ECB、利下げ最終局面に突入-スムーズな合意は3月が最後にも
欧州中央銀行(ECB)は利下げサイクルの最終段階に近づいている。これに伴い意見対立が激しくなり、今後数カ月の意思決定は容易ではなくなりそうだ。
6日には中銀預金金利が2.5%に引き下げられると広く予想されているが、これが26人の当局者があっさりと合意できる最後の措置となる可能性が高い。
どこまで、またどのくらいのペースで金利を引き下げるかについての論争はすでに始まっている。
借り入れコストは既に景気を抑制しない水準に近づいており、緩和し過ぎに警鐘を鳴らす声も上がっている。
慎重姿勢を示す理由はほかにもある。 米国の貿易関税がユーロ圏の成長見通しに悪影響を及ぼす可能性がある一方で、ウクライナの和平合意が実現すれば見通しは大きく改善する公算が大きい。
「論争が激化していることから、さらなる利下げについて当局者が合意することは難しくなるだろう。利下げペースが幾らか鈍化する可能性もある」と、ゴールドマン・サックスの欧州チーフエコノミスト、ヤリ・ステーン氏は述べた。
「4月は利下げが一時停止される可能性もあるが、追加利下げが行われる可能性も依然として高いだろう」と語った。
ブルームバーグの調査に答えたエコノミストらも、見通しは不透明になるとみている。今週の利下げはほぼ全会一致で予測しているが、4月は据え置きとの見方が4分の1ほどある。投資家も様子見の構えだ。
3月の政策委員会を前に、タカ派メンバーは中銀預金金利が年央までにスムーズに2%に達するという基本シナリオに異議を唱え始めている。
シュナーベル理事は、現行政策がなお景気抑制的であるかどうか確信が持てないと述べた。
ウンシュ・ベルギー中銀総裁氏は「何も考えずに2%に向かって歩む」べきではないと釘を刺し、ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁はさらなる利下げを「急ぐべきではない」と述べた。
ハト派寄りの当局者らも譲歩するつもりはないようだ。フランス中銀のビルロワドガロー総裁は「今年の夏に2%になることは可能だ」と述べ、チポローネ理事はECBが保有債券の縮小による量的引き締め(QT)を進めていることを、より積極的に緩和すべき理由として挙げた。
Source: Insee, Destatis, Istat
ECBは2025年にインフレ率が目標の2%に達すると依然として見込んでいる。3日発表された2月のインフレ率は2.4%と予想の2.3%を若干上回ったが、1年以上にわたって約4%というハイペースで上昇を続けていがサービス価格は3.7%上昇に鈍化した。
ECBは賃金上昇が減速するにつれて、サービスインフレも鈍化すると以前から予測している。ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、カミル・コバル氏は、今後数カ月はこれが実現する証拠がより大きな意味を持つことになるとみている。
「4月、場合によっては6月も、ECBは一つ一つのデータをより重視する可能性がある。4月の政策委の前に発表されたインフレ率が高ければ、利下げは行わないだろう。低ければ、実施するだろう」と語った。
もう一つの未知数は、トランプ米大統領が欧州製品に関税を課すかどうかだ。成長への打撃となることが想定される。
インフレへの影響はそれほど明確ではないが、少なくとも長期的には上昇圧力が優勢になり得ると、Gプラス・エコノミクスのチーフエコノミスト、レナ・コミレバ氏は述べた。
Policymakers may be done after next week — or cut deposit rate to 1%
Source: Bloomberg survey of economists conducted Feb. 21-26
さらに問題を複雑にするのは、トランプ氏が米国はもはや欧州の安全保障を担保しない姿勢を示しているため、国防関連の財政支出が大幅に増加する見通しであることだ。
RBCキャピタル・マーケッツのグローバルマクロストラテジスト、ピーター・シャフリク氏は、総合的に見て最近のインフレ率と賃金上昇鈍化を考慮すると「4月に追加利下げを行うべきだという議論は十分に成り立つ。しかし、2.5%から2%の間のどこかで、利下げ停止を求める声が大きくなるだろう」と語った。
原題:ECB Rate Cuts Enter Final Stretch With Divisions Widening (1)(抜粋)