アクティビストの日本株投資が4年ぶり最高、自社株買いに次ぐ存在感
アクティビスト(物言う投資家)による日本株買いが今年、過去最高に達している。日本株の投資主体として自社株買いを行っている事業法人に次ぐ存在となり、相場への影響力も日増しに大きくなっている。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)がまとめたデータによると、海外のアクティビストファンドが新たに購入した日本株は年初来で1兆円を超え、年間ベースでこれまでの最高だった2020年を上回った。ブルームバーグの分析では、過去の投資の売却分を差し引いた買越額は5000億円を超えている公算が大きい。
東京証券取引所が公表する投資主体別売買動向によると、自社株買いを積極化している日本の事業法人以外に年初来で日本株を5000億円以上買っている主体はない。統計の範囲が異なるため単純比較はできないものの、日本の機関投資家は今年総じて売りが優勢で、アクティビストが日本株の主要な買い手となっている姿が浮かび上がる。
大量保有報告書などの公開資料に基づくと、エリオット・インベストメント・マネジメントやオアシス・マネジメントなどの海外勢のほか、村上世彰氏の関連ファンドを含むアクティビストは今年、少なくとも146社に投資した。大量保有報告書の提出義務が発生する株式保有比率5%に届かないケースもあるとみられるため、実際の投資規模がさらに大きいのは間違いない。
Source: Data compiled by Bloomberg
シュローダー・インベストメント・マネジメントの豊田一弘日本株式運用総責任者は、アクティビスト投資家の影響は一般的に「マネジメントが抱える問題意識について物申すという点ではプラスだ」と指摘する。経営者側が自社の課題を認識する上でアクティビストが果たす役割は大きいと言う。
投資動向がたびたび注目される外国人投資家の現物株投資は今年、現時点で4000億円程度の買い越しにとどまっている。多くが外国籍であるアクティビストの買いを除くと、ほとんど買っていない可能性を示唆する。日本の機関投資家は銀行や生命・損害保険会社が持ち合い解消の売り、年金基金はリバランスの売りが優勢だ。
アクティビストは資本効率の改善に向けて資産売却や自社株買いを促したり、不動産の含み益を株主に還元するよう求めたりすることが多く、経営方針についてより具体的な要求を出すこともある。もっとも、アクティビスト側が投資先企業への要求・要望を公開することはまれで、実際には水面下で交渉が行われるケースが多い。
世界最大のアクティビスト投資家である米エリオットは今年、ソフトバンクグループを含む日本企業4社に投資。20年から23年の4年間でわずか3件にとどまっていたこれまでと比べて急拡大した。
香港拠点のオアシスも、同ファンドとしてブルームバーグの記録で過去最多となる12社に新規投資したことが公開されている。国内勢でも旧村上ファンド系の動きが活発だ。
BIのまとめによれば、アクティビストファンドの日本株保有額は4兆8000億円と、東証全体の時価総額の0.5%程度に相当する。公開情報に基づくと、最大の投資家はエフィッシモ・キャピタル・マネージメントで、川崎汽船や第一生命ホールディングス、リコーなどの株式を大量保有している。英シルチェスター・インターナショナル・インベスターズも日本企業30社以上に投資をしている。
市場関係者はアクティビストの活発な動きが来年も続くとみている。政府が企業による政策保有株の解消を迫る中、経営側もかつてのように「安定株主」には頼れなくなっている。
モルガン・スタンレーMUFG証券の中沢翔ストラテジストは、「資本効率の改善に向けた取り組みに注目が集まる中、親子上場の解消や政策株の縮減、キャッシュを生まない資本の活用を求めるアクティビストが増える可能性は高い」との見方を示した。