高校野球:延長タイブレイクで力尽きた常葉大菊川、先発・大村昂輝は九回無失点…観客席から健闘たたえる拍手 : 読売新聞
第97回選抜高校野球大会第5日の22日、常葉大菊川(静岡)は1回戦で聖光学院(福島)と対戦し、延長タイブレイクの末、十二回に3―4でサヨナラ負けした。先発の大村昂輝投手が九回まで無失点と好投したが、打線が相手投手を打ち崩せなかった。試合後、観客席から選手の健闘をたたえる拍手が送られた。
10回2失点、137球の熱投を見せた常葉大菊川の大村投手。あと一歩及ばなかった=宇那木健一撮影2点リードで迎えた十回二死満塁のピンチ。相手2番打者への初球でボークを取られ、三塁走者がホームベースを踏んだ。1点差となって動揺した先発の大村投手は、打者に変化球を右前に運ばれて同点にされた。後続を三振に切って取ったが、この回でマウンドを降りた。
2回常葉大菊川2死、ゴロを放った小川優人選手(左)が1塁を駆け抜け、チーム初安打をマーク=野口哲司撮影「自分のせいで負けた」。緩急をつけた投球で九回までスコアボードに「0」を刻んだ背番号「11」は、そう言って唇をかんだ。
秋の東海大会では「1」を背負い、準優勝に貢献した。しかし、2月に左足をけがして、今大会では後輩の佐藤大介投手にエースの座を譲っていた。
試合前夜、石岡諒哉監督から「先発でいってくれ」と告げられると、「けがで迷惑をかけたチームに恩返しがしたい」と意気込んだ。 試合では、町田稔樹捕手の配球や、堅実な守備に助けられ、9回を無失点で抑えた。その間、「絶対打ってくれる」と信じて疑わなかった。
降板後は、ベンチで試合を見守った。初戦敗退という結果に「あのボークがなければ」と悔しさをにじませた。それでも、夏に向けて「こいつが投げれば勝てると言われたい。エースの座は取り返す」と前を向いた。(遠藤美奈)
無念の負傷 声援に全力
常葉大菊川のアルプス席には、昨夏エースナンバーを背負った野球部員の石黒巧さんの姿があった。
夏の静岡大会後に左肩の故障が判明。懸命のリハビリで秋に一度は復帰し、今大会に向けても背番号10をつかんだ。しかし、3月初旬の練習試合で、今度は左肘を負傷。大会直前でメンバーから外れた。
懸命に選手たちに声援を送る石黒さん(左)「何でこの時期に……」と落胆したという。それでも、甲子園に入ってから 橘木千空(たちばなきちから) 主将から「けがをしても頑張っている姿を見てきた。お前が応援団を引っ張ってくれ」と、チームのスローガン「進取果敢」が刺しゅうされた赤いはちまきを手渡されると、「くよくよしていても仕方ない」と前を向いた。
「フレ! フレ! 菊高!」。石黒さんは他の部員らを率い、グラウンドを駆ける仲間の全力プレーに最後まで声援を送った。