「まだ誰も使ってないデカい電力」が地球の奥底に眠っている
地下世界には何かとロマンがあるものですが、特大級のやつが眠っていました。
再生可能エネルギーの「お天気次第」という弱点を補うために、世界で様々な発電が試みられています。
原子力発電を地底に刺してみたり、空気を地下に圧縮してみたり、雨でも発電できる太陽光パネルを作ったり、下水処理場からメタンガスを取り出したり、高密度な流体で揚水発電をやりやすくしたり……。
そんな実験にまた一つ期待の星が登場。地球の内部にある、晴れでも雨でも、昼でも夜でも、保ち続けている熱いヤツを引き出そうとするプロジェクトが動き出しました。
しかもうまくいけば、理論上、世界の電力を最大で8倍にできるというのです。
地球の深部にある「高温岩石地熱」をねらえ!
Image: Quaise EnergyMITのスタートアップ「Quaise Energy」が、オレゴン州立大学(OSU)に75万ドル(約1億1000万円)を提供し、地下深部の環境をラボで再現するための研究を支援することが発表されました。
挑んでいるテーマは超高温岩石地熱。最大で地下およそ20キロメートルという、人類がほとんど足を踏み入れていない深さの岩石を活用して、電力を取り出すという試みです。地上でいえば20キロメートルの高度はすでに成層圏に突入していますから、それはそれは壮大な実験といえるでしょう。
通常の地熱発電は、地下数キロメートルの熱水や蒸気を使います。温泉の延長線上にあるイメージですね。でも、「超高温岩石地熱」が狙うのは、もっと深い場所です。
そこでは温度と圧力がともに極限まで跳ね上がり、水が「液体でも気体でもない、その境界が消失した第三の状態」に変化します。 これが「超臨界水」です。水は約374℃、約500気圧という条件を超えると、まるで密度の濃い蒸気のような不思議な状態になるといいます。
そして、この超臨界水が運べるエネルギーは通常の熱水の最大5倍。同じ設備でもはるかに多くの電気を作れる計算になります。
イメージしてほしいのは「圧力鍋の蒸気」です。地下深くに水を送り込み、高温・高圧の岩盤で加熱して蒸気を作り、それでタービンを回すというような仕組みが想定されています。
1%の活用で、世界の電力を8倍にできる
image: Quaise Energy試算によれば、世界中の超高温岩石のわずか1%を活用できれば最大63テラワットの電力を安定して生み出せるとされています。これは現在の世界全体の発電量の8倍以上にあたります。
しかも、太陽も風も関係なく、24時間365日安定して発電できるポテンシャルがある。じゃあ、なぜ今まで作られなかったのかといえば、問題は「どうやって掘るか」 が確立していないから。地下深部へのアクセスは、従来の石油やガス掘削技術では、経済的な限界を超えてしまうのです。
つまり、温度が上がれば機材は壊れやすくなり、圧力が増せば穴の壁が崩れてしまう。これまでの掘削技術では採算が合わないのです。
image: Quaise EnergyそこでQuaise Energyが開発しているのが、高出力ミリ波で岩石を溶かして穴を開けるというアプローチ。
従来型の回転式掘削機を用いて基盤岩に到達したら、次に高出力ミリ波へ切り替えていく装置を開発中です。
Image: Quaise Energyただし、現時点ではこれは研究段階の話。深く掘れば掘るほど、温度と圧力が上がり、機材や設備にかかる負担は増していきます。岩石が液体をどう通すか、どんな素材なら耐えられるかの検証が必要です。
今回の資金提供を受けてOSUはラボを立ち上げ、最高500℃・500気圧という条件に耐えられる装置を使ったシミュレーションを進めていく計画です。
これはQuaise Energyとしても推しているポイントなのですが、うまくいくと地政学的な要素に関係されないのも良いところですよね。さらに、石油やガス産業の技術を転用しやすいので、働く人の雇用も守りやすいと。
みんなにとって使いやすい最後の電力フロンティアが地下に眠っている。やっぱりロマンがありますね。
Source: Quaise Energy, HDblog