世界卓球2025ドーハ 「梅村礼の眼」 女子シングルス準々決勝 伊藤美誠 対 王芸迪 「美誠らしさ」が戻ってきた

[国際大会]

2025.05.24

 世界卓球2025ドーハでは、2019年以来6年ぶりに、元全日本チャンピオン、日本代表にして、現在はTBE(タマス・バタフライ・ヨーロッパ)に勤務し、世界の卓球事情に通じた梅村ならではの眼で世界卓球で繰り広げられた名勝負を解説する。 ここでは、女子シングルス準々決勝伊藤美誠(日本)対王芸迪(中国)の一戦について話を聞いた。

伊藤には「仕留めにいく姿勢」が見えたと梅村

▼女子シングルス準々決勝伊藤美誠(日本) -6,8,6,8,9 王芸迪(中国)

「美誠らしさ」が戻ってきた

 伊藤選手は東京オリンピックのあと、しばらく苦しんでるなって印象があったんですよね。打点をとにかく早くして、相手を振り回そうとするスタイルにシフトしてたんですけど、どうしても"手先だけ"っていう感じでボールに力が乗ってこないというか、小手先だけでなんとかしようとしてるように見えてました。 でも、ここ1年〜1年半くらいで、また「昔の美誠らしさ」が戻ってきたなっていうのを感じていました。緩急があって、トリッキーで、最後はしっかり叩いて仕留めにいく、あのスタイルですね。今日の試合は、まさにそれがハマったという内容だったと思います。

レシーブの工夫がうまくいっていた

 まず、レシーブですね。いろいろなことをやっていましたよね。バック面の表ラバーで横回転かけたり、そこに上回転とか下回転を混ぜたり、ちょっと速いボールを出してみたり、逆に止まるようなボールで崩したりと、あのレシーブのバリエーションが効いていました。 しかも、今回の台はちょっと"止まる"感じがあったみたいで、サイドスピンかけると意外とその場に残るんですね。だから、相手が思い切って打てない。構えてるのに弾詰まりしてるみたいな状態になる。あれは本当にうまくいっていましたね。

フォアもバックも「仕留めにいく姿勢」が見えた

 さらに、攻撃面でも打てるボールは全部しっかり仕留めにいってました。フォアはもちろん、バックでも速いタイミングで入れたり、あえて緩急つけたりして、自分から試合を組み立ててる感じがしました。あのコントロール力はさすがです。数年前、中国が伊藤選手を非常に警戒している時期ありましたが、あの頃の"要注意人物ミマ"に戻ってきたような、そんな気がしました。  王芸迪にはその緩急がバッチリ効いていましたね。終盤はちょっと一方的なくらい伊藤選手のペースでした。緩くして、揺さぶって、最後にドンっと叩いて終わらせる。あれができてるときの伊藤選手は本当に強いです。メダル決定戦という大事な場面で、自分の卓球を出しきって勝ち切ったというのは、本人にとってもすごく大きい勝利だったと思います。

孫穎莎戦は思い切って美誠らしいプレーをしてほしい

 明日の準決勝の対戦相手は孫穎莎(中国)ですが、今日みたいにはいかないと思います。ちょっと甘いボールが出るとすぐに上からねじ込んでくるような強烈なドライブ打ってきますし、コース取りもとにかく厳しい。間違いなく面白い展開にはなるでしょうけど、厳しい相手です。 でも、伊藤選手自身は今日メダルを取ったことで、プレッシャーから解放された部分もあるんじゃないでしょうか。あとは同世代の孫穎莎をどう攻略するかっていうところに集中できると思います。そういう意味でも、今の伊藤選手の精神状態はすごくいいと思います。「勝たなきゃ」じゃなくて、「楽しんで思い切ってやれば勝てる」って思えている、本当にいい状態だと思います。思い切って「美誠らしい」プレーをしてほしいですね。

卓レポX(旧ツイッター)

(取材/まとめ=卓球レポート)

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