「36試合中16登板」パドレス松井裕樹の序列と「ドジャースも“ブラック体質”」過酷なメジャー救援事情…大谷翔平HR量産報道で埋もれがち(Number Web)|dメニューニュース

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「36試合中16登板」パドレス松井裕樹の序列と「ドジャースも“ブラック体質”」過酷なメジャー救援事情…大谷翔平HR量産報道で埋もれがち photograph by Justin Edmonds/Getty Images

 MLBでは「先発投手の肩肘」は、本当に大事にされる。今や100球以上投げる投手はほとんどいない。抑えていても5回70球くらいで引っ込む先発も珍しくない。登板間隔も厳しく管理される。

 これとは対照的に、救援投手は起用法が無造作だ。

ドジャース救援陣の登板過多…“ブラック体質”のナゼ

 ドジャースは今年もグラスノー、スネルと一線級の先発がIL(故障者リスト)に入っている。そのしわ寄せで、救援投手は「ブルペンデー」での先発登板も含め、登板試合数が増えている。チームが41試合を消化した時点で、ベシアが21試合登板、スコットとイェーツが20試合、ガルシアが19試合。このペースだと4投手ともに登板数は70試合をオーバーしそうだが、MLBでは「救援投手の肩肘を守れ」という声は聞こえてこない。

 なぜなら先発投手と異なり、1〜2イニングを抑える救援投手はMLBにはたくさんいるから。昨年、60試合以上登板した投手は両リーグで96人もいた。だから故障すれば「他の投手を連れてくればいい」わけで、年俸も高年俸の傾向がある先発投手の数分の1だ。

 もちろん救援投手でも「絶対的なクローザー」になれば、ヤンキースのマリアノ・リベラやパドレスなどのトレバー・ホフマンのように殿堂入りする例がある。とはいえ大多数の中継ぎは活躍してもほとんど注目されない。活躍できる限りは使われるが、故障すればすぐに戦力外になる。後述する大谷翔平のホームラン量産を筆頭に、MLBの報道において埋もれがちだが――救援投手を取り巻く環境は「ブラック体質」と評しても過言ではないだろう。

救援充実のパドレスで松井裕樹が頑張っている

 パドレスの松井裕樹は、今の日本人メジャーリーガーでただ一人の救援投手。MLBでも最も過酷なポジションで頑張っているのだ。

〈松井裕樹/パドレス〉 ※投手のカッコ内は(球数-ストライク) 2025年 16試0勝1敗0S17回9安2本6球21振 責4率2.12 5月の成績 5月2日パイレーツ戦0.2回0安0本1球0振 責0(8-4)H 5月3日パイレーツ戦1回0安0本1球0振 責0(7-2) 5月5日ヤンキース戦1回0安0本0球0振 責0(15-7) 5月9日ロッキーズ戦1回0安0本0球0振 責0(10-6)

5月11日ロッキーズ戦1回0安0本0球2振 責0(11-8)

 5月はここまで5試合に投げ4.2回で被安打0、2与四球2奪三振、自責点0とほぼ完ぺきに抑えている。しかしながらここまでホールドは1のみ。勝ちゲームのいいところではほとんど投げていない。

 パドレスはナ・リーグ西地区でドジャースと激しい首位争いを演じているが、それを支えているのはリーグ2位の防御率を誇る投手陣だ。とりわけ救援陣の活躍が目覚ましい。

スアレス19試0勝1敗15S0H 18回 率3.00 アダム20試3勝0敗0S12H 22.1回 率1.69 エストラーダ20試1勝2敗0S9H 19.1回 率1.86 モレホン19試1勝1敗1S5H 18回 率3.50 ペラルタ17試2勝0敗0S2H 15.1回 率7.04 ジェイコブ17試1勝0敗0S2H 18.2回 率2.89

松井裕樹16試0勝1敗0S1H 17回 率2.12

 ソフトバンクや阪神で投げていたスアレスが絶対的なクローザー。12日のエンゼルス戦で大量5失点を喫したものの、11日時点では17.2回を投げて自責点1、防御率は0.51で15セーブを挙げていた。中継ぎ投手のうち、勝ちパターンで出てホールドを稼ぐ投手をセットアッパーというが、パドレスでは11ホールドのアダムと8ホールドのエストラーダがそれだ。

スライダーは通用、ただし現状の序列は…

 松井はモレホン、ペラルタ、ジェイコブとともに「普通の中継ぎ」という序列・位置づけだ。ここ2試合、ペラルタが2失点ずつしているので松井のステイタスは若干上がったと思われるが、それでもセットアッパーへの道は険しい。

 昨季の松井は4月までは防御率2.45と順調に滑り出したが、5月に3.48、6月に4.91と崩れた。左腕から繰り出す変化量の多い2種のスライダーは、高校時代から松井の代名詞と言われたが、今季は被打率がグッと下がるなど、MLBでも通用している。

 課題はスタミナだ。過酷な連戦が続く中、先発投手は配慮されてもブルペンは「投げられなくなれば」終わってしまう。春先からドジャースと激しい首位争いを繰り広げるパドレスにあって、松井はセットアッパーへのステップアップを掴むことができるだろうか?

HR量産の大谷が狙える“じつはルース超え”大記録とは

 いよいよエンジンがかかってきた感のある大谷を筆頭に――その他の日本人メジャーリーガーについても現地5月6日から11日までの成績とともに見ていこう。

〈大谷翔平/ドジャース〉 2025年 39試156打48安12本21点10盗27球46振 率.308 OPS1.051 期間 6試合26打10安3本8点0盗 4球6振 率.385 5月6日マーリンズ戦 5打2安1本2点0盗 0球2振 5月7日マーリンズ戦 2打1安0本0点0盗 3球0振 5月8日Dバックス戦 5打1安1本1点0盗 0球1振 5月9日Dバックス戦 6打3安1本4点0盗 0球2振 5月10日Dバックス戦 3打1安0本0点0盗 1球0振

5月11日Dバックス戦 5打2安0本1点0盗 0球1振

 5月5日に今季MLBで3位に相当する打球速度189.7km/hの本塁打を打った大谷は、すっかり本調子になったようで今週は3本塁打、打率.385と猛打を振るった。ただし今季は、例年3割程度ある左方向への本塁打がまだ1本。流し打ちの本塁打が出るようになればさらなる打棒爆発に期待できる。

 ちなみに得点は両リーグで断トツの44。このペースだと20世紀以降最多の1921年、ヤンキースのベーブ・ルースが記録した177得点を抜く可能性が出て来た。

〈鈴木誠也/カブス〉 2025年 37試152打37安9本32点1盗13球49振 率.243 OPS.794 期間 5試22打2安0本1点0盗 0球7振 率.091 5月6日ジャイアンツ戦 5打0安0本0点0盗 0球2振 5月7日ジャイアンツ戦 4打0安0本0点0盗 0球1振 5月9日メッツ戦 4打0安0本0点0盗 0球1振 5月10日メッツ戦 5打2安0本1点0盗 0球2振

5月11日メッツ戦 4打0安0本0点0盗 0球1振

 一時期は大谷を上回る成績だったものの、5月に入って急ブレーキがかかった。ここ2試合左翼守備に就いたが、これも勝手が違ったようで49三振はリーグワースト5位。

〈ラーズ・ヌートバー/カージナルス〉 2025年 40試156打38安6本22点4盗30球28振 率.244 OPS.786 期間 5試21打6安1本4点0盗 3球3振 率.286 5月6日パイレーツ戦 3打0安0本0点0盗 1球1振 5月7日パイレーツ戦 4打3安0本1点0盗 0球0振 5月9日ナショナルズ戦 5打1安0本0点0盗 1球1振 5月10日ナショナルズ戦 5打1安0本2点0盗 0球0振

5月11日ナショナルズ戦 4打1安1本1点0盗 1球1振

 先週は不振だったものの今週は当たりが出て来た。11日のナショナルズ戦では今季2本目の先頭打者本塁打。三振より四球が多い「選球眼の良さ」が売りだ。

中5日の由伸、そして朗希…“奪三振ゼロ”は衝撃

 前週まで中6日で投げていたドジャースの山本由伸と佐々木朗希は、この週は中5日でのマウンドとなった。これが投球に影響した可能性がある。

〈山本由伸/ドジャース〉 2025年 8試4勝3敗0S45回30安4本14球53振 責9率1.80 5月8日Dバックス戦5回6安2本1球4振 責5(88-54)●

 3、4月の最優秀投手に選ばれた山本だが、NPB時代に比べて球数が嵩んでいるのが気になっていた。中5日になれば負担が大きくなる。効率的な投球が求められるところだ。

〈佐々木朗希/ドジャース〉 2025年 8試1勝1敗0S34.1回29安6本22球24振 責18率4.72 5月9日Dバックス戦4回5安2本2球0振 責5(61-43)

 9日の登板での「奪三振なし」のリザルトは衝撃的である。ストライク率を上げるために球速を落とし、スプリッターもNPB時代のキレはなく、長所が消えてしまった印象だ。ロバーツ監督はローテを外す気はないと語ってはいるが、大幅な軌道修正が必要な気がするのだが……。

菅野、千賀はそれぞれのチームでエース級の働き

〈菅野智之/オリオールズ〉 2025年 8試4勝2敗0S46.1回39安7本8球26振 責14率2.72 5月9日エンゼルス戦7.1回3安0本0球5振 責1(93-65)〇

 エンゼルス戦は8回途中まで投げ無四球で自責点1と非の打ちどころがなかった。ア・リーグ東地区最下位のオリオールズにあってもはやエースと言ってよい。投打通じてのWARも1.3でチーム1位になった。

〈千賀滉大/メッツ〉 2025年 7試4勝2敗0S38.2回28安1本17球35振 責5率1.16 5月7日Dバックス戦6回2安0本5球4振 責0(89-48)〇

 2戦続けてのDバックス戦、5四球を出し制球に難があったが自責点0。現在は規定投球回から外れているが、ナ・リーグ防御率1位争い圏内にいる。

〈今永昇太/カブス〉 2025年 8試3勝2敗0S44.2回35安7本14球34振 責14率2.82

 5月4日のブルワーズ戦はベースカバーに走った際に芝に足を取られて左足を痛めた。15日間のIL(負傷者リスト)入り。復帰が待たれるところだ。

〈菊池雄星/エンゼルス〉 2025年 8試0勝4敗0S42.1回42安6本20球39振 責18率3.83 5月7日ブルージェイズ戦6回5安0本1球6振 責1(91-70)

 7日のブルージェイズ戦は6回自責点1、今季もっともよい投球内容で防御率も3点台になったが味方の援護なく勝ち星つかず。依然、未勝利。

〈前田健太/タイガース〉 2025年 7試0勝0敗0S7回9安1本6球7振 責7率9.00

 5月1日にDFAに。7日にウエーバー公示されたが他球団のオファーはなかった。今後はマイナー契約になるか、FAになるかの選択肢となる。日本復帰の道も残されている。

藤浪もリリーフで活路を見出したいが…

 パドレスのダルビッシュ有とレッドソックスの吉田正尚は依然IL(負傷者リスト)。レッドソックスは正一塁手のカサスが今季絶望となった一方で、DHのデバースは一塁コンバートを断った。吉田はまだスローイングに問題があるが、復帰しても微妙な立場にいる。

 ナショナルズ傘下AAAロチェスターの小笠原慎之介は、4月17日に負傷者リスト入り。マイナー契約フィリーズ傘下AAAリーハイバレーの青柳晃洋は、通算防御率は0.96だがここ2試合で4四死球と制球が乱れている。同じくマイナー契約のマリナーズ傘下AAAタコマの藤浪晋太郎はここ2試合、無失点。松井のようにリリーフとして活路を見出したいものの、通算防御率は9.58と依然厳しい。

文=広尾晃

photograph by Justin Edmonds/Getty Images

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