高市新総裁、靖国参拝見送りへ:過去の強硬発言との落差に沈黙する保守派

政治

自民党の高市早苗総裁は、靖国神社の秋季例大祭(10月17~19日)への参拝を見送る方向で調整を進めている。これまで毎年のように靖国参拝を続けてきた高市氏だが、今回は外交的な事情を優先する姿勢を示した。背景には、トランプ前米大統領の来日や、中国・韓国との首脳会談を控えた外交日程への配慮といった、政治的な計算があるとみられる。

かつての高市氏は、靖国参拝について「外交問題化すべきではない」と強く主張しており、中国や韓国からの批判に屈しない姿勢をアピールしてきた。だが今回、首相就任を見据えて参拝を回避するという判断に転じたことで、これまでの発言との整合性が問われる状況となっている。

以下に、高市氏の靖国参拝に関する主な発言を振り返る。

  • 2013年5月(政調会長当時) 「ここで(靖国参拝を)やめたら終わりだ」

    ※NHK『日曜討論』での発言。外交批判に屈するべきでないとの主張。

  • 2015年8月15日(総務大臣として) 「公務死された方々をどのように慰霊をし、おまつりをするかというのは、それぞれの国の国民の問題だと思っております。外交問題になるべき事柄ではないと存じます」

    ※終戦の日に靖国を参拝し、記者団にコメント。

  • 2021年10月(自民党総裁選後) 「日本人として感謝をささげるのは当たり前だ。外交問題ではない」

    ※秋季例大祭での参拝後、記者団に語る。

  • 2022年2月(政調会長として講演) 「日本国のトップになるようなことがあったら、ずっと参拝を続けたい。強い思いだ」 「途中で参拝をやめるといった中途半端なことをするから、相手がつけ上がる」 「淡々と続ければ、だんだん周りもあほらしくなり、文句を言わないのではないか」

     ※東京都内の講演で発言。中韓の反発にも屈せず、首相になっても参拝を継続する意志を強調。

こうした発言から見れば、今回の「外交的配慮による見送り」は明らかな路線転換だ。かつての発言通りであれば、「外交問題化を懸念して参拝を見送る」こと自体が自己矛盾となる。

それでも高市氏を支持する保守派からの批判はほとんど聞こえてこない。「信念」を口にしてきた層が、立場に応じてその基準を変えているようにも見える。靖国問題において、今問われているのは高市氏自身の姿勢だけではなく、それを擁護する保守勢力の「覚悟」でもある。

高市早苗氏インスタグラムより

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