「炎上するだけ」とSNSも街頭演説もやらず 人目を忍ぶ選挙戦

 

 7月の参院選に初めて独自に挑むパチンコ業界だが、気になるのが「勝算」だ。

 業界を背負って自民党から出馬するのは、パチンコ店(ホール)の業界団体で12年目の理事長を務めるパチンコチェーン会社社長(66)。「一般知名度はゼロ」(業界幹部)で、票を入れてくれると見込むのは、業界内で働く人たちだ。

 「従事者は20万人。みんな候補者の名前は知っていますよ」と選挙対策の担当者は力を込める。

 しかし業界内には、さまざまな不和もある。都市部と地方、そして業種――。今回の参院選が議席を得る「最初で最後のチャンス」と声をからす陣営の訴えは、隅々まで響くのか。

 連載「パチンコ業界 最後の政戦」は全3回です。 ㊤パチンコ業界、欲望むき出しに挑む夏の参院選 知られざる実態を追う ㊥「自民に都合のよい産業に」 パチンコ業界はなぜ政治力を欲するのか

1店舗10枚のポスター

 2025年春、関東のある県の「遊技業協同組合」事務所に大きな荷物が届いた。

 送り主はパチンコ業界の政治団体「全日本遊技産業政治連盟」。入っていたのは、7月の参院選に出馬する阿部恭久氏の顔写真が刷られた、自民のポスターだ。

 この組合事務所は、自民の「遊技産業支部」を兼ねている。

 「県下のホールに張るようにと1店当たり10枚。すぐに各店に配りました」と組合幹部は言う。

 「まずはこの業界で働く人たちに名前を覚えてもらわないと始まらない。従業員が見えるところに張ってもらうよう強くお願いしています」

 この県のあるホールでは実際、6月末になって従業員用のスペースにポスターが張り出された。ある女性従業員は「その日、上の人から(陣営に渡す)紙に名前や住所を書くようにとも言われました」と明かす。

 業界に入って10年弱になる。「パチンコ業界で働く人が下に見られる風潮はあるし、良くなればと思う。ただ、偉い経営者の人が政治家になれば変わるのかどうかは分からない」のが本音だ。

 求められた名前は「書いていない」という。

「得票対象は100万人」

 パチンコ業界は自民の選挙を手伝うようになってから、都道府県ごとに職域政党支部を立ち上げてきた。特にここ数年は業界独自候…

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