八潮陥没「4つの想定外」無線記録で判明

 埼玉県八潮市の陥没事故で、発生直後の消防無線の記録をANNが独自に入手しました。そこから「4つの想定外」が救助を阻んでいたことが見えてきました。

■緊迫の消防無線記録を入手

 埼玉県八潮市での道路陥没から間もなく3カ月。運転手を救助するための工事が続いています。すぐに助け出せなかったのは、なぜなのか。ANNは当時の記録を独自入手しました。

 消防の当初の救助見通しは「20分以上」。

 入手した消防無線の記録から分かったのは4つの「想定外」でした。

最初の消防無線 「近隣会社員からの通報。中央1丁目交差点の道路が陥没、陥没部にトラックが落下したとの内容。要救助者及び負傷者にあたっては現時点で不明」

「八潮指揮1、了解」

 最初の無線から3分。一つ目の「想定外」が発覚します。

消防無線:通報から約6分 「状況報告。道路の陥没、大きさは約10メートル×10メートル、関係機関に大至急応援願いたい、どうぞ」

 現場に到着した隊員が遭遇したのは、想定外の規模の陥没でした。

消防無線:通報から約9分 「陥没した道路の穴の中に車両1台。要救助者の状況については不明。以上、八潮701」

 そうした状況のなかで、見積もられた救出時間が…。

消防無線:通報〜約11分 「交通救助現場、救出まで20分以上かかる旨の報告です。ドクターカー要請できますか。どうぞ」

「救急八潮3状況報告、要救助者の救出まで20分を要する」

 この見積もりはその後、2つめの想定外につながっていきます。

消防無線:通報〜約19分 「応援要請、草加救助1、及び草加はしご1。増隊要請します」

 事態の大きさを把握し、次々にかかる応援要請。現場では何が起きていたのか、元東京消防庁レスキュー隊の田中章さんに聞きました。

田中さん 「消防力が災害よりも劣勢だという判断をして、そこにポンプ隊と救急隊、あるいはハシゴ隊救助隊、これからどんどんと応援要請かけていくが、災害状況によってこの度合いを高めていくんですね」

 そして、最初の通報からおよそ30分。救助隊が穴の中に侵入します。

消防無線:通報〜約28分 「10時16分、救助隊侵入。どうぞ」
田中さん 「非常に普通の穴ではない。すり鉢状のしかも砂地であり、上からアスファルトががれきのように落ち込んでいる。次から次へと崩れていってる。

「安全策を取りながら隊員が入った時間が、この時間になったと思う」

 さらに、現場では3つ目の想定外が発生です。

消防無線:通報〜約33分 「草加はしご1の進入経路は当初の指示通り、八潮市役所東側、浄水場通りを南下するよう指示しました。どうぞ」 「救急八潮1から草加八潮消防」 「救急八潮1どうぞ」

「浄水場通り、渋滞発生しています。通行不能と思われます。どうぞ」

 現場に向かっていた救助のための「はしご車」が渋滞のため、最短ルートを通れなかったのです。

 現場への最短ルートで渋滞が発生。はしご車には、別の大通りを進行するよう指示が出ました。

田中さん 「おそらく前にも渋滞車両が詰まってしまっていて、サイレンを鳴らしてもどいてくれないような詰まり方」

 仮に、このルートを進行したとすると、およそ2倍の距離に。遠回りせざるをえない状況となったことが読み取れます。

田中さん 「はしご車、屈折作業者など、消防車両は非常に大きな車両が多い。渋滞が発生すると災害現場まで到着できない可能性が多い」

 そうしたなか、さらなる想定外が現場を襲います。

消防無線:通報〜約104分 「救急八潮301から八潮指揮1、隊員受傷につき、増隊1隊願います」

 救助にあたっていた隊員がけがをしたのです。

田中さん 「上から想定外の崩落があって、隊員の上にがれき土砂が落ちてきたと思う」

 なぜ、想定外は重なったのでしょうか?

田中さん 「道路陥没・車両が転落。今までの過去の事例からすれば、水道管が破裂して道路に穴が開いた。深さは2、3メートルで車両が転落した。災害が拡大していかない災害が多いものですから、どんどんと崩れていっている現在進行形のものっていうのはあまりなかった。そこが今回の非常に救出に手間取った、救出に時間がかかったポイント」

 そうしたなか25日、現場では運転手を救出するため、下水道管内に取り残されているとみられる場所に向け、直接穴を掘る作業が進められています。

 田中さんによると、今後の救助には2つのシナリオが考えられるといいます。

 トラックのキャビンがあるのは、下水道のこの位置。

 救出時にはバイパス工事で設置した仮の排水管に水を流し、真上から救出に向かう方法です。

 また、もう一つの方法として、下水道を伝って徒歩でキャビンに近づく可能性もあるということです。

八潮市民 「早く(救助)されてほしい。一生懸命やっていると思うので、引き続き頑張ってほしい」

Page 2

事件・事故・裁判ニュースに関するキーワード

関連記事: