寝る前に布団の中で「1分間」考えるだけ…脳科学者が教える「本当に頭のいい人」が毎晩やっていること AIは確かにすごい、でも脳の方がもっとすごい

マウスを使い、光遺伝学を駆使した実験を通して、僕たちは潜在意識下の脳機能に科学的に迫ることができました。ひらめきの瞬間を、ニューロン群の活動というデータで示せたのです。(※)

※編集部註:実験の詳細は、井ノ口馨『アイドリング脳 ひらめきの謎を解き明かす』(幻冬舎)をご参照ください。

正解は脳の中に用意されている、あとはそれを意識に上らせるだけ――。

ここまでは科学的根拠をもって言えるようになりました。

では、どうしたらその正解を意識に上らせることができるのか? どうしたらひらめくことができるのか? この点については科学的に言えることはまだありませんが、過去の多くの人の経験および僕自身の実体験から、「アイドリング脳を働かせること」がカギになると言えると思います。

まずは拙著でもお話ししてきたように、自分に合った、ぼーっとできる方法を見つけて、意識的に実行することが挙げられます。そうすることで脳がバックグラウンドで活動を続けて、睡眠中に用意された正解が意識に上ってきやすくなります。

限界までインプットする

つねに忙しくしていたり、スマホに集中していたりすると、ひらめく体験を得るのは難しいと思います。リラックスの時間を設けて、ぼんやりと思考をめぐらすのです。睡眠中やうつらうつらしているときに、ひらめくこともあるでしょう。特に、うつらうつらしているときは、脳が意識と無意識の間を行ったり来たりするため、アイデアが出やすいのではないでしょうか。

ひらめいた内容を忘れてしまわないようにする工夫があってもよいかもしれません。

もちろんそれ以前にしっかりとインプットしておくことが不可欠です。マウスの実験でもトレーニング時間が短いと、推論の正答率は上がらなかったからです。

科学者たちのように、いくら考えても行き詰まるところまで追い込むことがベースとなります。優れたアイデアを得たいと思うなら、自分の限界まで真剣にインプットしてみてください。インプットが足りない状態では、解決策にたどりつかないでしょう。


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ただし、寝不足は、アイドリング脳に限らず何においても良いことは1つもありません。自分に合った適切な睡眠時間を確保されることをおすすめします。

ポイントは、「アイドリング脳に頑張ってもらうこと」です。

40億年の進化の歴史の中で選ばれた部品が使われているアイドリング脳が、十分に力を発揮できる環境をつくってあげることなのです。

そうすれば、日常の些細な悩み事やちょっとした解決法、あるいはちょっとしたアイデアなんかを捻出するのにも使えますし、もしかしたら、誰も思いつかなかったような画期的な考えをも、アイドリング脳は思いついてくれるかもしれません。

あえて放っておく時間をつくる

もう1つ、アイドリング脳の活用法を紹介しましょう。

取り掛かるべきタスクがあるのに、なぜか別の作業をしてしまうことはありませんか? 提出期限が迫った仕事があるのにデスクの整理をしてみたり、試験勉強をしなくちゃいけないのにスマホを見続けたり……。

無駄なことで時間を使ったと後悔するかもしれませんが、もしかしたら、無意識にアイドリング脳を働かせているのかもしれません。

実は、僕も無意識に同じようなことをしていました。でも、これが有効なことに気づき、今は、あえて1日の中に取り入れています。

実行するのは、難しい仕事に取り組むときです。一筋縄ではいかない仕事だと分かったら、朝少しだけインプットしたり、少しだけ取り掛かったりして、放ったらかしにしておくのです。インプットの時間は10分か20分か、その程度です。そして別の簡単な仕事に取り掛かります。この間に潜在意識下で脳に難しい仕事を考えてもらうわけです。

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