アメリカの後ろ盾、なぜ必要?…ロシアに何度も裏切られた歴史
Q ウクライナは米国に何を求めているのか。
ウクライナがロシアと交わした合意文書A ロシアが停戦合意を破って再びウクライナに軍事侵攻しないよう、ウクライナの後ろ盾になってくれるよう求めている。具体的には、法的拘束力を伴う安全保障協定や、それに準ずる約束を米政府から取り付けようとしている。
Q ロシアが停戦合意を破ると考える根拠は。
A ウクライナにはロシアに何度も裏切られてきた歴史がある。1994年の「ブダペスト覚書」では、ウクライナが旧ソ連の核兵器を放棄する見返りとして、ロシアはウクライナの「独立、主権、既存の国境線」の尊重を約束した。
しかし、ロシアは2014年にクリミア半島併合を強行し、ウクライナ東部ドンバス地方でも親ロシア派武装勢力への支援を通じ戦闘を開始した。覚書は米英両国も署名国だったが、軍事介入の誓約などは含まれておらずロシアの侵略を防ぐ効果はなかった。
14年9月には「ミンスク1」と呼ばれる停戦合意が成立するが、親露派は全欧安保協力機構(OSCE)による停戦監視を無視して違反を繰り返した。ドイツとフランスが調停役を担った15年2月の停戦合意「ミンスク2」も同様の結果に終わった。
Q ひとまず戦闘を止められないのか。
A ゼレンスキー政権は、23年の反転攻勢が失敗に終わり、戦況打開の展望が見えない中、停戦のためなら領土の一部を事実上放棄することもやむなしとする立場だ。ただし、たとえ停戦が実現しても、再侵略の不安が拭えない状況では、経済復興に必要な資金の流入は見込めない。経済難民となった国民の国外流出が加速する懸念もある。
その間に米欧の対露制裁が解除されれば、ウクライナにとっては停戦前より状況が悪化しかねず、安直に判断できる問題ではない。