人里離れた山頂から双子の遺体、警察は自殺と断定も遺族に残る疑問 米

2024年に高校の卒業式を迎えたナージル・ルイスさんと双子の弟カーディルさん/Courtesy Yasmine Brawner

(CNN) 米ジョージア州アトランタ郊外の人里離れた山頂で今年3月、20歳直前だった双子の兄弟の遺体が発見された事件で、CNNはこのほど、ジョージア州捜査局(GBI)の全資料を入手した。このファイルには、事件前の2人について新たな詳細を記載した資料も含まれている。

アトランタ近郊ローレンスビルに住むナージル・ルイスさんと双子の弟カーディルさんは3月7日の夜、自分たちの黒い日産アルティマで近くのガソリンスタンドに寄って給油し、水とビーフジャーキーを買った。

後部座席からごみを捨てた時にバスケットボールが車から飛び出した。ほんのつかの間、10代の若者らしさがのぞいたこの場面を、スタンドの防犯カメラがとらえていた。兄弟の車はそのまま夜の闇に走り去った。

約12時間後、そこから北へ約145キロ離れたノースカロライナ州境近くのベル山で、ハイカーが兄弟の遺体を発見した。2人は並んで仰向けに横たわっていた。それぞれ脚を伸ばし、両手を広げた姿勢で、アニメ風の剣とともに見つかった。

2人の遺体が見つかったベル山の山頂/Eifel Kreutz/iStockphoto/Getty Images

ナージルさんの脚の間の地面に、45口径の拳銃「M1911」があった。

GBIはその後、2人が心中したと結論づけたが、遺族はこれに異議を唱えてきた。GBIは5月、法医学的な証拠から2人とも発砲したことが分かったとする短い声明を出した。

CNNが入手したファイルの司法解剖報告によると、2人の頭部右側にそれぞれ、銃口が接触した状態で弾丸を撃ち込んだ跡があった。

2人の父親の弁護士、ダリル・マンズさんが最近CNNに語ったところによると、遺族はGBIのファイルを閲覧した後も、現場に疑わしい点があるとして自殺説を否定している。

「大きなポイントは遺体と銃の位置だ。自殺に見せかけたように見えた。私は要注意と受け止めた」と、マンズさんは語る。

だがGBIファイルからは、2人がひそかにストレスや経済的な不安を抱えていた様子が浮かび上がる。

ナージルさんは恋人に銃を見せていた

5分差で生まれた2人はファッションが好きで起業を夢見ていた/Courtesy Yasmine Brawner

5分違いで生まれた2人は、いつも一緒だった。

愛車のアルティマを共有し、アニメやビデオゲームなど、多くの好みが一致していた。

2人はローレンスビルの自宅に実父、義母と住んでいた。おばのアントワネット・ルイスさんがGBIに語ったところによれば、自宅のデッキに出てはアニメの剣でコスプレを楽しんでいたという。

アントワネットさんはこの中で2人を「おたく」と呼び、精神を病んでいる様子は全くなかったと話した。ある時はナージルさんから、ハリー・ポッターの筋書きの現実性について3時間も話を聞かされたという。

ナージルさんは死の約1年前に出会った女性と遠距離交際中だったとされる。マサチューセッツ州ボストンに住むこの女性が捜査当局に語った内容から、ナージルさんの生前の様子が垣間見える。

GBIの報告によると、ナージルさんは昨年12月に女性のもとを訪れ、「家庭生活」のことや、父親の病気で経済的な負担が増したことが悩みだと打ち明けていた。父親のタイリース・ルイスさんは6月の記者会見で、自分は脳卒中を起こして回復中だと話し、息子たちに自殺願望はなかったと主張した。

2人が亡くなる少し前の2月末、ナージルさんは恋人と通話アプリ「フェイスタイム」で話しながら、見せたい物があると2階の寝室へ行き、拳銃を掲げてみせた。自分と弟を守るために必要だと語っていた。

「君の彼氏はこっちで危ないことをしている」と言いつつ、どこで銃を入手したかは明かさなかったという。ナージルさんは同じ2月にオンラインで銃弾を注文した。

その後の捜査で、この拳銃は昨年12月、ローレンスビルから約80キロ離れたアトランタ近郊パウダースプリングスで盗難の届け出があったことが分かった。兄弟が入手した経路は不明。GBIはそれ以上の情報を提供していない。

銃の装填(そうてん)、発射方法を検索

遺族によると、2人は表面上、普段通りの生活を送っていた。

遺体が発見される2日前の3月6日、2人は姉のカイリー・パウウェルさんと夜のひとときを過ごした。カイリーさんが以前CNNに語ったところによると、一緒にテレビアニメ「リック・アンド・モーティ」を何話か見て、午後11時ごろ解散した。ナージルさんは翌朝、恋人と会いに飛行機でボストンへ向かう予定だった。

一方で、2人のGメールアドレスに関連する情報は闇の部分を物語っている。

GBIによれば、2人がカイリーさんを訪ねた前日、ナージルさんが2月末に注文していた銃弾の箱が自宅に届いた。

数時間後の午後4時15分、ナージルさんのGメールアドレスにひもづいたアカウントから、銃器愛好家の間で人気の高いM1911の銃に関する動画が閲覧された。

ナージルさんは同日、スピリット航空のボストン往復チケットを予約した。7日金曜の朝にアトランタを出発し、2日後の日曜夜に戻る予定だった。

「2人が取ったのは自殺を考えている人の行動ではない」と、弁護士のマンズさんは指摘する。「買い物をしたり、旅行を計画したりしていた」

2人がカイリーさん宅を訪ねた翌朝、ナージルさんは配車サービスのウーバーでアトランタのハーツフィールド・ジャクソン国際空港に到着し、チェックインを済ませた。

午前8時ごろ、手荷物検査の長い列を写真に撮って恋人に送り、フライトに間に合わないかもしれない、「もうだめだ」とメッセージを打った。その後、恋人の希望通り翌日の便に変更することにして、ウーバーで帰宅した。GBIによれば、義母がこの時、ナージルさんと顔を合わせたことを確認している。

しかしナージルさんはチケットを取り直さなかった。

午後6時32分に、ナージルさんのGメールに関連するアカウントで「斜めから撃つべきかどうか」というタイトルの動画が閲覧された。さらに午後9時36分、ナージルさんのGメールにつながる端末上で「撃たれるのはどんな感じか」という動画が再生された。

その夜、兄弟が義母におやすみと告げた後まもなく、ローレンスビルのガソリンスタンドで防犯カメラが2人の姿をとらえた。

兄弟はスタンドでスナックを買い、ガソリンを満タンにして、約5分後に2人だけで立ち去った。GBIによると、ナージルさんが運転し、カーディルさんが助手席に乗っていた。

それから約1時間後、ベル山に近づいたところで、端末にまた動きがあった。午後11時34分ごろ、ナージルさんのGメールのアカウントで「銃の装填方法」が検索され、銃弾を入れたり抜いたりする手順の解説動画が再生された。

携帯電話のデータとカメラ映像によると、2人の車は深夜0時すぎ、ベル山に到着した。山頂へのゲートは日没以降、施錠されることになっていたが、郡保安局の前夜の担当者は鍵をかけていなかった。

山は人里離れた場所にあり、人手不足の保安局が日によってゲートを施錠しないことは珍しくなかったという。

捜査チームは兄弟がベル山を選んだ理由に言及していない。遺族は、自分たちの知る限り2人ともそれまでベル山に行ったことはなかったと話している。

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