ガラパゴス諸島のサンゴ分析結果「ここ40年の温暖化とエルニーニョはマジでエグい」

気候変動とエルニーニョの激甚化フィードバックって悪夢でしかないな…。

晩秋から初冬に迎えるピークに向かって進撃を続けるエルニーニョ現象。観測史上最強になるのはほぼほぼ確実です。監視海域(ニーニョ3.4海域)の日平均海面水温偏差は、すでに観測史上最高を更新しています。

熱帯太平洋の海面水温は、前例がないペースで上昇中

新たな研究によると、気候変動が前代未聞の現象を引き起こす一因になっているようです。

エルニーニョと気候変動が互いを強化

科学誌Scienceに掲載された画期的な研究論文では、ガラパゴス諸島現生および古代のサンゴを分析し、過去1,000年間におけるエルニーニョの勢力の変遷を分析。

その結果、直近40年のエルニーニョは、産業革命以前と比較して40%強くなっていることが明らかになっちゃいました。やっぱりかぁ~。

この研究は、気候変動がエルニーニョの強さを増幅していることを示唆する証拠として、これまででもっとも有力なもののひとつといえます。

これまでも、世界平均気温の記録から、エルニーニョが化石燃料燃焼による温暖化を激化させ、さらなる気温上昇につながっていることはわかっていたんです。

ただ、その逆の「気候変動はエルニーニョの勢力を強くしているのか?」については、ずっと謎なままでした。

研究論文の主執筆者であるジュリア・コール教授(ミシガン大学地球・環境科学科)は、プレスリリースのなかで次のように述べています。

地球温暖化がエルニーニョを激化させていると考えられます。

もしそうだとしたら、極端気象はさらに激化し、生態系やインフラ、人命の損失が拡大するでしょう。

このような影響から完全に身を守れるだけのリソースを持つ国はどこにもありません。

問題の根本原因である化石燃料から脱却すべき理由がまたひとつ増えました。

そもそもエルニーニョって何?

ニュースなどでは「エルニーニョ」「ラニーニャ」と単発の現象を見聞きしますけど、同じ海域で発生するこれらの変動は、まとめて「エルニーニョ・南方振動(ENSO: El Niño-Southern Oscillation)」と呼ばれています。

ENSO(エンソ)は、地球上で最大かつ影響力がもっとも大きい、年ごとの自然変動です。

エルニーニョは、このサイクルのなかで「海面温度が高くなる時期」にあたり、ラニーニャはその逆で「海面温度が低くなる時期」です。

エルニーニョは、東から西へ吹く貿易風が弱まることから始まります。

普段は貿易風によって、暖かい海水が西太平洋側に押し寄せています。貿易風が弱まることで、この温暖な海水が赤道太平洋を横切って東側へ流れ込み、その影響で、赤道太平洋の中央から東側(ペルー沖)の海面水温が急激に上昇します。

エルニーニョが発生すると、地球全体の気象パターンが変わってしまいます。

影響は地域によって異なりますが、多くの地域で熱波や干ばつ、豪雨、洪水、山火事などの極端気象が頻発・激化します。エルニーニョによる気温と海面水温の上昇と、その影響による極端気象の激化は、農業に深刻な打撃を加え、海洋と陸地の生態系を不安定にします。

だからこそ、温暖化が進む世界でエルニーニョがどのように変化していくかを知ることは、あらゆる面で極めて重要なんです。

サンゴに眠る1,000年分の水温の記憶

過去の研究でも、現在進行中の「スーパーエルニーニョ(正式には非常に強いエルニーニョ)」は、地球の平均気温が上昇するにつれて発生しやすくなるだろうと示唆されてきました。

でも、ここまで強いエルニーニョは依然としてめったに起こりません。なので、統計的に有意なサンプル数を確保できないため、関連性を調べることができないままでした。

そこで研究チームは、より多くのサンプルを集めるためにガラパゴス諸島に注目しました。

調査を実施する場所として、ガラパゴス諸島は最適な条件が整っているんです。

東太平洋に位置するガラパゴス諸島には、古代のサンゴが生息しています。サンゴは、炭酸カルシウムの層を分泌することで、年に1cmから2cm成長します。この層の化学成分には、サンゴが育ってきた過程の海面水温が詰まっているんです。

つまりサンゴは、過去のエルニーニョを記録したデータファイルでもあるわけです。

研究チームは、生きているサンゴ群や古代サンゴの岩礁を含む13個体からコアサンプル(筒状にくりぬいたサンプル)を採取。エルニーニョは数年(2年から7年)ごとに発生するため、少なくとも20年分の成長記録を含んでいるコアサンプルに調査対象を絞り込みました。

次に、コアを1mmずつ丁寧に削ってサンプル化し、ストロンチウムとカルシウムの比率および酸素同位体(重さが異なる酸素原子)の比率を測定しました。どちらの数値も、サンゴが成長した当時の水温に依存するので、エルニーニョ発生時の水温の変化を知ることができます。

この作業によって、過去1,000年間にわたって、エルニーニョが発生した際のこの海域における水温変化の歴史を再構築することができたとのこと。

記録を追加するたびに「これは複雑になりそう」と思っていたのですが、実際にはそうなりませんでした。これほど明確なストーリーはありません。

と、コール氏は声明で述べています。

分析の結果、産業革命前と比較した場合、特に最近40年間で、エルニーニョが著しく強くなっていることが明らかになりました。

気候変動がいちばんの原因かどうかを確認するため、チームは気候モデルで過去1,000年の火山噴火や太陽活動の変動をシミュレーションしましたが、どちらもエルニーニョの強度増大とは関連性がなかったそうです。

不確かな点は残るも解決策は明確

今回の研究は、エルニーニョと気候変動の複雑な関係を理解するうえで大きな一歩ではありますけど、人為的温暖化がどのようにエルニーニョを激化させているのか、その具体的なメカニズムは依然として不明です。

コール氏は、海洋成層化が関係している可能性があるとScientific Americanに語っています。海洋成層化とは、水温や塩分濃度の違いによって海水が層状に分かれることで混ざりにくくなる現象です。

温暖化に伴って海面水温も上昇するため、熱帯太平洋では降雨量も増加しています。コール氏は、「この2つが重なると、表層水の密度が低下し、浮力が強くなるため、より深い(冷たい)水の層から隔離されやすくなります」と説明。

こうなると、表層水がエルニーニョ発生時の風の変化に敏感に反応し、東太平洋へ暖かい海水が運ばれることになります。

降雨量が増えると表層水の塩分濃度が低下するため、密度も下がって浮力が増します(沈みにくくなる)し、海面水温が上昇すると水が膨張するため密度が下がって浮力が増すメカニズムです。

付け加えておくと、温暖化が進む限りエルニーニョがずっと強くなり続けると決まったわけではありません。コール氏は、「東太平洋の海面水温が西太平洋と非常に似た状態になるくらい上昇する」可能性があると指摘します。

どういうことかというと、ENSOサイクルの駆動力になっている東太平洋と西太平洋の海面水温の温度差そのものがなくなってしまう可能性があるわけです。坂道が平坦になったらボールは転がらなくなりますよね。

ただ、実際にどうなるかはまだわかりません。

研究チームは、今回の発見が気候変動の緩和策への取り組みが急務であることを強調していると考えているようです。コール氏は警鐘を鳴らします。

エルニーニョは、極端気象の大きな要因です。勢力が増すにつれて、干ばつ、洪水、山火事、食料不安などへの影響もまた大きくなります。

水循環の変化は、インフラを破壊します。家屋や高速道路、鉄道をのみ込んでしまいます。あるいは、コレラのような疾病といった健康被害も引き起こすのです。

「エルニーニョがなくなるならもっと温暖化させればいいじゃん」は、決して正しい答えではありませんぞ。

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