「足が太くて短いからミニスカートは履きたくない」20代の日本人女性にメキシコ人が真顔で返した一言 メキシコに"自虐"の文化はない
「毎日生きづらい」と感じ、心の持ちように悩む人がいる。日本社会に馴染めず24歳でメキシコへ移住し、現在YouTubeでラテン文化を発信している日本人Vlogerルス・グアダルーペさんは、「『自分が適合できる環境を探す』ことが大切だ。今しんどい人は、一度メキシコ人の思考に触れてみてほしい」という――。
※本稿は、ルス・グアダルーペ『ラテンのフィルターを通した世界はいつでもポジティブ 社会不適合者の人生サバイブ術』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/MANICO
※写真はイメージです
自虐ネタは言わない! 日本人とメキシコ人の見た目の考え方
メキシコと日本では、“見た目”に対する考え方がまったく異なります。
日本ではふわっとした服を着て体形を隠す人も多いですが、メキシコの場合は身体のラインを出すほうが良しとされます。美人より、胸とお尻が大きい人が魅力的。女性だけでなく男性も、お尻が大きい人がモテる傾向にあります。
日本だと太っていることをマイナスに見られがちですが、メキシコではそういう感覚もありません。すんごいお腹の出ている人がへそ出しファッションをして歩いていることもよくあります。
また、年齢を重ねてファッションが地味になるようなこともありません。
たとえば、ショッキングピンクの服を着た派手なおばあちゃんがいても視線を集めることはありません。日本の場合、おじいちゃん・おばあちゃんになるとなぜかファッションが落ち着いていきますよね。
日本の年配の方が、みんなグレーや茶色など地味な色の服を着ているのを見て、メキシコとのギャップを感じました。
また、メキシコでは自分の体形を自虐する人を見たことがありません。
以前、メキシコ人の女友だちと服の話題になったことがあります。私が何気なく「足が太くて短いから、あんまりミニスカートは履きたくないんだよね」と言うと、友人から「全然そんなことない!」と必死でフォローされてしまいました。
日本だと、友人の前で自分の体形を自虐するなんてよくあることですよね。
でもメキシコの場合は、自虐することが稀。私が「足の太さに本気で悩んでいる」と、深刻な問題としてとらえられてしまったようです。
自信を持って好きな格好をしている
メキシコ人は、日本人に比べると自分に自信を持っている人が多いように思います。SNSに自撮りを載せるのは普通。自分が音楽に合わせて踊っている様子を、Instagramのストーリーに上げているのもよく見ます。
それから、これはグアテマラでの体験ですが「若いんだからセクシーさを強調したほうが良い!」と力説されたこともあります。
グアテマラの語学学校に通っていたときのこと。私を担当してくれていた先生は、いつも胸の谷間ががっつり見えるセクシーな服装をしていました。
彼女は私のファッションを見て、「なんで若いのに身体のラインを隠してるの⁉」と指摘。さらに「下着はTバックじゃなきゃダメよ!」と言い、私を道端で下着を売っている市場に連行。すごくセクシーな下着を選んでくれました。
日本だと、自分に自信がなく体形を隠している人のほうが多いと思います。国によっては、そういうマインドのほうが少数派。ラテンアメリカの人たちは、自信を持って自分の好きな格好をしています。
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メキシコ人には、あまり「恥ずかしい」という感覚がありません。
愛情の伝え方はダイレクトで、毎日「好き」「愛してる」と言い合うのが普通。それは恋人同士だけでなく、友だち同士でも同じです。対面で伝えるのはもちろん、メッセージでも「大好きだよ」と送り合います。
この過度な愛情表現について、メキシコ人の友人に「なんで?」と尋ねたことがあります。すると、返ってきたのは「だって、いつ死ぬかわからないから(※)」という答え。
「今日が最後かもしれない」と思っているからこそ、恥ずかしがっている場合ではない。愛は日々伝えないといけないんだ……と言うのです。
メキシコ人たちと接していて思うのは、「彼らは未来も過去もあまり考えていない」ということ。
“今”しか考えていないので、貯金も全然しません。同様に、過去を振り返って後悔することもありません。あるかわからない未来より、生きている“今”を大事にしよう。そういう気概を感じます。
平和な日本で生きていると、明日が来るのは当たり前のように思ってしまいます。当たり前に未来があって、だからこそ未来のために貯金をしたり、現状を不安に思ったりする。でも実際は、いつ事故に遭うかわからないし、いつ死ぬかわかりません。
メキシコの場合は日本以上に交通事故や事件が多いのもあって、「いつ死ぬかわからない」という考え方こそが現実的。
(※)キリスト教圏では、「メメントモリ(人に訪れる死を忘ることなかれ)」という考えが根強くあります。
日本人は仕事に人生をかけすぎ
メキシコにも日本と同じく“自殺”する人はいます。ただ、いじめや鬱を理由に自殺する人はいるけど、「仕事で病んで自殺する」人は少なく感じます。
というのも、メキシコ人は日本人ほど、仕事に対して人生をかけていないから。
ルス・グアダルーペ『ラテンのフィルターを通した世界はいつでもポジティブ 社会不適合者の人生サバイブ術』(KADOKAWA)
メキシコ人は世界的に見ても平均労働時間が長いそうなのですが、これは貧富の差が影響しています。植民地時代の名残りで家柄によっての格差が大きく、富裕層が低所得層を使用人のように扱う文化が残っているので、虐げられる側の人は、生きるために少ない給料で長く働かなきゃいけない。「働きすぎ」と言われる日本人よりも長く働いているというデータがあります。
長く働く理由は諸説あり、個人的に思うのは“低賃金”が関係しているのではということ。メキシコは貧困層の割合が多く、彼らは少ない給料で長く働かなければなりません。仕事を掛け持ちする人も多いので労働時間が長引くのだろうけど、それはあくまでも「お金のため」「家族のため」。
日本人みたいにやりがいのために働いたり、「仕事=人生」みたいな価値観を持っていたりする人はあまり見たことがありません。日本では仕事が一番になっているので、パワハラされても言い返せない、耐えなきゃいけない……という考え方の人も多いと思います。
メキシコの場合、あくまでも一番大切なのはプライベート。次の仕事さえ見つかれば簡単に辞める人が多いです。
人生で何が大事かを考えることが、ラクに生きる一歩
日本は我慢が美徳とされていますが、メキシコ人にも我慢強い側面があります。たとえば電車やバスが全然来なくてもじっと待つし、停電や事故で物事が予定通り進まなくても文句言わずに受け入れます。でもそれは「文句を言っても変わらないから」。諦めのようなものです。
一方仕事は、自分次第でいくらでも変える事ができる。だから耐える必要がないんですね。
「自分の人生を豊かにできるのは自分だけ」こういうメキシコマインドに辿り着くためには、「人生で何が大事か」を明確にするといいのかもしれません。
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幼稚園で働いていたときによく思っていたのが、「メキシコには反省する文化がない」ということ。
日本人って、けっこう「一度犯した失敗は二度と繰り返さないぞ」という心意気があると思います。でもメキシコ人にはそれがなくて、何回でも同じ失敗をします。日本人が反省しすぎている可能性もありますけどね。
例をあげると、BBQ場の予約でスタッフに日時のミスをされ、予定が台なしになったことがありました。それを責任者に伝えると、「そのスタッフはもうクビにしたから大丈夫」とまさかの返答。
でもこれメキシコあるあるで、車の修理でミスをされた時にも同じことを言われました。こんなだから何度も失敗を繰り返すんだ……と、妙に納得ですが。
日本だと、ミスが起きるとその原因を追求しますよね。個人の過失もありますが、それが100%ということはなく、システム自体がミスを引き起こしやすかったりと、プロセスや管理方法にも目を向けます。
メキシコでは、ロジックよりもインパクト重視。クレーム対応としても「クビにします」の方がインパクトがあって客を納得させやすいのかもしれません。
日本のクレーム対応だと「原因を究明し、再発防止のための具体的な対策を検討します」が定型文。こうやって比較すると日本の謝罪は結構論理的で面白いですね。
考えても解決しないなら忘れる
反省する文化がないのに関連して、「嫌なことがあったら忘れる」文化もあります。
以前、ぶつけられて自家用車に傷がついたことがあります。
私は「お金かかる、はぁ……」とめちゃくちゃ落ち込んでいました。夫も「最悪だね!」と同調していたのに、そのそばからInstagramでリールを見て爆笑していたりします。
私は「切り替え早っ!」と驚きますが、夫的には「考えてもしようがない」という考え。
考えることでその状況が変わるのであれば良いけど、解決しないのであれば考えても意味がない。ならば、別のことをして楽しむ時間に使ったほうが良い……。そういう考え方なのだと思います。
筆者提供
私自身、悩んでもしようがないことはなるべく考えないようにします。
でも深く考えること自体は好き。考えることで納得できるタイプでもあります。私が怖いのは、納得できないまま終わってしまうこと。
なぜこうなったのか、原因は何だったのか……メキシコ人とは異なり、私はけっこう深く考えます。たとえば嫌なことを言われた場合、どんな意図であんなことを言ったんだろうとか、その人と自分の考え方がどう違うのかとか、納得できるまで考えます。そのほうがスッキリするんですよね。
メキシコ人の場合は、トラブルが多すぎて「考えてもしようがない」というモードになっているのだと思います。だからこそ、考えすぎず「楽しいことをして元気を出そう!」というマインドになっているのかな。
何か嫌なことが起きたら、まずは「考えて解決すること」なのか「考えても意味がないこと」なのかを判断すると良いかもしれません。
考えても意味がないなら、メキシコ人のように「楽しいことをして忘れよう!」精神を選択するのもオススメです。