滝つぼに落ちるとどうなる? 滝つぼの中の世界をのぞいてみると、助からない理由も納得 #エキスパートトピ

斎藤秀俊水難学者/工学者 水難学会理事/長岡技術科学大学大学院教授
本文とは関係ない場所です(写真:イメージマート)

 大分・豊後大野市の原尻の滝で7月13日夜、男性が行方不明となる事故がありました。「東洋のナイアガラ」と呼ばれる滝だけあって、垂直に切り立った崖の上から水が滝つぼに豪快に落ちる様は圧巻です。滝の高低差は20 mほどといわれており、地元からの情報で滝つぼ深さは10 mくらいはあるのではないかとのこと。

 過去には2009年に車が滝つぼに転落し、2006年には女性が飛び込み亡くなっています。原尻の滝ほど大きくないにしても、滝つぼに落ちたという事故が全国で続いています。落ちるきっかけは何だったのでしょうか。

ココがポイント

13日午後7時30分ごろ、「友人が滝つぼに落ちて見えなくなった」と男性と一緒に滝を訪れていた人から通報出典:TOSテレビ大分 2025/7/14(月)

水深7メートルで沈んでいるのが見つかり、その後死亡が確認されました。警察は男性が足を滑らせて転落した可能性もある出典:MBSニュース 2025/5/19(月)

滝のようになった場所に飛び込んで溺れ、友人らが救助して引き上げたが意識がなかったという。付近の水深は約4メートルだった出典:産経新聞:産経ニュース 2023/8/20(日)

エキスパートの補足・見解

「滝つぼに落ちて見えなくなった」のが、大分・原尻の滝での転落のきっかけです。飛び込むには命の危険を感じるほどの高低差があり、なんらかの原因で「落ちた」と現時点では解釈できます。

「足を滑らせて転落した」のが、奈良・笹ノ滝での事故の見立てで、確かに滝つぼを見るには濡れた岩伝いに近づくしかなく、結果的に水深7 mの滝つぼに沈みました。

「神戸の住吉川」では滝つぼ周辺に高さ2~3 mの岩肌があり、ここから飛び込むにはそれほど勇気を必要としなさそうです。ただ、水深が4 mと深いことから、飛び込みに失敗すると溺れることになりかねません。

 滝つぼの中はどうなっているのか。潜ってのぞいて見ると、特徴は壁がほぼ垂直で急に深くなっていること、水面に滝の水が当たり、水中に向かい泡が立っていること、木の葉の舞い方から、様々な方向に水が流れていることがわかります。垂直方向にグルグル回りません。

 声を出して飛び込むと、思いのほか深く潜ります。水面からある程度まで滝の水が突入してくるので、頭をおさえられかねません。浮き上がったとしてもほぼ垂直の壁に手をかける場所がありません。以上がなかなか助からない理由となります。

水難学者/工学者 水難学会理事/長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 [email protected]

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