再エネ賦課金が過去最高 32年ごろまで増加 専門家「国民の許容範囲超えている」
太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを普及させるために電気料金に上乗せされる「再エネ賦課金」の引き上げが続いている。2025年度の単価は2年連続で上昇し、標準家庭(使用量400キロワット時)で月約1600円の上乗せ。12年度の導入以来最高で、電気料金の1割超になっている。賦課金総額は25年度までの累計で25兆円を超え、32年度ごろまで増加を続ける見込みだ。再エネ普及に見合う負担なのか、存在意義を問う声も強まっている。
経済産業省は25年度の賦課金単価を1キロワット時当たり3・98円に設定した。5月検針分の電気料金から適用され、標準家庭で月額1592円、年額1万9104円が上乗せされる。賦課金は24年度から0・49円上昇し、電気料金は月額196円、年額2352円高くなる。
政府は、再エネで発電された電気を20年といった長期にわたって固定した価格で買い取るよう電力会社に義務付ける「固定価格買い取り制度」(FIT)を12年度に始めた。電力会社は、買い取り総額と市場での販売収入の差額を賦課金で穴埋めすることになった。
市場価格など踏まえ毎年度設定
賦課金は、経産相が再エネの導入状況や市場価格などを踏まえて毎年度設定する。導入当初の12年度は0・22円だったが、再エネの普及に伴って右肩上がりで増え、22年度には15倍超の3・45円にまで上昇した。
23年度はロシアによるウクライナ侵略などに伴い電力の市場価格が高騰し、電力会社の販売収入が増えたため、逆に賦課金の単価は1・40円に下がった。ただ24年度は市場価格が一服したことで3・49円となり、上昇トレンドが復活した。
賦課金は32年度ごろまで増え続ける見通しだ。FITが導入された12年度に事業用太陽光の買い取り価格は1キロワット時当たり40円に設定された。その後、現在の10円前後まで徐々に下がってきたが、買い取り期間は20年で、価格の高い案件から買い取りが終了していき、賦課金も縮小するとみられる。
賦課金の単価はどの程度まで上昇するのか。電力中央研究所の朝野賢司副研究参事は、30年までの政府の再エネ目標程度の導入が進む場合、4・5円程度まで上がる可能性があるとみる。標準家庭の電気料金に月額約1800円が上乗せされる水準だ。
同研究所が19年に消費者を対象に実施した調査では、再エネ普及に対する費用負担を許容すると答えたのは全体の66%だった。その中で許容額を尋ねたところ、約7割が電気料金に占める割合として「5%以下」を選んだ。足元では賦課金は電気料金の1割を超えており、朝野氏は「すでに国民の許容する範囲を超えている」と指摘する。
政府は買い取り価格の引き下げや入札制の活用などでコスト低減は進んでいると主張する。それでも国民負担は増加しており、業界関係者は「最初の30~40円という買い取り価格が高すぎた。約束をほごにするわけにもいかず、失策だった」と批判する。
朝野氏によると、12~25年度の賦課金の総額は累計で25兆円規模に達する。二酸化炭素(CO2)を1トン削減するために要する費用は3万円を超える計算で、費用対効果の悪い対策だと指摘する。
国民負担につながる恐れ
東日本大震災後、政府が再エネシフトを加速する中、FITが再エネの導入に寄与したのは間違いない。一方で、賦課金は太陽光パネルを大量に生産する中国を利するとの指摘があり、発電設備の建設による環境破壊を訴える住民も出て来ている。
野党の国民民主党などから賦課金の停止を求める声があがっているが、経産省は「賦課金の徴収を停止しても再エネの導入拡大に必要な経費として国民負担が発生する」との立場だ。将来的に賦課金は減る見込みだが、発電事業者のCO2排出量に応じた負担金などが増え、結果として国民負担につながる可能性もある。
朝野氏は「さまざまな温暖化対策の費用対効果を横並びに比較することが必要だ。脱炭素に向けては費用増は避けられず、負担の許容額を高める方策も別途考えないといけない」と語り、国民的な議論の必要性を訴える。(中村智隆)