奈良・橿原の「無印良品」世界最大店をパトロール 「資源循環型社会を具現化した店」と清水社長
3月1日にオープンした「無印良品 イオンモール橿原」から。資源循環を目指す「ReMUJI」プロジェクトでは、古家具なども販売
良品計画は3月1日、奈良・橿原に世界最大となる大型店「無印良品 イオンモール橿原」をオープンした。イオンモール橿原が本館の西側に増床したオープンモールエリア「ウエスト・ビレッジ」にワンフロアの独立店舗で出店。売場面積は8201平方メートルで、昨年11月に一時閉店した旧店舗の約10倍の規模を誇る。「奈良は『無印良品』を作った田中一光さんの出生地であり、それゆえ奈良への造詣も深い。その地に世界一の規模で戻ってきた。『無印良品』がいま持っているすべてのコンテンツを揃えた特別店となる。とくに無印良品が進めてきた資源循環型社会を分かりやすく具現化した店舗」と、オープン時の会見に登壇した同社の清水智社長は話す。
一周すると約400mある広い店内は、「衣」(衣料品)、「健」(美容と健康)、「生」(日用雑貨)「住」(家具とファブリック)、「収」(収納用品)、「食」(食品)、「集」(Open MUJI)、「ReMUJI」、「本と喫茶 橿原書店」の9つのゾーンで構成。大きな売場サインを掲げるなどして、カタログのようにひと目で場所が分かるよう工夫されている。通常の店舗では展開できないような大型家具から寝装品までパーツも含めてフルラインナップを揃えているのが特徴だ。ベッドやソファなどを購入後、そのまま持ち帰れるよう店舗に面したピックアップ駐車場も設けた。
作業の様子が見えるリペア工房
資源回収ステーションを中心とした「ReMUJI」コーナー 客も作業の様子をのぞけるリペア工房も併設 「無印良品 イオンモール橿原」店内から 「無印良品 イオンモール橿原」外観
南側のエントランスを入ってすぐ左手に位置するのが、資源循環の新たな取り組み拠点となる「ReMUJI」エリア。これまで衣料品再生プロジェクトの名称だった「ReMUJI」を資源循環の取り組み全体の総称に変更し、国内最大規模の売場を設けた。資源の回収ステーションを中心に、アイテムを拡大した「リユース品販売」のほか、「わけあり品販売」「古家具販売」「古本販売」のコーナーに加え、新たに約132平方メートルの「リペア工房」を併設。国内外で仕入れた古家具のアップサイクルや回収した家具のリペア、クリーニングを同店専任スタッフが行い、作業の様子を客からも見えるようにしている。
「無印良品」は、店舗を地域のコミュニティーセンターと位置付け、地域課題の解決に取り組んでいる。同店でも「自然、循環、文化」をキーワードにコンセプトを設定し、地域住民にとって健やかな集いの場となることをめざすという。その象徴的なコーナーが、店舗中央の集いの場「Open MUJI」だ。天井には約8メートル四方の天窓を設け、光を取り込むことで自然と人が集まるような場所を演出。奈良県産の吉野杉など地域資源をふんだんに活用したぬくもりある空間には、約1万冊の絵本と児童書を用意した。店内内装に吉野杉などを多用するほか、家具や玩具にも吉野で活動する職人や工房が製作したものを採用している。
新たな試みとして注目されるのは、無印良品初の新業態「本と喫茶」のエリアだ。日本出版販売(日販)が運営する「橿原書店」と無印良品の「Café&Meal MUJI」を組み合わせ、書店と飲食を融合させたブック&カフェ空間を提供。書店にはこれまでの無印良品では取り扱いがなかった雑誌も含め約10万冊が並び、購入前の試し読みも可能だ。さらに、企画コーナーを常設するほか、奈良の伝統工芸品や特産品、奈良ゆかりのクリエーターの作品、土産物のはにわなどグッズも展示し、本以外でも地域の魅力を発信。「まちの本棚」コーナーでは、顧客が薦める街の魅力をマップで可視化し、奈良の文化や歴史を伝えるイベントも開催する。カフェでは、本を読みながらでも食べやすいおにぎりや丼ぶり、デザート、ドリンクに特化。奈良産の食材を活用したメニューを用意し、地域住民や観光客の憩いの場としても機能する。
「地域のコミュニティーセンターを体現」
自然光が入る「Open MUJI」コーナー。地元の職人が手掛けた玩具などもそろう 「本と喫茶」のコーナーから 書店コーナーには、書籍だけでなく土産物のはにわなども並ぶ 地元の魅力を発信する「まちの本棚」コーナー
日販グループホールディングスの富樫建社長は、全国の書店数が20年間で半減し、社会問題化している現状を説明。「この社会課題に対する解決策にこの数年取り組んできたが、橿原書店もその一環。地域のコミュニティーセンターを体現している無印良品の姿に共感して今回の取り組みを決めた。地域の交流や文化の拠点であり続けるよう地域にいいインパクトを与えられる場所にしていきたい」と語る。
イオンモール橿原はもともと奈良県内だけでなく、大阪南部や和歌山からも集客する広域商圏型ショッピングモールだが、「無印良品」の開業により、商圏エリアがさらに拡大することが期待される。車で30分以内を足元商圏としながらも、週末やイベント時期には京都や三重、大阪市内からの来店も見込まれるという。
構想から2年、立ち上げから1年。地域のコミュニティーセンターをめざすという同店の下田裕店長は「無印良品の今を感じてもらえる店ができたと自負している。ファンはもちろん、新たなお客様にも商品やサービスで新たな発見をしてもらえる店にしていきたい。そのためのサポートを全力でしていく」と意気込みを語った。