フェラーリ代表、ハミルトンの”皮肉無線”で「神経質」に? 緊張生んだマイアミオーダー

2025年F1第6戦マイアミGPで、競争力を欠いたスクーデリア・フェラーリは週末を通して存在感を示せなかったが、決勝ではルイス・ハミルトンの皮肉混じりの無線メッセージが図らずも注目を集めた。

移籍わずか6戦目にして早くもチームとの関係に亀裂が生じたのでは、との憶測も飛ぶが、ハミルトン本人はレース後、「チームとの関係は良好だ」とコメント。感情的な発言はレース中のプレッシャー下での反応に過ぎず、クルマを降りた今、僚友シャルル・ルクレールやチームに対する不満はないと強調した。

戦略分岐が招いた緊張─オーダーを巡る無線応酬

フェラーリは決勝で2台に異なる戦略を採用した。ハードタイヤを履くルクレールに対し、ミディアムを履くハミルトンがレース中盤、チームメイトの背後に迫った。

「彼の後ろにいるせいでタイヤが終わってしまう。ずっとここに座ってろって?」と無線で不満を示したハミルトンに対し、チームは順位交代を即決しなかった。苛立ちを募らせたハミルトンはさらに、「これはチームワークとは言えない。それだけは言っておく」と苛立ちをあらわにした。

その直後、フェラーリはバックストレートで順位交代を指示。ハミルトンは「中国では、戦略違いという理由で僕が譲っただろ。お茶を飲んでる場合じゃない、頼むよ!」とチームに皮肉を込めたコメントを返した。

また交代後は、ルクレールが「ルイスにはもっと速く走ってもらわないと困る。今じゃ僕がダーティエアを浴びてるだけだ」と不満を表明。チーム内の緊張感がにじみ出た場面となった。

Courtesy Of Ferrari S.p.A.

決勝レースに向けてダミーグリッド上で準備するシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2025年5月4日(日) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)

結局、ハミルトンは前を行くアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)との差を詰められず、52周目に再びルクレールへのポジション返上が指示された。その際、後方1.4秒にカルロス・サインツ(ウィリアムズ)が迫っていることが伝えられたハミルトンは、「で? サインツにも抜かせろってこと?」と皮肉を返した。

早くしてくれ!苛立ち認めるハミルトン

レース後、ハミルトンは一連の無線について、「苛立ち」を感じていたことを認め、「あの時、『早くしてくれ』って気持ちだったのは確かだけど、それだけのことさ。チームにもシャルルにも何も思っちゃいない」と説明。決断の遅れに対する瞬間的な感情の表出だったと述べた。

また、「僕らは途方もないプレッシャーを抱えてドライビングしている。激しいバトル中に穏やかなメッセージなんて期待できないことを理解してほしい」とも訴えた。

ルクレールは「あまりコメントする気はない」と前置きしつつ、「今日のようなやり方は、僕たちが目指すレースマネジメントではないのは明らかだ」と振り返った。

フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールも「ルイスの苛立ちは理解できる。レース後に話し合ったが、落ち着いた雰囲気だった」と述べ、チーム内に深刻な問題はないと主張した。

Courtesy Of Ferrari S.p.A.

ガレージ内でチーム代表のフレデリック・バスールと話をするルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2025年F1マイアミGP

一方で、チーム側が無線でのトーンを快く思っていなかったこともうかがわせた。

英衛星テレビ『Sky Sports』によると、ハミルトンはバスールとの話し合いについて、「彼の肩に手を置いて、『まあまあ、そんなに神経質になるなよ』って言ったんだ」と振り返り、雰囲気の軟化を図ったことを示唆した。

バスールは、「我々の判断が遅すぎたとは思っていない」と述べ、決断に要した時間は「現実には1周半程度だった」と説明。国際放送で流れる無線は「実際よりも遅れて放送される場合がある」と指摘した。

「我々はやるべきことをやったと思っている。もちろん『あと半周早く指示すべきだった』、『逆に半周遅らせるべきだった』と議論の余地はあるだろう。だが、全体としては正しい判断だった」

ハミルトンは「ファイターであることを謝るつもりはない。まだ勝ちたいと思っている」と語り、苛立ちの裏に勝利への飽くなき執念があると示唆した。

無線内容が話題となったことについては、「僕の発言はPG(保護者同伴視聴が望ましい)指定レベルだろ?」と冗談を交え、「まだ闘志は衰えていない」と付け加えた。

Courtesy Of Ferrari S.p.A.

スクーデリア・フェラーリのピットウォール、2025年F1マイアミGP

とは言え、今回の一連のやり取りが、7位争いを巡る最中に交わされたことは注目に値する。2022年のマイアミ初開催時にフロントロウを独占したフェラーリにとって、今週末の結果は大きな後退と言わざるを得ない。

バスールも、無線内容より「マクラーレンから1分遅れでフィニッシュした理由の方が、よほど重要だ」と述べ、マシン性能の立て直しが最優先課題であると強調した。

ハミルトンも「課題を解決できれば、またレッドブルやメルセデスと戦えると信じている。とにかく、その時が早く来てほしい」と語り、次戦エミリア・ロマーニャGPでの投入が噂されるアップグレードに希望を託した。

「僕らがウィリアムズと争うような状況にあること、それも勝つのに苦労してるってことは、それだけ大いにクルマを改善する余地があるってことだ」

F1マイアミGP特集

関連記事: