ヨガなどの「マインドフルネス」が糖尿病の人の血糖管理を改善 ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる
ヨガやウォーキング、瞑想などの、ストレス緩和やリラックスに役立つ「マインドフルネス」を実践することが、2型糖尿病の治療や管理にも役立つという研究を、南カリフォルニア大学が発表している。
ウォーキングなどの適度な運動に、ゆったりとした呼吸を取り入れたヨガやストレッチを組合せると、糖尿病の人の血糖管理に好ましい影響があらわれるという。研究成果は、医学誌「Journal of Integrative and Complementary Medicine」に発表された。
マインドフルネスを日本語に訳すと、「気付くこと」「意識すること」という意味。(1) いまの瞬間の自分の気持ちや身体に注意を向け、(2) 偏見や願望、過去の経験や先入観などにとらわれず、起きていることをありのままにみる、という2つの要素が重要になる。
ヨガ・ストレッチ・ウォーキングを組み合わせたプログラム
研究グループは、ヨガ、気功、マインドフルネスにもとづくストレッチなど、ストレス軽減につながる行動が、血糖値にどう影響するかを調べた。1993年~2022年に発表されたランダム化比較試験を含む28件の研究を解析した。
その結果、そうしたリラックスしながら行う身体活動の実施は、過去1~2ヵ月の血糖が反映されるHbA1cの平均0.84%の低下と関連しており、もっとも多く研究されていたヨガについては、HbA1cの約1%の低下と関連していることが示された。
ゆっくりと呼吸し、自分の呼吸に注意を向けるトレーニングにより、マインドフルネスを高められる。深い呼吸をしながら行うヨガやストレッチ、ウォーキング、瞑想などを組み合わせたプログラムも開発されている。
ストレスを軽減する効果を確認
ウォーキング・ヨガ・気功・太極拳・瞑想・ストレス軽減のトレーニング・イメージ療法などで構成される「マインドフルネス」の実践は、糖尿病のある人の血糖管理に役立つ可能性があると、米国のハーバード公衆衛生大学院も発表している。
「ライフスタイルを改善し、健康的な食事をとり、運動を習慣化し、睡眠を十分にとることなどは、2型糖尿病のある人にとってセルフケアの基礎となります」と、マサチューセッツ総合病院心身医学研究所のシャル ラムチャンダニ氏は言う。
「それらに加えて、ストレス緩和やリラックスに役立つウォーキング、ヨガやストレッチ、瞑想などを行うことに、ストレスを軽減する効果があることが示されています」としている。
リラクゼーションにより血糖値の管理が改善
ヨガなどのマインドフルネスの実践は、ストレス反応とは正反対のリラクゼーション反応を引き起こすと考えられる。
「リラクゼーション反応は、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを低下させます。これによりインスリン抵抗性が改善され、血糖値の上昇が抑制され、結果としてHbA1c値が低下する可能性があります」と、ラムチャンダニ氏は指摘している。
リラクゼーションにより、血流が改善し、血圧が下がり、心臓病や脳卒中を予防につながることも報告されている。ストレスを軽減し、管理することで、気分が良くなり、自己認識と自己統制力も向上するとしている。
ヨガに12週間取り組むと、膝関節炎によるひざの痛みを軽減でき、その効果は従来の筋力を高める運動と同等であることが、オーストラリアのタスマニア大学や中国の南方医科大学などの新しい研究で示された。
膝関節炎は、関節に炎症が起き、ひざに痛みやこわばりを感じるようになる病気。その原因は、加齢にともなうものやケガによるものなどがあるが、症状は長期間に徐々に進行し、重症化すると痛みのために歩行が困難になることもある。
研究グループは、ひざに中程度の痛みのある成人117人の成人を対象にランダム化比較試験を実施。参加者に、ヨガと筋力強化運動(筋トレ)にそれぞれ12週間取り組んでもらい、その効果を比較した。
その結果、どちらもの運動も膝の痛みを改善する効果があったが、ヨガは膝の症状、生活の質、うつ病の改善の効果がより高いことが示された。
ヨガを24週間続けた人では、痛みの軽減、身体機能の向上、気分の改善など、さらに大きな改善がみられた。
自宅でヨガを実践している人は、長期的に継続できている割合が70%と高く、筋トレの60%より優れていることも示された。
「ヨガを臨床診療で代替あるいは補完的な運動オプションとして取り入れることは、変形性膝関節症などの管理に役立つ可能性があります」と、研究者は述べている。