ヘッジファンド、VIX先物売り越しが3年ぶり高水準-混乱の前兆も
ボラティリティー(変動性)が影を潜めている。ヘッジファンドはこの静けさが続くと見込み、シカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)先物のネットショート(売り越し)は3年ぶりの水準に達している。だが過去の経緯を見ると、こうした不気味な落ち着きと極端なポジションは、市場混乱や相場下落の前に現れることが多い。
米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、ヘッジファンドや大口投機家による売り越しは19日までの1週間に約9万2786枚と、2022年9月以来の水準に達した。
サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ(金融派生商品)戦略共同責任者クリス・マーフィー氏はVIX低下に積極的に賭ける動きについて、確信の表れ、あるいは過信かもしれないとみている。
「ポジションが行き過ぎれば、ボラティリティーが思いがけず急上昇した際にトレーダーは意表を突かれるため、注視する必要がある」とし、「関税の影響があっても景気が堅調なことから、ボラティリティーのショートが増えている。ただ今年序盤にトレーダーはポジションを誤り、貿易への懸念からポジション巻き戻しを余儀なくされた」と述べた。
これは2月に起きた状況だ。S&P500種株価指数はピークを付けたが、トランプ米大統領による世界的な通商戦争が金融市場の動揺やリセッション(景気後退)を招くとの懸念から市場の混乱が急激に高まった。低いボラティリティーを25年にかけて予想していたプロの投資家は不意を突かれた。
VIXの極端なショートは24年7月にも見られた。だが同年8月に円キャリートレード解消が進み、世界市場が混乱した。
もっともCFTCのデータは、上場投資商品(ETP)でのポジションや、ヘッジやレラティブバリュー(相対価値)戦略としてロングとショートを組み合わせる取引を反映していない。
とはいえVIXは依然として15未満にとどまっている。これは過去1年間の平均を約24%下回る水準だ。今月22日には、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長発言が9月利下げ観測を後押ししたことを受けて米国株が上昇し、VIXは今年最も低い水準に下げた。
原題:Hedge Funds Are Shorting the VIX at a Rate Not Seen Since 2022(抜粋)