大阪万博:楽しい学びクイズと一緒、未知の領域へ一歩後押し…万博スペシャルサポーター伊沢拓司さん : 読売新聞
大阪・関西万博の開幕が13日に迫った。世界中の文化や未来社会の技術が集まる祭典に何を期待するのか。万博に関わる著名人に聞いた。
何よりも、みんなにわくわくしてほしい。今の日本は、憧れを感じづらい社会になりつつある気がします。憧れの対象が近くにいなかったり、逆にSNSの向こう側にいるせいで目指しづらかったり。その中で、科学技術は根拠を持った憧れを提供してくれます。万博という大きな箱が、子どもにとって根拠ある憧れを与えてくれる存在になったら、すてきだと思います。
僕が小学5年だった2005年に愛・地球博(愛知万博)がありました。行くまでは「なんのこっちゃ」という気持ちでしたが、すごくわくわくするものが多かった。初めてロボットを見て、「未来ってこんなにすごいことになるんだ」と。あそこに行ったということ自体が、自分にとっての誇りでした。しばらく、そのロボットを携帯の待ち受けにしていたくらいです。
両親は、1970年の大阪万博を僕と同じく小学生で経験しました。だから、問答無用で愛知万博に連れて行ってくれたのだと思います。次は自分が、より多くの子どもたちに魅力を伝えられればうれしいです。
今回の大阪・関西万博では、教育旅行で訪れる子どもたち向けに、クイズを通して楽しむプログラムを実施予定です。会場の中から自分たちでクイズを作り、お互いに出し合ってもらう。クイズを作ることをきっかけに、ちょっとだけ詳しく見てみようとか、ちょっとだけ探す目線で見てみようとか、そういう機会を提供したいと思います。万博に対して見学者ではなく、取材者になる感覚です。
きっかけがあるだけで、見て学ぶ姿勢というのは大きく変わる。漫然と見るだけではもったいない展示が、たくさんあると思います。楽しみ方をシェア(共有)したいと考えています。
科学の最先端は複雑化し、今回は「月の石」みたいに目玉を作りづらい状況ですが、各パビリオンは、最新の技術や考え方をエンタメの形に起こしてくれている。未知なる領域への一歩目を楽しい形で届け、興味を持って深く知ってもらうという構造は、(クイズを軸とした教育素材の発信に取り組む)クイズノックが掲げる「楽しいから始まる学び」と一緒です。
1970年の未来は、前に進めば我々の暮らしは良くなるという直線的なものでした。ですが、2025年の今、「過去にも目指すべきものがあったのでは」との考えが出てくるべきだと思います。日本の伝統を紹介する展示もあり、過去から学び直すことも、万博が掲げる「いのち輝く未来社会のデザイン」ではないでしょうか。未来一辺倒ではない万博に、僕は一つの魅力を感じています。
期待しているのは、「圧倒的に強いメディアとしての万博」です。今はネットで情報を得られる時代ですが、家にいたって、授業で聞いたって、能動的に検索して調べることってそんなにないですよね。手に入ることに安住していては、何も手に入れられない。だったら万博に行って、未知の領域から飛び込んでくる情報に、欲望を刺激されてほしいなと思います。(聞き手・平野真由)
いざわ・たくし 埼玉県出身。東京大経済学部卒。TBS系のクイズ番組「東大王」などに出演。2016年にウェブメディア「QuizKnock(クイズノック)」を設立し、クイズや謎解きを生かした教育素材を動画などで発信するほか、各地の学校への出前授業を行っている。
児童生徒、目標120万人
日本国際博覧会協会は、万博期間中に全国から修学旅行や校外学習で児童・生徒120万人を受け入れることを目指している。
パビリオンには子どもが楽しめるものも少なくない。パナソニックホールディングスが出展する「ノモの国」は、心が映し出される不思議な国を冒険するというストーリーで、通信デバイスに記録された行動や表情の分析で、性格の特徴と強みを発揮できる環境を知ることができる。総合プロデューサーの原口雄一郎氏は「自分の輝く未来を想像して一歩を踏み出すきっかけにしてほしい」と語る。
現実と仮想世界を融合させる「XR」技術を使った日本ガス協会の「ガスパビリオン おばけワンダーランド」では、仮想空間でのイベントを楽しめる。