中国、政策金利と預金準備率引き下げ-関税による打撃で景気支援
中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁は7日、政策金利と預金準備率を引き下げると発表した。米国との貿易戦争にさらされる中国経済への支援を強化する。
潘総裁は同日の記者会見で、7日物リバースレポ金利を1.5%から1.4%に引き下げ、預金準備率については0.5ポイント下げると表明した。
人民銀は別の声明で、7日物リバースレポ金利を8日から、預金準備率を15日から引き下げると明らかにした。
中国は会見の数時間前、トランプ米政権が中国からの輸入品の大半に145%の追加関税を賦課して以降、初となる米中の通商協議を開くと発表していた。今回の会見には証券監督管理委員会(証監会)の呉清主席と国家金融監督管理総局の李雲沢局長も出席した。
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今回の措置は借り入れコストの押し下げを目的とし、潘総裁が打ち出した10の施策の一部となる。他にも再貸し付けツールや政策銀行向け融資の金利引き下げも含まれている。潘氏は預金準備率の引き下げにより、約1兆元(約19兆8000億円)相当の長期流動性が供給される見込みだと述べた。
サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「これは単なる緩和ではない。中国が強靱(きょうじん)性や改革、必要に応じて報復の土台を築く動きだ」と分析。「流動性や信用の拡大だけでなく、テクノロジーや消費、高齢者介護に軸足を置いた取り組みは中国経済の構造的なけん引役を支援しようとする広範な試みも示している」と話した。
今回の決定は、米中貿易戦争に見舞われる中国経済を下支えするため、当局が迅速な対応に乗り出していることを示唆している。トランプ政権は対中追加関税を両国の貿易に壊滅的な打撃を与えるとエコノミストらが指摘する水準まで引き上げており、中国による刺激策の強化期待が高まっている。
方針転換
潘総裁は「適度に緩和的な」金融政策を改めて表明しており、潤沢な流動性の確保や比較的低利の資金供給を目指す方針だ。
人民銀は昨年9月にも政策金利と預金準備率の引き下げを発表していた。今回の金融緩和は中国が消費の喚起に本腰を入れつつあることを示唆している。トランプ政権による関税措置で対米貿易は大きく損なわれる恐れがあり、中国は内需を軸とした成長の維持を掲げている。
ここ数カ月、人民元の防衛や債券市場での投機抑制を優先してきた人民銀にとって、今回の動きは方針転換となる。
経済の強靱化
刺激策を強化しなければ、4-6月(第2四半期)から景気が低調に推移し、今年の国内総生産(GDP)成長率目標である5%前後の達成も危うくなる可能性がある。
最高指導部は4月下旬の共産党中央政治局会議で、外的ショックの高まりに対処する緊急対策を巡り「万全の準備を整える」方針を示していた。
オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)のマネジングディレクター兼金利ストラテジスト、フランシス・チュン氏は今回の発表について、「流動性支援だけでなく、市場と経済全般の刺激も視野に入れた包括的な取り組みであることを示している」と分析。「経済の強靱化を進めれば、関税に対抗する上でも切り札になるだろう」と述べた。
原題:China Cuts Key Rate, Reserve Ratio to Aid Economy Hit by Tariffs(抜粋)