石破首相の川口演説、外国人問題は6番目 市民ら「ルールを守らせると言ってほしかった」
20日投開票の参院選で5日、石破茂首相(自民党総裁)が埼玉県川口市で与党候補の応援演説に立った。外交問題や物価高など主に6つの政策を訴え、外国人問題には一番最後の6番目に触れた。聞いていた川口市民からは「外国人が増え、治安が悪化したと感じている」「ルールを守らない外国人はきちんと裁いてほしい」といった声が聞かれた。
クルド人少年の事件現場で備蓄米
石破氏は約17分間マイクを握り、政策については外交問題を皮切りに、物価高、消費税、防災、コメ問題と語り、演説の最後に外国人問題に触れた。
「この川口のいろいろな外国の方々との問題。外国の方々にはルールをきちんと守って日本の社会でいろいろな役割を果たしてもらうことが大事だ。日本の習慣をきちんと身につけてもらうことで、日本で多くの国の人たちが共に暮らしていくことができる」
石破氏が公示後の全国での応援演説で、外国人問題に言及したのは初めてとみられる。石破氏はこう続けた。
「日本の文化や歴史、伝統をきちんと守っていきながら、外国の人たちにルールを守ってもらう。そういう社会を作る。憎しみや悪口で世の中の問題は決して解決しない」
演説が行われた公園の目の前は大型商業施設で、令和5年8月に当時14歳のクルド人の男子中学生が煙幕を出す花火を投げつけて逮捕された事件の現場だった。石破氏は商業施設を指さし、「ここにも備蓄米が出てます。3千円台で出てますから」とアピールした。
演説会場「夜は外国人ばかり」
川口市は全国の市町村で最も外国人が多く、今月1日時点で5万1千人。総人口約60万人の8・4%を占め、前月から0・1ポイント上昇した。
市の市民意識調査によると、昨年度は市民の49%が「治安が悪い」と感じ、前年度から19ポイント上昇。体感治安の悪化が問題化する一方で、民族ごとに特定の地域に集住しており、同じ川口市内でも地域によって温度差があるのが実情だ。
石破氏の演説後、川口市民に外国人問題について感想を尋ねると、60代の会社員男性は「私の地域ではあまり問題になっていない。外国人を排除するのはだめだが、やはり共生にはルールを守ることが必要だと思う」。70代の主婦も「スーパーで見かけるくらいだけど、石破さんの言う通りルールは守ってもらいたい」と話した。
一方、40代のパート勤務の女性は「ここ数年、外国人が急に増えて、この公園も夜7時をすぎると外国人ばかりになる。外国の曲を流しながらバイクで暴走したり、治安も悪くなったと感じる。娘の習いごとも一人では行かせられなくなった」。
「川口といえば…」に落胆
30代の会社員女性は、石破氏が演説でなかなか外国人問題を切り出さない中、演説の途中で「川口といえば…」と話題を転じた際、「いよいよか」と期待したという。
だが、首相の口から出たのは昭和37年の映画「キューポラのある街」の話題で、「ちょっと違うと思った」。
女性は「ごみ出しルール違反がひどいし、解体の木材をたくさん積んだトラックなど本当に危ない。もちろんきちんとしている人もいるけれど、やはり日本に住むのなら日本のルールを守ってもらいたいと思う」と訴えた。
クルド人の集住地域近くに住むという50代の自営業男性は「首相は『外国人にルールを守ってもらう』と言っていたが、この川口で演説するのなら、国の行政の長として『外国人にルールを守らせる』と、きっぱり言ってほしかった」と話した。
石破氏の演説の前には、地元選出の新藤義孝衆院議員と奥ノ木信夫市長も選挙カーに乗り、新藤氏は「ルールを守らない人は、この国にいるわけにはいきません」。奥ノ木氏は外国人問題に触れなかった。