金や銀が米国に続々流入、関税に備え空輸急ぐ-「極めて異例」との声
- トランプ政権による関税の脅威、前例のない混乱引き起こす
- 大統領選以降、COMEXの保管庫では金や銀の在庫が急増
ロンドンからニューヨークへ向かう民間航空機に、厳重に梱包(こんぽう)された木箱が積み込まれるという動きが過去数カ月にわたって続いている。米国に到着すると、トラックがそれらを回収する。ドライバーのほとんどは何を運んでいるのか知らない。
中身は銀の延べ棒だ。米政府による関税発動が迫っていると懸念する取引業者らが、米国に急いで輸入している。
金はロンドンやニューヨーク、チューリヒ、香港、上海など世界の主要な取引拠点間を空輸されるのが一般的だが、より安価な銀は海上輸送されるのが通常だ。
しかし、トランプ米政権による関税の脅威が前例のない混乱を引き起こしている。米国の銀先物は1オンス当たり1ドル超のプレミアムに急騰しており、空輸が可能になっていると、取引業者らは明らかにした。新たな貿易措置が発表される前に、米国に急いで輸送しているという。
「極めて異例だ」と業界のベテランで、コンサルタント会社メタルズ・フォーカス創業パートナーのフィリップ・ニューマン氏は指摘。「ロンドン-ニューヨークの路線に関して、こうした話を聞くのは初めてだ」と語った。
金と銅も米国に流入している。昨年11月の米大統領選でのトランプ氏勝利以降、先物価格は国際的なベンチマークを上回っている。大量の金属を短期間に米国に移送することができる一握りの商社や銀行にとっては好機となっているが、そうでない投資家には大きなリスクをもたらしている。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の保管庫には選挙日以降に、1400万オンス近い金(380億ドル相当=約5兆8900億円)が流れ込んだ。銀は4300万オンスが流入した。
金スポット相場は今週、最高値を更新。トランプ政権の関税引き上げが迫る中、安全逃避先とされる金が買われた。
原題:Traders Load US-Bound Planes With Gold and Silver in Tariff Bet(抜粋)