【米国市況】株続伸、予想外の求人件数増加を好感-ドル144円近辺

3日の米国株は続伸。トランプ大統領による関税戦争がもたらすリスクへの懸念はくすぶるものの、米労働市場が持ちこたえていることが経済指標で示され、買いが優勢となった。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5970.37 34.43 0.58% ダウ工業株30種平均 42519.64 214.16 0.51% ナスダック総合指数 19398.96 156.35 0.81%

  米雇用統計の発表を週内に控える中、この日は米求人件数の予想外の増加がセンチメントを押し上げた。S&P500種株価指数では大型テクノロジー銘柄が上げを主導。エヌビディアが高い。原油の値上がりを受けてエネルギー銘柄も買われた。経済協力開発機構(OECD)による成長率予想の下方修正を受けて、指数は朝方一時下げる場面もあった。OECDは、トランプ政権の関税政策が貿易摩擦を激化させ不透明感が高まる中で、世界経済は下降に向かっており、米国自体も最も打撃を受ける国・地域に含まれると指摘した。

  求人件数の増加は、労働市場は良い状態にあるとの金融当局の見解を裏付けている。一部のエコノミストは、関税の影響で向こう数カ月に労働市場がより顕著に軟化する可能性があると懸念しているが、データにはその兆候はまだ表れておらず、金利を据え置くという当局のスタンスを支えている。

  ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ氏は「求人件数が予想外に増加したのは経済にとって明るい兆候だ。関税の不確実性が企業に過度な負担になっていると懸念する声が多かった」と指摘した。

  米通商代表部(USTR)は、交渉の期限が近づいていることを貿易相手国に通知するため書簡を送付した。ホワイトハウスが明らかにした。一方、ラトニック米商務長官は2日、インドとの間の貿易協定取りまとめの見通しについて「非常に楽観的」だと述べた。

米国債

  米国債は下落。一時上昇していたが、株と原油が堅調を維持する中で反転した。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.98% 1.1 0.23% 米10年債利回り 4.45% 1.2 0.27% 米2年債利回り 3.95% 1.2 0.31%     米東部時間 16時31分

為替

  外国為替市場では、ブルームバーグ・ドル指数が反発。米求人件数の統計で労働需要の堅調さが示されたことが手掛かり。ドル指数は前日、終値で約2年ぶりの安値となっていた。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1213.96 5.20 0.43% ドル/円 ¥143.98 ¥1.27 0.89% ユーロ/ドル $1.1372 -$0.0069 -0.60%     米東部時間 16時31分

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のシニアストラテジスト、エリアス・ハダッド氏は「4月の求人件数は健全な労働市場となお整合する内容だ」と指摘。「テクニカル的にドルは売られ過ぎのように見受けられ、短期的に下支えが入る可能性がある」と述べた。

  円は対ドルで下落。ニューヨーク時間に下げを拡大し、午後は143円台後半から144円近辺で推移。一時144円11銭を付けた。

原油

  原油先物相場は続伸。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国で構成するOPECプラスによる生産引き上げよりも、カナダで発生した山火事による供給懸念の方が強く意識された。4月の米求人件数が予想外に増加したことも原油相場を支援した。

  カナダの産油地域であるアルバータ州では、山火事の影響で日量約35万バレルの重質原油の生産が停止。OPECプラスが週末に合意した増産(日量41万1000バレル)の4分の3を超える規模となる。

  市場では、地政学リスクへの関心も再び高まっている。トランプ米大統領は2日、イランとのいかなる合意でも、同国によるウラン濃縮を一切認めない考えを示した。ウクライナによるロシアの軍事インフラへの攻撃も注視されている。

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  TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は原油相場の先行きについて、「足元の動きとは別に、今後数カ月はOPEC原油の吸収に市場は苦戦するとみている。中東湾岸地域の季節需要がピークを迎えれば、輸出が増加する可能性が高いためだ」と語った。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前営業日比89セント(1.4%)高い1バレル=63.41ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は1ドル(1.55%)上昇し、65.63ドルで引けた。

  金相場は反落。外国為替市場でドルが上昇したことが材料視された。米金融政策の先行きに関する手掛かりを得ようと、市場では6日発表の米雇用統計への関心が高まっている。

  金スポット価格は年初来で27%余り上昇。貿易戦争の激化を受け、安全資産とされる金への逃避需要が根強い。米中間の通商協議は進展が乏しく、中国政府は関税を巡る休戦合意が米政府によって「著しく損なわれた」と非難。欧州連合(EU)も、トランプ大統領が関税の威嚇を実行に移せば、報復措置を前倒しする可能性があると警告している。

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   ゴールドマン・サックス・グループは先週、米国への信認を巡る懸念の中で、長期ポートフォリオにおけるインフレヘッジとして金と原油の組み入れを促した。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、前営業日比28.60ドル(0.85%)安の1オンス=3352.99ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は20.10ドル(0.6%)安の3377.10ドルで引けた。

原題:Stocks Gain on US Jobs Surprise as Treasuries Fall: Markets Wrap(抜粋)

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