「不倫のみそぎ」完了期間は? 首相候補の国民・玉木氏、相手の観光大使も既に自粛解除

不倫疑惑を報じた週刊誌報道に関して記者会見を行った国民民主党の玉木雄一郎代表=昨年11月11日、国会内(桐原正道撮影)

昨年11月に不倫が発覚した国民民主党の玉木雄一郎代表が、石破茂首相の後任を選ぶ首相指名選挙で一時は野党統一候補に挙げられるなど存在感を示している。不倫問題で党から受けた役職停止処分は今年3月で終了。一方、相手の女性も高松市観光大使としての活動自粛は既に解除されている。著名人にとって不倫はバッシングの対象となり、表舞台から姿を消すことにもつながりかねない。なぜ世間は不倫に怒りを覚え、玉木氏にとって致命傷にはなっていないのか、専門家に聞いた。

ともに「処分」は3カ月

「【朗報】全国の政治家 上場企業役員の皆さん! 玉木氏が総理に就任すれば愛人問題は公職就任の妨げにならなくなりますよ!」。首相指名選挙の対応について立憲民主党、日本維新の会、国民の3党幹事長会談が行われる直前の14日午前、元大王製紙会長の井川意高(もとたか)氏はX(旧ツイッター)に、こう投稿した。

玉木氏の不倫が明らかになったのは、国民が議席数を4倍に伸ばした衆院選の約2週間後の昨年11月11日。「SmartFlash」が、玉木氏が元グラビアアイドルの女性と密会していたと報じた。直後に会見を開いた玉木氏は「おおむね事実」と認めて謝罪。党は12月4日、役職停止3カ月の処分とした。

相手の女性は玉木氏と同じ香川県出身で、グラビアアイドルや女優などとして活動。高松市の観光大使も務めていたが、市は報道の反響が大きいとして今年1月14日付で観光大使としての活動自粛を要請した。市に寄せられた問い合わせは200件を超えたという。その後、自粛要請は4月7日に取り下げた。一定の期間が経過し、市への問い合わせも落ち着いたことが理由だとしている。

ベッキーさんが転機

政治家を含めた著名人が不倫を報じられ、謝罪や活動自粛に追い込まれるケースは近年、相次いでいる。新潟青陵大大学院の碓井真史(うすい・まふみ)教授(社会心理学)は「ベッキーさんの件が、大きな転機だった。あれ以降、著名人であっても本来はプライベートに属する不倫が、公の話題になりやすくなった」と指摘する。

タレントのベッキーさんは平成28年、既婚者だったバンド「ゲスの極み乙女」の川谷絵音(えのん)さんとの交際が報じられ、その後、2人のLINEのやりとりも流出。出演していたCMが打ち切りになるなど芸能活動に大きく影響を及ぼした。

「明るい清純派というイメージとのギャップに加え、当初、不倫を否定した対応の誤りが大炎上を招いた。不倫をした人はたたいていいという風潮が、一気に広まった」。SNSの普及により誰もが意見や感想を発信できるようになり、そうした「世間の声」が可視化されたことも、影響を大きくしているという。

「ちょうどいい」対象

旧刑法に姦通罪があった戦前ならともかく、なぜ不倫が大きな批判を招きやすいのか。碓井教授によると、誰かをたたきたいという願望を持つ人にとって、不倫は「ちょうどいい」対象なのだという。

「恋愛という身近な問題は、共感性が高く自己と同一視しやすい。犯罪と違って自分の境遇に置き換え、怒りや悲しみといった感情を抱きやすい傾向にある」。それだけに批判の大きさもその期間も、千差万別。プロスポーツ選手の場合は競技の結果で批判をはねのけることもできるが、芸能人のように好感度が直結する職業だと、影響が長期にわたることも考えられる。

その意味では政治家も、公人として高度の廉潔性が求められるという建前以上に、人気商売の面が否めない。今年7月の参院選にいったんは国民からの立候補が発表されながら、公認見送りとなった元衆院議員の山尾志桜里氏のように、注目度が上がると批判が再燃することもある。

碓井教授は「直後に謝罪し処分も受けたことで、玉木氏への批判は早期に沈静化した。だが芸能人にみられるように、不倫への批判は『応援していたのに裏切られた』という愛着の裏返し。人気があればこそ、今も忘れていない人はいるのでは」と話している。

国民民主・玉木雄一郎氏が党代表に復帰 不倫問題で処分「多くの人にご迷惑をおかけした」

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