ワシントンでマリニンファミリーに”武者修行”「クワッド・ゴッド(4回転の神)」から学んだことは?【三浦佳生の滑らかトーク③】:時事ドットコム

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 こんにちは、フィギュアスケーターの三浦佳生です。コラム【三浦佳生の滑らかトーク】の第3回。今回は、アメリカ・ワシントン近郊のバージニア州レストンにあるイリア・マリニン選手(米国)の練習拠点に伺った武者修行の話を中心にしていきます。

左手と腰、大丈夫です!

 まず、サマーカップでけがをした左手と腰は、大丈夫です! フィギュアスケートをしていると転倒はもちろん誰でもあることなのですが、あの腰の打ち付け方は今までなかった…。4回転トーループだったのですが、トーを突く左足と滑っている右足が激突しちゃって。2階ぐらいの高さから転倒したような感覚で、衝撃はやばかったです。1週間ぐらいは痛かった。僕じゃなかったら心も骨も折れています(笑)。

 ちなみに、同じ転倒でも陸と氷の上だったら、陸の方が痛いと思います。氷は硬くて痛そうに見えますが、滑っていくので衝撃も逃げるのではないかと思います。

知りたかった「一貫性」

 そして、8月後半に約2週間、イリアがいるリンクで武者修行をさせてもらいました。今回、イリアにお願いしようと思った大きなきっかけは、昨シーズンの世界選手権(ショートプログラム25位でフリーに進めず)。何かを変えなくてはいけないと思い、海外のすごい選手のところに行ってみたいと。やっぱりイリアは(世界選手権で3連覇を達成し)チャンピオンでずっとやっているので、学びたいと思いました。

 一番知りたかったのは彼の「一貫性」です。安定感には何か秘訣(ひけつ)があるのではないかと。代表合宿などを除けば、自分の練習拠点以外のところに教わりに行くのは初めてでした。イリアには日本でのアイスショーの時に話して、快諾してくれました。「来るなら、こういう練習ができるよ」と。イリアのお父さんとお母さんも、いいよと言ってくれました。(注:マリニンの両親はウズベキスタンの元選手で、母のタチアナさんは四大陸選手権やグランプリ・ファイナルで優勝経験がある。共にマリニンを指導)

厳しいお母さん、優しいお父さん

 アメリカではイリアと一緒に滑って、お父さんとお母さんが指導してくれました。リンクでの練習は午前と夕方。土曜日は午前だけで、日曜日はオフ。午前はお母さんの担当です。お母さんはリンクを離れると優しいのですが、指導は厳しいです(笑)。でもその厳しさが、成長につながりました。お母さんにはスピンやステップも教わりました。

 夕方からはお父さんの指導を受けます。お父さんは、ただただ優しい! お母さんもお父さんも、指導の理論は一緒です。イリアもアドバイスをくれる。ファミリーに教えてもらっている感じでした。

「待って跳ぶ」

 ジャンプのコツというか、一貫性が一番習得したい部分でした。イリアは、どのジャンプも同じように跳べるんです。1回転から4回転まで同じなんですよね。常に安定してプログラムにも入れられている。

 これまでの僕は、どうしても体を締めるのが早くなってしまっていた。腕からいっちゃう分、振り回されたり、軸が外れたりしてしまう部分があったので。そこで「逆に待つ」、「待って跳ぶ」というところが一つキーポイントになりました。

 また、跳ぶコースがランダムになってしまっているところもあって。そういうスケーターは多いのではないかと思います。だから、毎回同じコースでしっかり跳べるように練習しました。 おそらく一般的には、早く回転した方がいいという考えが多いイメージです。コースもストレートに、真っすぐ入って跳ぶんだ、と。でも、イリアたちの考えは違いました。体をできるだけとどめた状態で、体の回旋と同じタイミングで跳ぶ。コースもカーブに入り過ぎず、ストレート過ぎず、「ちょうどいいラインをつくって跳ぶことが一番大事だ」と言われました。

 例えばトーループでも、多くの選手はだいたい真っすぐ入って跳んでいると思います。イリアは、ちょっとカーブから入った方がやりやすいと言っていました。そのコース取りが一番大事で、カーブを滑る勢いを生かして回りにいくみたいな感じかなと。

体に覚えさせる

 僕もそのやり方で練習を重ねましたが、やっぱり長年染み付いたものをすぐに変えるのはすごく難しい。まだばらつきはあるけど、教わった跳び方でできたときは、やっぱりいいな、っていう感覚がありました。できる回数をどんどん増やしていきたいと思って取り組みました。できた時はあっても、やっぱりその回数が少ない。脳は覚えているんですけど、なかなか体でそれを再現するのは難しいから、体に覚えさせていくしかないです。とにかく同じように、ジャンプのモーションをつくれるように。

 これまではパワーを使って跳んでいました。イリアには「Too much Power」と言われましたね。そんなにパワーは使わなくていい、って。「たくさんエネルギーを使わなくても、しっかりタメをつくって同じように跳び上がれば、タイミングだけでもうまく跳べるから」と教えてくれました。

 見ているだけだと、なかなか気付きません。以前、イリアのジャンプの映像をスローで見ることもあったのですが、腕が先にいって体を締めているような感じに見えました。でもそれは間違いでした。腕が先にいっているように見えるのは、回転がただ速いだけでした。彼の締める速度が速い。体と一緒に回っているんですよね。全部のジャンプで同じようにできている。実際に教えてもらわないと分かりません。それを3人から教えてもらい、来た意味は大きかったです。

ラーメンも一緒に

 練習の合間には、イリアとラーメンを食べに行きました。日本の味に近くておいしかったです! 味は豚骨しょうゆ、みたいな感じでした。家にも招待してもらいました。イリアはスケートでも、プライベートでも、張り詰めた感じはないです。そして面白いです!

 イリアは日本が好きで、今年はNHK杯に出るのでわくわくしていました。家族全員で来るかも、と言っていました。スケジュールの都合もあると思うのですが、今回のお礼も兼ねて、ご飯に連れていけるといいなーと思っています。

自炊も、筋トレも

 アメリカでの食事は、キッチン付きのホテルだったので、自分でもつくりました。スーパーで肉やエビを買って、焼いて。味付けはにんにくしょうゆみたいな。普段も、食事は過度には制限していません。最近は自炊することが増えました。適当に食材を切って、見た目は気にしていないです(笑)。おいしければいいので! でも、栄養はめっちゃ気にしています。脂質は意識しているので、低脂質のカレーをつくることもあります。食べるときはしっかり食べます。筋トレはアメリカでもやりました。自分のアブローラーも持参しました!

ちょっとずつでも

 9月4日から木下グループ杯(東京・田中貴金属アイスアリーナ)に出ます。帰国してすぐなので、結構ハード(苦笑)。時差もきついのですが、全体的に、お客さんから見ても変わったなと思われるような滑りがしたいです。全部がすぐ変わるのは難しくて、ちょっとずつではあると思いますが、そこを見ていただきたいです。イリアのお母さんに指導してもらったスピンも良くなっている感じがします。応援、よろしくお願いします!

 それでは次回のコラムもお楽しみに。にんにく、ましまし!!(構成・時事通信ニューヨーク特派員 岩尾哲大)

 三浦 佳生(みうら・かお)2023年世界ジュニア選手権優勝。四大陸選手権は23、26年に制覇。25年全日本選手権3位。26年ミラノ・コルティナ五輪代表。明治大在学中。東京都出身。21歳。プロ野球の観戦が趣味で、福岡ソフトバンクホークスのファン。好きな食べ物はラーメン。

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