【日本市況】債券上昇、韓国政情不安で安全志向-TOPIXは反落
4日の日本市場では債券が上昇(金利は低下)。韓国の政情不安で安全資産に投資資金を振り向ける動きが広がる中、午後の取引では日本銀行が年内の利上げを見送るとの見方も出て、先物が上げ幅を拡大した。
円は対ドルで一時150円台前半に下落。リスク回避の円買いが一服し、ドルが買い戻された。株式は東証株価指数(TOPIX)が反落し、国内金利の低下を材料に銀行株のほか、電力や陸運など内需セクターを中心に下落銘柄の方が多かった。
韓国の尹錫悦大統領は3日、緊急の国民向けテレビ演説で「非常戒厳」を宣布。政権のまひを狙う野党の動きを封じる決断を下し、同日のニューヨーク市場で韓国ウォンが急落した。しかし、野党が多数を占める国会議員の反対に屈した形で早々に非常戒厳を解除し、野党は内乱罪で大統領の弾劾手続きを進める姿勢だ。
IGアジアのマーケットストラテジスト、ジュンロン・イープ氏は「尹大統領の指導力に対する不透明感が続き、リスクテイクは当面抑制された状態が続く可能性が高い」との見方を示した。
4日の日本市場の債券・為替・株式相場の動き- 長期国債先物12月物の終値は前日比29銭高の143円16銭
- 新発10年国債利回りは2.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い1.05%
- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.2%安の149円93銭-午後3時28分現在
- 東証株価指数(TOPIX)の終値は0.5%安の2740.60
- 日経平均株価は0.1%高の3万9276円39銭
債券
債券相場は上昇。韓国の政情不安を受け安全資産に対する需要が高まったほか、日銀が年内の利上げを見送るとの見方も一部で浮上し、午後に入り先物が上げ幅を広げた。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは「12月利上げ見送りを示唆する観測記事が出て、先物が買われた」と言う。金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)が織り込む12月利上げの確率は、前日の6割前後から3割台に低下した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、12月の利上げが見送られれば、長期金利の1.1%台乗せは遠のくだろうと予測。一方、野村証券の松沢中チーフ・ストラテジストは、日銀が12月の利上げを見送っても、2025年1月の利上げ期待は残り、長期金利が1%割れまで低下することはないとの見方を示した。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.580% 0.715% 1.050% 1.855% 2.275% 2.640% 前日比 -3.0bp -2.5bp -2.5bp -1.5bp -1.5bp 横ばい外国為替
東京外国為替市場の円相場は、対ドルで一時150円台前半まで下落。韓国の政情不安を受けたリスク回避の円買いが一服する中、日銀の利上げ見送り観測を背景に円金利が低下したのにつれ、ドルを買い戻す動きが先行した。
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、韓国の戒厳令は一過性の材料で、収束の方向で落ち着いていると指摘。一方、強い米求人件数を受けてもドルはそれほど買われず、週末の「米雇用統計で12月の利下げを見極めたい向きが多い」との認識を示した。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、円高の揺り戻しと実需のドル買いに加え、午後は日銀金融政策を巡る臆測で円金利が低下し、つられてドルが戻したと分析。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言なども控え、「上下攻めにくい」とも話していた。
株式
東京株式相場はTOPIXが3営業日ぶりに反落。前日に大幅高した反動に加え、パウエルFRB議長の発言や週末の米雇用統計の発表を前に様子見姿勢が強い中、目先の利益確定や持ち高調整の売りが広がった。TOPIX構成銘柄で下落したのは1605、上昇は439。
東証33業種は銀行や保険など金融セクター、電気・ガスや陸運、建設など内需セクター中心に24業種が下落。一方、小売りやその他製品、石油・石炭製品、機械など9業種は上昇。小売りでは11月の既存店売上高が伸びた良品計画、機械では三菱重工業など防衛関連が高い。
T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは、きょうの下落は前日に大幅高した余波で、利益確定売りが優勢だと分析。防衛関連の上げについては「朝鮮半島のパワーバランスに影響すれば当然、日本にも及ぶだろう」と語った。
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