糖尿病は「治せる」、しかも改善は意外に速い、必要なこととは

血糖値の管理は、すべての糖尿病患者にとって極めて重要だ。糖尿病は慢性疾患であり、多くの場合、生涯にわたる薬物治療が必要となる。ただし多くの人にとって、2型糖尿病は食事、運動、睡眠習慣の改善によって逆転させられる。(Photograph by Sébastien Agnetti, 13PHOTO/Redux)

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 糖尿病は体を弱らせて生命を脅かす慢性疾患であり、失明、腎不全、心疾患のリスクを高める。しかし近年、この病気が必ずしも一生付き合わなければならないものではないことが明らかになりつつある。

 世界保健機関(WHO)によれば、世界では8億3000万人以上が糖尿病を患っており、そのうち95%以上が2型糖尿病だ。2型糖尿病は、1型とは異なり、成人になってから発症する傾向にある。また、米国人の約3分の1が糖尿病予備群だが、そのうち80%以上は自分がそうだと気づいていない(編注:日本の厚生労働省の「令和5年国民健康・栄養調査」では「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性16.8%、女性8.9%)。

「2型糖尿病とは、たとえて言うなら自宅にシロアリがいるようなものです。最初はあまり症状が出ませんが、時間がたつにつれ、内部に深刻なダメージを与えるようになるのです」と、米ジョスリン糖尿病センターの医師オサマ・ハムディ氏は言う。

「しかし幸いなことに、早期の発見と介入によって、病状の進行を逆転させたり、寛解(症状が軽くなったり消えたりした状態)を促したりできることがわかってきました」と氏は話す。

 2型糖尿病の進行を逆転させるために必要なことや、寛解が一般に想像されるよりも早く起こり得る理由について、以下に説明しよう。

2型糖尿病はなぜ起こる?

 2型糖尿病は、インスリン抵抗性(効きにくくなった状態)やインスリン分泌の異常によって引き起こされる。

 インスリンとは、食べたものが分解されてブドウ糖(グルコース)になり、血液中に入った際に膵臓から分泌されるホルモンのことだ。インスリンが血液中のブドウ糖(血糖)を細胞内に取り込ませるおかげで、細胞にエネルギーが供給される。この働きにより、血糖値が下がる。

「2型糖尿病になると、このプロセスが適切に機能しません」と、米ネブラスカ大学医療センターの糖尿病・内分泌・代謝部門助教、シドニー・ブラウント氏は説明する。

 細胞でインスリン抵抗性が起きたり、膵臓が十分なインスリンを作れなかったりすると、血液中の余分なブドウ糖が臓器や全身の血管にダメージを与える。

「血管の損傷こそが、糖尿病が四肢切断、勃起不全、透析、認知症、失明、心臓発作、脳卒中の主要な原因となる理由なのです」と、米テキサス大学医学部准教授エリザベス・ボーン氏は言う。糖尿病はまた、腎臓病、神経障害、数種類のがんの原因にもなる。

 ただし幸いなのは、「2型糖尿病の原因の大部分が、元に戻せる代謝異常であること」だと、米タフツ大学フリードマン栄養科学政策学部のフード・イズ・メディスン研究所所長であり、心臓専門医でもあるダリウシュ・モザファリアン氏は述べている。

 これはつまり、適度な減量、ストレスを減らす、健康的な食事、そして運動量を増やすことなどが、「臓器や組織の正常な機能を回復させるうえで役立つ」ことを意味するのだと氏は言う。

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