イラン経済制裁は拍子抜け?米金利低下|大橋ひろこ

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WTI原油が下がってきました。イランへの制裁が身構えていたほどではなかった、という判断でしょうか。

WTI原油先物 日足 0:25時点

イランへの経済制裁。作戦名は「Operation Economic Outcast(経済的追放作戦)」ベッセント長官は記者会見で「経済版Dデー」「経済的総攻撃」と呼び、「テヘランが孤立するまで、この体制を支えるあらゆる経済的生命線を断つ」と述べました。

① 経済制裁、5分野の「セクター指定」大統領令に基づき、イラン経済の以下5分野を制裁対象セクターに認定。

①デジタル資産(暗号資産)②テクノロジー③ゴールド④航空⑤海運

この5分野でイランと取引したものが制裁対象という理解でいいと思います。デジタル資産が制裁対象セクターに認定されたのは初めてですね。簡単にまとめちゃうと、上記5分野に関しては、取引する相手を慎重に見極めないと(取引相手がイランと繋がっていないか)米国の制裁対象になりかねないということですね。

② 約60件の個別指定制裁エンティティ・個人・船舶を合わせて約60件が発表されました。

  • 核・弾道ミサイル関連の調達網=東アジア・中東の20社超

  • MOIS(情報省)系のサイバー実行部隊。Mabna Institute関連の5名と、ビットコイン/イーサリアム/TRONの暗号資産アドレス30件(2018年1月以降で計約1,680万ドルの受領)

  • 「影の船団」=イラン産原油の輸送・仲介・給油網。UAE、シンガポール、香港、スイス、欧州にまたがる

③ 二次制裁は「予告」にとどめる最大の焦点だった大手中国銀行への制裁は見送られました。ベッセント長官は発動時期を明示せず、「行動を改める機会を全員に与えている」と説明。トランプ大統領が各国首脳に個別に電話で取引停止を要請している段階、としています。

ワシントン・ポストは、中間選挙後まで軍事オプションを封印し、当面はこの経済戦が対イラン政策の主軸になる、との米当局者の見立てを伝えています。

中国がイランの原油を輸入しているのは明らかで、経済制裁というなら取引に使用されている中国の銀行が対象となるはずですが、今回は具体的に中国の銀行の名が上がりませんでした。本丸への制裁が曖昧だというわけです。その意味では拍子抜けですね。(中国・香港に所在する企業や船舶は実際に指定されています)中国はイランの海上輸出原油の8割超を買っています。その代金決済を担う中国の大手銀行をドル決済網から切れば、資金の出口が塞がる。逆にそこを残す限り、船やブローカーを何十社指定しても代替が湧いて出ます。だから、原油が下がったんじゃないか、という見方もできますね。

ただ、厳しい制裁に踏み切ると、またドル離れが起こる可能性もありますね。ロシア制裁の際にドルを武器化したことをきっかけに新興国のドル離れが加速した経緯があります。基軸通貨ドルを維持するためには、軽々しく制裁を発動できないのです。

原油下落で金利低下?経済指標も軒並み予想を下回る

イランと中国の原油取引の逃げ道を作る結果となった今回の制裁で、原油需給のひっ迫のリスクが低下。原油が低下したことが、今夜の米国の金利低下につながった、、、という見立てでいいでしょうか?

それともベッセントのバイバック増額が効いている?どちらなのかははっきりわかりませんが、結果としてドル金利は低下しています。これを受けて株式市場は堅調。

米国債利回り 0:50時点世界の株価 0:55時点

今夜は発表された経済指標が軒並み予想を下回ったことも金利低下の背景にあるかもしれませんね。

1. 住宅建築許可件数 143.3万件(予想144.3万件)── ほぼ横ばい先行きの住宅着工を示す指標です。速報から0.7%分だけ下方修正された程度で、前月比は+4.3%とプラスを維持。弱いというより「大きな変化なし」

2. ケース・シラー住宅価格 +2.1%(予想+1.8%)── 唯一の上振れ既存住宅の価格動向。予想を上回りましたが、6月分のデータで2カ月遅れです。住宅価格の粘着はインフレ的にはタカ派材料ですが、今夜はほかの指標が弱すぎる・・・。

3. 消費者信頼感指数 89.4(予想90.3)── 今夜最も深刻なのはこれ消費者の景況感を示す指標。90を割り込みました。加えて前回が90.8→90.2へ下方改定されており、見た目以上に弱い。消費者マインドの悪化は、先日の小売売上高▼0.6%と整合します。個人消費がGDPの約7割を占める米国では、これは非常によろしくない結果。

4. リッチモンド連銀製造業指数 4(予想7)── 地域指標の減速バージニア周辺の製造業景況感。プラス圏=拡大は維持していますが、5から4へ低下し予想も下回りました。ISM製造業(7月55.6と好調)と方向が食い違う点は気になりますが、地域指標は振れが大きいので単独では判断材料になりにくいところです。

5. 新築住宅販売 60.7万件(予想62.0万件)── 今夜最大の下振れ前月比▼10.5%**で今年最大の落ち込み、水準も1月以来の低さ。中西部▼43%、南部▼13%と地域的にも広範でした。在庫は9.6カ月分に膨らみ、価格中央値も1年超ぶりの安値。住宅ローン金利の高止まりが効いています。

とはいえ、12月FOMCの利上げ折込は現時点でも70%超あるんですね。

そういえば今夜はこんなNEWSも。ホルムズ海峡の機雷をすべて除去した、ってほんとかな・・・

円売り圧力も健在、ドル円膠着も概算要求に注目

ドル売り材料が出てきているというのにドル円相場はやや円安ドル高圧力が強いですね。為替市場は足元「ドル安円安」です。だからドル円相場は拮抗して動きにくい。しかしドルと円以外の他通貨が強いので、クロス円が強い、という結果につながっていますね。クロス円日足チャート👇

上段 ドル円 ユーロ円 ポンド円下段 NZドル円 豪ドル円 カナダ円

ドルインデックスは下落基調だが

DXY

ドル円は膠着、、、やや円安ドル高気味。

ドル円日足 

しかしこれだけ米国に弱い材料があるのになぜドル円が下がらないのか。どうやら市場は27年度予算編成に注目しているらしい。概算要求を受けたマーケットの反応を見極めたいということか。

しかしベッセント財務長官、先週、週明けにも財政健全化策を発表するといっていたはずですが、どうなっているんでしょうね。Bloombergは8月24日付で「約束された赤字削減計画は数日以内」と報じています。ベッセント氏自身は8月20日のCNBCで、取りまとめについて「今後数週間から数か月が非常にエキサイティングなものになる」と述べており、なんだかよくわかりません・・・・

8/26㈬の主な予定

8/26㈬の最大の注目は21:30に集中する米指標ラッシュです。なかでも7月のPCE価格指数が最重要で、コア前年比は3.3%と横ばい、コア前月比は0.1%→0.2%への加速が見込まれています。ここが上振れするとインフレの粘着性が意識され、9月FOMCの利上げ観測(現状30%台)が上昇する可能性も。同時刻に第2四半期GDP改定値と7月耐久財受注も出るため、方向感が定まるまで振れやすい時間帯です。

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