ドライバー不足で商機広がる、「物流システム機器」関連にスポットライト <株探トップ特集>
―「荷待ち」「荷役」の時間短縮のカギ握る、自動化設備は高成長が見込まれる市場―
働き方改革の一環として、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限を規制することで物流が滞ることが懸念された、いわゆる 「2024年問題」が到来してから、1年以上が経過した。スタート前は、これにより大きな混乱が生じることが懸念されたものの、現在まで大きなパニックが起こったというニュースが伝えられることなく来ているように見受けられる。
ただし、少子高齢化が進むなかでドライバー不足は深刻化の度合いが増すことが想定され、物流の現場にはこれまで以上の効率化が求められている。特に、荷待ちや荷役といった分野は効率化を図ることでドライバーの労働時間削減にもつながるだけに、今後もシステム機器やDXの導入が進む分野とみられており、関連企業のビジネスチャンスはまだ大きそうだ。
●物流改正法で短縮努力求められる
トラックドライバーの長時間労働の主な原因とされているのが、運転する時間はもちろんだが、荷物の準備ができていない、あるいは積み下ろし場所が混雑していることなどによる「荷待ち」や、荷物の積み下ろしや運搬などの「荷役」などの時間の長さといわれている。これらは発荷主、着荷主、運送事業者の間の理解や調整不足から生じることが多く、その解消は一朝一夕には進まない。
今年4月に施行された物流改正法でも荷主(発荷主、着荷主)や運送事業者に荷待ち時間・荷役時間の短縮努力を求めており、「1運行の荷待ち時間・荷役などの時間を2時間以内、1回の受け渡しごとの荷待ち時間・荷役などの時間を1時間以内にする」目標を掲げている。これに対応するため、物流センターの新設や更新、自動化設備の導入などが現在も進められている。
●30年の市場規模は23年比6割以上の成長へ
これに伴い、 物流システム機器の市場も拡大している。市場調査の富士経済(東京都中央区)の「2024年版 次世代物流ビジネス・システムの実態と将来展望」によると、次世代物流システム・サービス市場は年々拡大を続けており、24年は23年比5.3%増の7542億円にまで拡大したと見込まれている。
同社によると、23年は「2024年問題」の解決を目的に物流センターの新設や自動化設備の導入増加とともに、案件が大型化したことから、ロボティクス・オートメーション、ラストワンマイル、IoTが前年比2ケタ増と大きく伸長したという。24年は市場の伸びは鈍化するものの、その後も順調に拡大を続け、30年には同市場は1兆1670億円(23年比62.9%増)へ拡大すると予測している。
●物流DX化進展で拡張性の高いシステムなど普及へ
また、富士経済では、特に人手不足が顕在化する2030年問題に向けてロボティクス、AI、IoTを活用した機器・システムを利用したソリューションの導入が加速し、物流DX化が進むと予想。そのためには、拡張性の高いシステムやロボットの導入が進むとしている。これらに関連する企業にとっては、ビジネスチャンスの拡大につながりそうだ。
そこで今回は、荷待ちや荷役の効率化につながるシステム機器を中心に、今後物流の現場で更に進むとみられる自動化設備などに関連する銘柄を、中小型株を中心に紹介したい。
●物流システム機器の関連銘柄
ディジタルメディアプロフェッショナル <3652> [東証G]は今年4月、中国のロボティクス企業3社と代理店契約を締結し、AMR(自律移動ロボット)やAGF(無人搬送フォークリフト)などのロボット本体やそのコントローラー、センサー、モーターなどロボットを構成するキーコンポーネントとソフトウェアの提供を開始した。同社は画像処理やAI分野における半導体の提供やIPライセンスの提供が主力だが、ロボティクスやFA分野の事業拡大にも取り組んでおり、同件はこれに資すると期待されている。
ロジザード <4391> [東証G]は、主にEC・通信販売事業者や物流業界向けにクラウド倉庫管理システム(WMS)「ロジザードZERO」を提供する物流DX企業。「ロジザードZERO」はさまざまな顧客の基幹システムと連携しているほか、多くの物流ロボットとの標準連携を可能にしているのが特徴。「IT導入補助金2025」補助金対象ツールとしても認定されており、この寄与もあってサービスを利用するアカウント数を順調に伸ばしている。
関通 <9326> [東証G]は、ECや通信販売事業者から、商品の入庫、在庫管理及び出庫などの業務を受託する物流アウトソーシングが主な事業。また、自社の倉庫業務効率化のために開発したWMSの「クラウドトーマス」を外部に展開している。足もとは昨年9月に発生したサイバー攻撃の影響からの立て直しに注力しており、26年2月期は業績回復を見込む。
豊田自動織機 <6201> [東証P]は世界的にも高シェアを占めるフォークリフトが有名だが、オランダのファンダランデ・インダストリーズを傘下に擁するなど物流分野にも強みを持つ。また、昨年にはリニアモーターを活用した都市型立体ロボット倉庫システム「CUEBUS」を提供するCuebus(東京都台東区)の第三者割当増資を引き受け協業を強化。9月にファッションセレクトショップ大手のビームス(東京都渋谷区)が都内に設置した物流拠点に「CUEBUS」を導入する際には豊田織がエンジニアリングを手掛けている。
アスタリスク <6522> [東証G]もリニアモーター技術を活用した搬送ロボットシステム「AsReader HAKOBU(アズリーダー ハコブ)」の開発に取り組んでいる。単一方向の動きにとどまらない「平面リニア」構造を採用し、多方向での搬送を可能としたのが特徴で、今年発売を目指している。
川崎重工業 <7012> [東証P]は、トラックやトレーラー上のコンテナから自動で荷降ろしを行うデバンニングロボット「Vambo」を22年に発売している。中型汎用ロボットに無人搬送車(AGV)を組み合わせた製品で、大小さまざまな重量物(ケース)の荷降ろしを実行する。デバンニング分野のロボットはまだ参入企業は少なく、同社製品の拡大余地は大きい。
このほか、23年にニデックドライブテクノロジー(京都府向日市)から無人搬送台車の製造販売事業を譲受した武蔵精密工業 <7220> [東証P]、ロボットアーム搭載型や牽引型などさまざまなAGVを開発・販売する東京機械製作所 <6335> [東証S]などにも注目したい。
株探ニュース