。これが“自爆営業”の正体で、過剰なノルマがプレッシャーになっていた」
筆者は複数の社員や関係者に取材し、昨年12月末に実施されたテスラジャパンの社内会議の音声を入手した。そこでは日本法人のトップである橋本理智氏が以下の発言をしていた。 《一部の注文っていうのが実際の購入意図のないセールススタッフによって行なわれていたということが判明いたしました。いわゆるフェイクオーダーとか、セルフオーダーとか、自爆オーダーって言われるものですね》 橋本氏は“自爆”の存在を認め、こうも述べた。 《私からも時折厳しいコミュニケーションをとってしまったことがあり、それが追加のストレスを生んで、チームによるこれらの非論理的な行動に寄与した可能性があると認識しております》 さらに責任を取り自身の2025年下半期のインセンティブ報酬(目標達成などで上乗せされる給与)を放棄すると明言し、《テスラの立場は非常にシンプルです。こうした非論理的な行為を決して容認しません》と断言した。 だがこうした橋本氏の対応に「自爆営業を許容していたのは橋本氏であり、責任の取り方が軽くないか」(現役社員)と不満が渦巻く。40代の橋本氏は趣味が筋トレで、自慢のボディをメディアで堂々とアピールしており、「強そうすぎる」と話題になった人物。自動車業界はテスラ入社が初だが、2024年9月のトップ就任以来、販売台数を急増させた。 現に橋本氏は意気軒昂で、会議ではイーロン・マスク氏から激励されたことを明かし、《来年しっかりと皆さんがワクワクするようなプランをプレゼントできると思うので、一緒に頑張っていけたらいいと思います》と抱負を語った。 しかし「非論理的な行為を容認しない」との言葉とは裏腹に、テスラの現役社員は「会社の体質は変わっていない。自爆よりひどい実態があります」と告発する。 (後編へ続く) 【プロフィール】 加藤久美子(かとう・くみこ)/自動車生活ジャーナリスト。山口県下関市生まれ。大学在学中に国産車ディーラーで納車・引き取りのアルバイトに明け暮れ、卒業後、日刊自動車新聞社に入社。1995年からフリーに。『くるまのニュース』『ニューモデルマガジンX』『ベストカー』などの自動車メディアのほか、週刊誌に寄稿。年間約300本の自動車関連記事を執筆している。 ※週刊ポスト2026年3月20・27日号