有名人の不倫や浮気になぜ「世間は大きく反応」するのか? その理由を心理学者が解説

浮気のスキャンダルがメディアで大きく取り上げられたり、SNSにあふれ返ったりすると、人々はさまざまな感情を抱く。激しく憤る人もいれば、驚くほど無関心だったり、あるいは全く動じない人もいる。 有名人の人生への激しい感情移入は行き当たりばったりのものではない。多くのファンはかなり一方的な関係を築き、有名人を崇拝・賞賛し、親しい友人のように信頼さえする傾向がある。そのため、期待が裏切られるとかなり個人的な感情を抱くことになる。 怒りは一般的な反応だが、人々がこうしたスキャンダルにどう反応するかを決める要因は一方的に抱く親しみだけではない。専門誌『Behavioral Sciences(ビヘイビオラル・サイエンシーズ)』に2024年に掲載された研究は、このようなニュースに動じない人がいる理由を説明している。 研究チームは、有名人の浮気に対する世間の反応がこれほど大きく異なる理由を探ろうと、年齢層も居住地域も異なる1100人以上の成人の日本人を対象に調査を行った。 この研究の特徴は、仮定シナリオに頼ったこれまでの研究とは異なり、ネット上で大規模な反発を招いた実際に会った有名人の浮気スキャンダルを調査したことだ。 研究チームは特に、人々の「公正世界信念」(BJW)、つまり、自分の行いに対して相応の結果が返ってくるという考え方が、調査対象者の感情的反応や関係した有名人を非難する傾向とどのように関連しているかを調べた。 この研究は、公正世界信念が浮気のような道徳的に疑いの余地のない状況において、社会的評価の高い個人に対する非難を実際に減少させる可能性があることを明らかにした最初の研究だ。 研究によると、有名人の浮気に対する判断を形成するものとしては、下記の2つがあるという。 ■1. 「公正世界信念」が道徳面での怒りを和らげる この研究の主な目的の1つは、公正世界信念が有名人の浮気への反応にどのように影響するかを調べることだった。 公正世界信念とは、人は普通、報いを受ける、つまり善人は報われ、悪人は罰せられると信じる心理的傾向のことだ。 この信念は正義の動機として機能することが多く、不正行為を目撃したときに道徳的バランスを取り戻すよう人々に促す。 研究チームは当初、強い公正世界信念を持つ人は、浮気をした有名人に対してより強い怒りを示すと予想していたが、結果はそうではなかった。 当然のことながら研究者たちは、浮気のような不道徳な行為は公正世界信念に反するものであり、不快感を生じさせると仮定した。そのため、人々は正義感を取り戻すために、裏切り行為を犯した人を非難せざるを得ないと感じるのかもしれない。 だが研究チームは、公正世界信念が強い人ほど浮気した有名人に向ける怒りや嫌悪感、非難は少ないことを発見した。 実際、公正世界信念は非難に直接的な悪影響を及ぼした。さらに、間接的な効果もあった。ネガティブな感情を減少させ、その結果、非難する傾向も減少させていた。 要するに、この信念は実際に感情的な反応を抑え、その結果、より寛容または無関心な姿勢につながる。 この研究は、浮気が犯罪行為とみなされない場合(個人の道徳の問題とみなされる日本の場合)、強い公正世界信念を持つ人々は浮気を正義に対する脅威とは見なさない可能性があることを示唆している。 強い公正世界信念を持つ人々は代わりに、富や成功、名声のような有名人が持つものを、有名人が根本的に「善良」あるいは「ふさわしい」ことの証であると解釈する傾向があるかもしれない。その結果、彼らは有名人を非難する必要性をあまり感じない。

Forbes JAPAN
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