中国で6歳女児が実験的な遺伝子治療を受けた後死亡 報告書

 発信地:ワシントン/米国 [ 米国 北米 ]

中国の国旗(2025年4月14日撮影)。(c)Hector RETAMAL/AFP

【7月25日 AFP】米科学誌サイエンスと学術雑誌に掲載された論文の撤回を報告・分析・議論するサイト「リトラクション・ウォッチ」による共同調査で、6歳の中国人女児メイちゃんが昨年、命にかかわらない遺伝性疾患の治療として実験的な遺伝子治療を受けた後、死亡していたことが23日、明らかになった。

メイちゃんは昨年3月、軽度の認知機能障害を引き起こす稀な遺伝性疾患を治療するため、脳へ作用させる目的で数兆個のウイルスを脊髄内に注入され、その1週間後に死亡した。

だが、80万ドル(約1億3000万円)以上の費用を支払ったメイちゃんの両親に対して、リスクについての十分な説明がなされなかった。

研究チームのリーダーはその後、英科学誌ネイチャーに関連する動物実験の論文を発表したが、その中でメイちゃんには一切触れず、「前臨床研究と臨床応用のギャップを埋めることが依然として大きな課題である」と記載するにとどめた。

これまで明らかにされていなかったこの死亡事故は、2018年にゲノム編集ベビーを極密裏に誕生させて物議を醸した生物物理学者・賀建奎氏のスキャンダルに続き、バイオテクノロジー大国として米国に対抗しようとする中国の野心にとって新たな打撃となる。

メイちゃんはCHD3遺伝子の変異によって引き起こされる「スナイデルス・ブロック・カンポー症候群」という、世界で237人しか症例が報告されていない稀な遺伝性疾患を抱えていた。

この疾患の患者の寿命は一般的に健康な人と同等と考えられ、頭囲が大きくなり知的障害を伴うとされるが、症状の現れ方には個人差が大きい。

メイちゃんの場合、6歳になっても短い文章でしか話せず、子ども用のトレーニング箸で食事していたが、言語療法や作業療法によって改善が見られていた。

この治験を主導したのは、神経科学者の仇子龍氏。同氏は、CRISPR(クリスパー)ゲノム編集をより精密にした塩基編集技術を、稀な遺伝性疾患を持つ子どもたちのカスタム治療法として実用化しようと世界中でしのぎを削る研究者の一人だった。

メイちゃんの事故のわずか1か月前には、米フィラデルフィア小児病院において、命にかかわる代謝異常を抱える乳児が同様の治療を受け成功を収めていた。

メイちゃんの治療において、仇氏は脳を直接対象とした世界初のゲノム編集治療を目指し、神経細胞内の変異遺伝子を書き換えることで生命維持に必要なタンパク質を生成させようとしていた。

だが結果として、メイちゃんは激しい免疫反応を起こし、1週間後に死亡した。

サイエンスとリトラクション・ウォッチの委託で事故の詳細を検証した7人の専門家は、仇氏とそのチームが治験のリスクを過小評価し、成功の可能性が低いにもかかわらず強行したと指摘。

論文の撤回に値するデータが含まれている可能性があるとして、ネイチャーに提出されたデータの全面的な再検証を求めた。

このケースは、命にかかわらない疾患を抱える患者に対して、このようなリスクの高い治療を初期段階で試みるべきなのかという倫理的疑問を投げかけている。(c)AFP

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