トヨタの“儲からない”都市「ウーブン・シティ構想」の全貌とは。豊田会長が語る街づくりの現在地

「ウーブン・シティ構想」についてプレゼンするトヨタ自動車の豊田会長。

撮影:石川 温

2020年以来5年ぶりの参加となるトヨタ自動車(以下、トヨタ)が、メディアデーにプレスカンファレンスを開いた。登壇するのが豊田章男会長とあって、アメリカの会場には日系メディア関係者が多く詰めかけていた。

満面の笑みで登場する豊田会長は開口一番、「多くのカメラが向けられ、テイラー・スウィフトになった気分だ」と、流ちょうな英語でジョークを飛ばし、会場を沸かせた。

「ウーブン・シティ構想」発表時の写真(2020年1月撮影)。当時は社長だった豊田氏(左)と、都市計画を担当するビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)のCEOビャルケ・インゲルス氏。

撮影:伊藤 有

閉鎖が決まった、トヨタ自動車東日本の東富士工場跡地(静岡県裾野市)に未来のモビリティのテストコースを作るというものだった。

当時、CESでは「自動運転」が注目され、他の自動車メーカーや関連企業などはこぞって自動運転関連の半導体やカメラ、センサーなどの技術をアピールしていた。

しかし、豊田氏は「自動運転を実現するには人とクルマが別々の道を使うのが望ましい」としてゼロから街をつくり、人と自動車が別の道を使う「未来の実証都市」としてウーブン・シティ構想を発表したのだった。

トヨタは単なる自動車メーカーではなく「モビリティカンパニーになる」とも宣言しており、自動車のみならず、すべての人の移動が自由になるためのテストコースという位置づけだった。

豊田会長は、ウーブン・シティで「掛け算による発明」が生まれると語る。

撮影:石川 温

それからコロナ禍に突入し、ウーブン・シティの計画や進捗については謎に包まれていた。

2021年2月に地鎮祭が行われ、工事は始まっていたが、その後はトヨタがCESに登壇することはなく、ウーブン・シティは世界のメディアからは忘れ去られつつあった。

しかし今回、豊田会長は「ウーブン・シティのフェーズ1の竣工は発表させていただく」として、今年から住民が住み始めるという「中間報告」を行ったのだ。

住民にはトヨタ関係者だけでなく、その家族や定年を迎えた社員、小売店舗、実証に参加する科学者、パートナー企業、起業家、研究者などが含まれる。

「トヨタの強みと、自動車産業ではない業界の強みを組み合わせることで、1社や一人では作り出せない新しい価値やプロダクト、新しいサービスを創り出せると信じている。

これを『掛け算による発明』だと考えている」

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