巨大ダムの建設で「地球の極」がズレた。海面上昇にも影響

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人間の行動が地球の「北極」と「南極」を動かしてしまったなんて、恐ろしや。

過去200年間、人間は世界中に多くの巨大ダムを建設しており、その影響で地球の自転軸が約1mも移動し、世界の海面は21mm低下してしまったという研究結果が、『Geophysical Research Letters』誌にて発表されました。

意外とデリケートな地球の軸

このような移動が起こるのは、地球の固い地殻が、ネバネバした「マントル」というマグマの層の周りを覆うように浮かんでいるからです。そのため、地球内部や地表における重量の影響で、地殻がその上を滑って移動することがあります。

これが起こると、地球表面の異なる地域が自転軸の真上に位置し、その結果、地殻に対する地軸の位置が変わります。これは「真の極移動(true polar wander)」と呼ばれる現象です。

巨大ダムの水が地球上のバランスにも影響

リリースにて、ハーバード大学の大学院生であり、この新しい研究の筆頭著者であるNatasha Valencic氏は

「私たちがダムに水を貯めると、海の水がその分減って海面が下がるだけでなく、地球上の重さのバランスも変わってしまうのです」

とコメントしています。

Valencic氏と研究チームは、ダムの位置、水の貯留量、その貯留水が、地球の質量分布にどのような影響を与えたかを調べるために、世界的なダムのデータベースを分析しました。過去のデータベースでは、1835〜2011年の間に建設された6,862基の巨大ダムが、海面の低下に寄与していたことが示されました。

その結果、世界中でのダム建設が、地球の極を2つの段階で移動させていたことが判明しました。第一段階は1835〜1954年で、北アメリカとヨーロッパにおけるダム建設の急増と一致しています。

これらの地域は赤道の方へ移動し、その結果として北極は103度東経の方向、つまりロシア、モンゴル、中国を通る線に向かって約25cm移動しました。

そして、第二のダム建設の波は1954〜2011年であり、この期間には主にアジアと東アフリカで多くのダムが建設されました。その結果、北極は117度西経の方向、つまり南アメリカ西部と南太平洋を通る線に向かって57cm移動しました。

海面上昇への影響も大きい

過去200年間で7,000基ほどの巨大ダムが建設されましたが、これらはグランドキャニオンを2回満たすのに十分な量の水を保有しています。その影響で、世界の海面が約23mm低下していたことも明らかになりました。

20世紀に入り、世界の海面は12~17cm上昇しましたが、そのうちの約4分の1にあたる水量はダムによって陸上に留められていたことになります。ダムがなければ、さらに海面上昇は加速していた可能性があるということです。

さらにValencic氏は

「ダムや貯水池をどこに配置するかによって、海面上昇の形状(ジオメトリ)は変化します。それは私たちが考慮すべきもう1つの要因です。なぜなら、これらの変化は非常に大きく、重要である可能性があるからです」

と述べています。

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