【日本市況】金利上昇、物価上振れて日銀利上げ後押し-銀行株が高い
21日の日本市場は長期金利が上昇(債券価格は下落)した。消費者物価指数(CPI)が市場予想を上振れたことで日本銀行の追加利上げ観測を後押しした。金利上昇で銀行株が中心に買われて東証株価指数(TOPIX)は昨年7月以来の水準に上昇した。
債券市場で新発10年債利回りは一時1.5ベーシスポイント(bp)高い1.53%に上昇した。2月のCPI(生鮮食品を除くコア指数)は前年比3.0%上昇(市場予想2.9%上昇)と3カ月連続で3%台に乗せ、市場で日銀追加利上げ観測が強まった。為替市場ではドルがほぼ全面高となり、円は積み上がっていた買いポジションの巻き戻しから値下がりしている。
日銀金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)をほぼ無風で通過したばかりだが、市場では次の金融政策への読みが始まっている。トランプ米政権の関税発動やトルコでの情勢不安を含めて不透明要因が多い中、経済・物価を踏まえて市場は金融当局の出方を予想している。
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BNPパリバ証券の井川雄亮マーケットストラテジストは、日銀追加利上げは6月をメインシナリオに据えながらデータ上振れが見られた際には5月もあり得ると予想した。米通商政策の影響は不透明だが物価上振れリスクを注視している日銀委員がいるとして、5月の日銀決定会合がライブであるというのは変わりないだろうと指摘した。
国内債券・株式・為替相場の動き-午後3時半過ぎ- 長期国債先物3月物の終値は前営業日比8銭安の138円03銭
- 新発10年債利回りは0.5bp高い1.52%
- 東証株価指数(TOPIX)は前営業日比0.3%高の2804.16
- 日経平均株価は0.2%安の3万7677円06銭
- 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.5%安の149円49銭
債券
債券相場は下落。総務省が21日発表したコアCPIを受けて先物や中期債を中心に売りが優勢だった。一方、超長期債は堅調となり、相場全体の下支えとなった。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、債券相場について、「引き続き期末までポジション調整の売りが出やすい中、全国CPIが市場予想比で強めだったことが売りにつながった」と述べた。
全国CPIについて、長谷川氏は「日銀の追加利上げが市場予想の中心である7月から前倒しされやすいことが意識される内容だった」と述べた。
アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎債券ストラテジストは、市場コンセンサスがやや下方向を見過ぎていたとした上で、「日銀が目指すコア品目でのインフレ圧力の高まりで利上げ期待が少し強まった印象」と話した。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.840% 1.120% 1.520% 2.265% 2.590% 2.945% 前営業日比 +0.5bp +1.0bp +0.5bp -0.5bp -0.5bp -1.5bp株式
東京株式相場はTOPIXが上昇。日本株が急落した前の2024年7月以来の水準に値上がりした。日経平均株価は下落。
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銀行株が買われ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がTOPIX値上がり寄与度で首位になった。米マイクロン・テクノロジーの売上高見通しが好調で半導体関連株も買われている。
電気・ガスや医薬品など内需ディフェンシブの一角も堅調。マイクロン決算が好感されて電機も上げた。一方で自動車は軟調だった。
SBI証券の鈴木英之投資情報部長は「いまのところ大きく荒れることなく経済が回復して賃金も上昇しており、利上げそのものの見通しは変わらない」と述べた。米保険・投資会社バークシャー・ハサウェイが商社を買ったことで、バリュー株が見直されやすい局面だとも付け加えた。
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=149円台半ばに下落。FOMCを通過して、ドルを買い戻す動きが強まっているとの見方が出ている。朝方は2月の全国CPIが予想を上回り、円が買われる場面もあった。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、全体的にドルが買われ、円は主要通貨に対して全面安の展開だと指摘。「ドルは売られ過ぎだとみている」と述べ、週末でドル売りポジションを調整する動きが出ているのではないかとの見方を示した。
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、ドル買いに伴って円が全面安になっており、「円はロングポジションが積み上がっているので調整売りで値幅が生じやすい」と指摘。ドルについてはFOMCで売られた反動もあるとして「米国はスタグフレーション的な状況で利下げができなくなる可能性もあり、一方的なドル安に疑問も生じている」と述べた。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。