【日本市況】円1カ月ぶり高値後に失速、株式下落-債券は超長期上昇

17日の日本市場は、円がドルに対し一時1カ月ぶりの高値を付けた。来週予定される日本銀行の金融政策決定会合で追加利上げが行われるとの観測が強まる中、米国金利の低下を受けてドル売り・円買いが先行した。その後は週末を前に持ち高調整の動きも広がり、円は伸び悩んだ。

  為替の円高や国内外金利の低下を材料に株式は下落し、自動車など輸出関連株、金融株が相場を押し下げた。債券は残存期間の長い超長期債が上昇。

  外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「154円台が一瞬で終わったため、週末を控え午後は円買いを仕掛けた向きのカバーが入ったのではないか」と指摘。来週早々にトランプ次期米大統領の就任演説を控える上、日銀の利上げの可能性も9割程度織り込んでおり、「ここから円を買う余地もあまりない」と話した。

  ブルームバーグが9-15日にエコノミスト53人を対象に実施した調査によると、1月の金融政策決定会合で日銀は現在0.25%程度の政策金利を引き上げると74%が予想している。金利スワップ市場では1月利上げの織り込みが8割超となっている。  

国内為替・株式・債券相場の動き
  • 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.3%安の155円67銭-午後3時50分時点
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.3%安の2679.42
  • 日経平均株価は0.3%安の3万8451円46銭
  • 長期国債先物3月物の終値は6銭安の141円00銭
  • 新発30年債利回りは一時6ベーシスポイント(bp)低い2.26%
  • 新発10年債利回りは変わらずの1.2%

為替

  東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=154円台後半に上昇。日銀による来週の利上げ警戒と米金利の低下を受けた円買い・ドル売りが広がった。ただ、その後は15日以降の急上昇の反動や実需のドル買い・円売りで155円台後半まで反落するなど売買が交錯した。

  オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、実需と投資・投機筋の売買が交錯する中、来週の日銀利上げ観測を「金利はかなり織り込んだが、為替はオーバーシュートもあり得る」と指摘。日銀の利上げに対する警戒は続いているものの、「今晩の欧米勢の動きを確認する必要がある」とも述べた。

  トランプ次期米大統領の就任時に市場が混乱しなければ、日銀は来週に利上げする公算が大きいとした16日のブルームバーグ報道で円買いが加速した。14日の氷見野良三副総裁の講演と15日の植田和男総裁の発言から来週の会合で利上げの是非を判断することが分かり、円は15日以降の2日間で158円台前半から155円台前半まで3円程度上昇していた。

株式

  株式相場は下落し、日経平均は一時下げ幅が500円を超えた。円高への警戒で自動車など輸出関連株の一角が安く、日米金利の低下を材料に保険や銀行など金融セクターも下げた。個別では、任天堂の下げが顕著。前日に新たな家庭用ゲーム機の詳細を4月に発表すると明らかにしたが、サプライズ要素に乏しいとの見方が広がった。

  大和証券の柴田光浩シニアストラテジストは、任天堂株の下げについて「事前に期待が高かったため、情報が少ない中、いったん材料出尽くしで売られた」と分析。米国の利下げ観測は全体的にかなり後退しているものの、円高やここ数日の米金利低下が日本株市場で材料視されたと見ていた。

  一方、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、来週の米大統領就任式や日銀会合、再来週の連邦公開市場委員会(FOMC)を通過すれば、日本株は上昇していくだろうと予測する。金利上昇を背景に足元の株価はレンジの下限まで下がっており、利上げの織り込みも進んでいるため、「日銀が利上げをすれば、あく抜け感で上昇しやすい」と言う。

債券

  債券相場は超長期債が上昇(金利は低下)。連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事の発言を受けて米長期金利が連日低下した流れを引き継いだ。来週の日銀決定会合で利上げが決まることに対する警戒感から中長期債は上値が重くなり、先物は軟化した。

  三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、超長期債の上げについて「割安だったことや米金利の上昇一服、20年債入札を順調にこなし、21日の40年債入札への懸念が和らぎ、3週連続の超長期債入札のゴールが見えてきたことが大きい」と述べた。

  りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーも、前日の20年債入札で2%水準で投資家から一定の需要を集めたほか、日銀の利上げが行われるとフラット化するため、「30年や40年債など長いゾーンが大きく買われた」と見ていた。

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   0.680% 0.860% 1.195% 1.910% 2.285% 2.735% 前日比 -1.0bp -0.5bp -0.5bp -2.0bp -3.5bp -3.5bp

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

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