アフリカでクーデターが連鎖 軍人ら成功事例を「学習」 ロシアが影響力拡大も
西アフリカ・ベナンで今月、軍兵士の集団によるクーデター未遂が起きた。ベナン以外でもアフリカではここ5年でクーデターの発生が相次いでおり、情勢の不安定化が著しい。クーデターは政府への不満や経済的困窮などを背景に起きているが、近隣国の成功事例を学習して伝播(でんぱ)しているとの見方も強い。
西アフリカ・ベナンで未遂
ロイター通信によると、ベナンの最大都市コトヌーで7日朝、軍兵士の集団が国営テレビを占拠して権力を掌握したと主張。声明で兵士らは「友愛や正義、労働が優先される新しい時代への希望を国民に与える」などと述べた。付近では銃声や爆発音も鳴り響いた。
国営テレビを占拠し声明を発表する軍兵士ら=12月7日、ベナン・コトヌー(ベナン国営テレビ提供・ロイター)しかし、タロン大統領がまもなく国営テレビで演説し、反乱は阻止されたと宣言。クーデターは未遂となり、ベナン当局は関係者の拘束を進めている。
旧フランス植民地のベナンは1960年にダホメ共和国として独立し、後に改称。過去にクーデターが発生した歴史はあるが、近年は民主的な統治が維持されてきた。
複数のメディアによると、クーデターを企てた兵士らは「ベナン北部の治安情勢の悪化」を動機として挙げた。イスラム過激派の勢力拡大に政府が対策を講じないことに不満を持っていたとみられる。
隣国のナイジェリア政府は7日の声明で「地域の民主主義を脅かす行為だ」とクーデターの試みを非難。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)も「違憲行為だ」と批判した。
「クーデターベルト」
AP通信によると、アフリカでは2020年以降、マリ、チャド、ギニア、スーダン、ブルキナファソ、ニジェール、ガボンでクーデターがあり、今年10月と11月にはそれぞれマダガスカルとギニアビサウでも起きた。
その多くが位置する西アフリカからサハラ砂漠南縁にかけての一帯は「クーベルト(クーデターベルト)」とも呼ばれている。
クーデターの多くはイスラム過激派の伸長や治安悪化、政治腐敗への不満を背景に起きたとされる。マリ、ブルキナファソ、ニジェールの3カ国は軍事政権に移行してECOWASからも離脱し、独自の連合を形成した。
3カ国はロシアに接近
米ライス大学ベイカー公共政策研究所はクーデターの連鎖的発生について、軍人らが近隣国の「成功事例」を学習して実行している可能性があると分析。ブルキナファソとマリの軍政が旧宗主国フランスに対する反植民地主義の主張を強めていることも、この一帯で支持を集めていると指摘した。
クーデターに対する国際的な制裁が限定的であることも、連鎖に歯止めがかからない理由に挙げられている。
こうした不安定な情勢に便乗して影響力拡大を図っているのがロシアだ。マリ、ブルキナファソ、ニジェールの軍政は駐留していたフランス軍部隊を撤収に追い込み、安全保障面でのロシアとの連携を強化している。英BBC放送によると、ベナンでのクーデター未遂では、複数の親露派SNSのアカウントが兵士らの蜂起を歓迎していたという。(藤木祥平)