「誰のための長岡花火か?」路上駐車、チケット転売…相次ぐトラブルに、主催者が“来訪を呼び掛けない”異例のPR(新潟日報)

 毎年8月2、3日に開かれる長岡まつり大花火大会は、今年は土、日曜となり、金、土曜開催だった昨年同様に多くの人出が見込まれる。主催する長岡花火財団が昨年から注力するのが、オーバーツーリズムやモラル向上への対策だ。路上駐車やチケット転売といった負の面も見過ごせなくなっている。長岡空襲の犠牲者の追悼や、平和への願いといった原点の部分が薄まりかねないと、関係者は危機感を抱く。 長岡花火を主催する財団が作ったポスター  財団が今年作った不思議なポスターがある。白髪の女性や、手をつなぐ男の子たちが上空を見上げる後ろ姿がメインで、花火はない。「みんなで守る長岡花火」「年に一度のこの時を、楽しみにしている人がいる」というコピーが、控えめに並ぶ。  「これは何だろうと、見た人に考えてほしいと思った」。財団の戸田幸正事務局長が狙いを語る。  新型コロナウイルス禍以降で 初の週末開催だった昨年、財団は観覧席を各日6500席増やし、両日を合わせて34万席を用意した。長岡市の人口を優に上回る規模だ。  全て有料席で、人気席は抽選となる。抽選は市民優先だが、外れて会場で見られない人も多く「誰のための長岡花火か」という不満は市民に根強くある。財団は雑踏事故や場所取りによる熱中症の防止、路上駐車や渋滞抑制の必要性を挙げ、全席有料への理解を求める。  チケットのない人が市外から来れば来るほど、オーバーツーリズムに拍車がかかる。そこで財団は前回、チケットのない人に来訪を控えるよう呼びかける「ネガティブキャンペーン」に打って出た。  「来ないで」といった直接的な表現はしないものの、「無料席はありません」といった内容で、首都圏のJR電車内や駅に広告を出した。「1千万円単位」(戸田事務局長)の予算をかけた異例の取り組みだった。  それでも大会当日。市内各地で例年以上に車の路上駐車が発生し、財団に苦情が相次いだ。駐車を防ぐためのコーンを動かし、止めた車の横にコーンを置き直す悪質なケースもあった。  ごみ対策では捨て場の数や量を増やしたが、駐車場にはプラスチック容器やペットボトルが放置されていた。酔客の立ち小便も相変わらずあった。  路上駐車について、長岡市陽光台地区の住民は「目立つのは県外ナンバー」と話し、財団の対応不足を指摘した。一方、市内のコンビニ経営者は市民の側に目を向ける。「有料化が浸透し県外の人のマナーは良くなっている。地元の人の方がマナーが悪い」 ◆チケット転売も横行  チケット転売の問題も顕在化している。財団は昨年、フリーマーケットサイトで4万8千円の席が56万円で出品されていたのを確認。今回、チケットは転売の抑止効果を狙い、初めて記名式とした。しかし、転売を扱うサイトには、既に今年の観覧席が高値で載っており、問題は解消されていない。  長岡花火は全国の人々が長岡を知り、訪れるきっかけになっている。負の側面と向き合う現状に、戸田事務局長は「たくさんの人に長岡花火を見て、思いを感じてほしいという気持ちは当然、ある」と複雑な心情をのぞかせる。  財団の髙見真二理事長(長岡市副市長)は「無料席がある頃から(路上駐車などの)問題はあり、有料化で改善してきたのは間違いないと思う。席数に限りがあり『無理して来ないで』と訴えるのは、やむを得ない面がある」と話した。

新潟日報
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