中国スマホ市場、シャオミがアップル抜き首位 政府補助金で明暗、米中摩擦に懸念も

 2025年第1四半期(1〜3月)の中国スマートフォン市場で、同国の電子機器大手、小米(シャオミ)が約10年ぶりに首位に浮上し、これまで激しい競争を繰り広げてきた米アップルが5位に後退したことが、米調査会社IDCなどの調査で分かった。  中国政府による消費刺激策としての補助金が追い風となった低・中価格帯製品が販売を伸ばした。一方、高価格帯であるアップルの「iPhone」は補助金の恩恵を受けられず苦戦した。市場全体は緩やかな成長を維持したが、米中貿易摩擦の激化が今後の懸念材料として指摘されている。 ■ 市場全体は緩やか成長、補助金効果は限定的  IDCがこのほど公表した速報データによると、2025年1〜3月期の中国スマホ市場の出荷台数は、前年同期比3.3%増の7160万台だった。世界全体の成長率1.5%を上回ったものの、IDCの予測は下回った。中国市場はこれで6四半期連続のプラス成長となった。  成長の背景には、1月にスマホにも適用が拡大された政府補助金や、春節(旧正月)商戦があったが、IDCは「既存の消費者需要を喚起する政府補助金の効果は限定的だった」と分析している。 ■ シャオミ躍進、アップルは苦戦  今回の調査で最も目立った動きは、シャオミの首位返り咲きだ。IDCによると、シャオミの出荷台数は前年同期比約40%増の1330万台に達した。IDCのアナリスト、ウィル・ウォン氏は「価格に敏感な同社の顧客層に政府補助金が響いた」ことが、約10年ぶりの首位奪還につながったと指摘する。

 一方、アップルは厳しい状況に直面している。iPhoneの出荷台数は前年同期比9%減の980万台にとどまり、市場シェアは13.7%に低下した(前年同期は15.6%、前四半期は17.4%)。これは、アップルにとって7四半期連続の前年割れだと英ロイター通信は報じている。アップルは上位5社の中で唯一、出荷台数を減らした。  アナリストらは、アップルの主力製品が高価格帯にあるため、政府補助金の恩恵を受けられなかったことが主な要因だと分析している。補助金は、製品価格が6000元(約12万円)以下のものが対象で、価格の15%が払い戻される仕組みだが、iPhoneの多く(「16」や「16 Pro」など)はこの価格帯を超える。それでも同社は、唯一の国外メーカーとして、上位5社の中に踏みとどまった。  IDCによると、シャオミに次ぐ2位は華為技術(ファーウェイ)で1290万台、3位はOPPO(オッポ)で1120万台、4位はvivo(ビボ)で1030万台と、上位は中国勢が占めた。  前四半期(2024年10〜12月)の上位企業は1位から、アップル、ビボ、ファーウェイ、シャオミ、HONOR(オナー)、オッポの順だった(IDCのリポート)。 ■ 今後の課題は米中摩擦  政府補助金は、特に低・中価格帯の製品にとっては追い風となった。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が引用した米シティグループのアナリスト分析では、補助金制度は3000元以下の低価格帯製品への買い替えを促す可能性があるという。しかし、IDCは補助金導入プロセスの複雑さもあり、全体としての効果は期待ほどではなかったとの見方を示している。  今後の中国スマホ市場について、IDCは米中貿易摩擦の激化による影響を懸念材料として挙げる。報復関税などが物価の上昇を招き、消費者の購買意欲を冷え込ませる可能性があるためだ。  IDCチャイナのアナリスト、アーサー・グオ氏は「市場は今後、コスト増と消費者の予算逼迫(ひっぱく)という課題に直面するだろう」と述べ、先行きに不透明感があると示唆した。好調なスタートを切った中国スマホ市場だが、年後半に向けて課題も抱えている。

小久保 重信

JBpress
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